第十三話 建築士、トラップを作る(ダンジョン編)
「やはり、まずは転移結晶を無効化する罠を張りましょうか。当然、このお城全体に」
「そうだね。簡単には逃げられないようにしないとね」
「そして、まずは地下迷宮からですね」
ヨハンとリネットは相談しながら、迷宮のトラップを考えていた。
「せっかく迷宮なのですから、これをうまく利用した罠を設置していきたいところですね」
「じゃあ、転がってくる岩とかはどうかな? あれって結構怖いんだよね。凄い速さで迫ってくるから」
ヨハン自身、地下迷宮攻略の最中にその罠に遭遇したことがあった。あの時はかなりビックリしたものだ。
「図にすると、こんな感じかな」
↓
| 岩 |
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| 勇 |
| 者 |
↑
「なるほど。悪くありませんね。このトラップを上手く使えば、敵を行かせたい方向に誘導することもできるでしょう」
「うん。その先に新しいトラップを用意しておこう」
「では、こんなのはどうでしょう?」
↓
| 岩 |
| |
| 勇 |
| 者 |
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| 岩 |
↑
「挟み撃ちということで」
「シンプルだけど、かわせないねこれは。うまく誘導していけば、これだけで敵は詰むはずだ」
「後はこんな案もありますが」
↓
| 岩 |
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| 勇 |
| 者 |
| × |
| ※ |
| △ |
| □ |
×=火が出る床
※=毒の出る床
△=棘の出る床
□=麻痺する床
「もしくは、もはやこんなのとか」
↓
| 岩 |
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| 勇 |
| 者 |
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| 死 |
| |
死=即死床
「即死ってもう、チート過ぎるね……」
「つまらないので、あまり使いたくはありませんが。でも、やろうと思えばできるでしょう?」
「う~ん、どうだろ……? でも、どうしよう。結構迷うね」
「むしろもう、全部まとめましょうか」
↓
| 岩 |
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| 勇 |
| 者 |
| × |
| ※ |
| 岩 |
↑
| △ |
| □ |
| 死 |
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×=火が出る床
※=毒の出る床
△=棘の出る床
□=麻痺する床
死=即死床
「鬼畜過ぎじゃない?」
「勇者レベルならば、これくらいはまぁ余裕でしょう。長い通路にはこれと似た罠を残さず張っておきましょう」
「かなりの重労働だね、それは」
「それと、精神的に敵を追い込むトラップも置きたいところですね」
「あ。じゃあ、曲がり角の先に魔物を設置しておくとかは? 結構ビックリすると思うけど」
↓
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| ○(魔物) →
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「いや、それではまだ弱いですね。魔物は倒せばそれで終わりです。どうせならもっと、精神に効くものを置きましょう」
↓
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| ○(ゴ×ブリ) →
|________________
「ゴキブリって……」
「名前を呼んではいけません。Gと呼称するように」
「あ、うん。でも、さすがにダンジョンでGは……」
「ただのGではありません。特別に人懐っこいGです」
「たしかに、下手な魔物より強敵かも」
「それも、このように配置します」
↓
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| ○(G)○(G)○(G)
| ○(G)○(G)○(G) →
| ○(G)○(G)○(G)
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「これは……嫌だね」
「そうでしょう? 道を曲がったら、突如として大量のGが。敵のメンタルは削られます」
「でももう敵は逃げられない。転移結晶も使えないから、先に進むしかないわけだ」
「ちなみにこのG、人懐っこい上に肉食なので、たかられたらまず死にますね」
「こわっ!」
「そして、さらに進んだ先には、もう一つ精神トラップです」
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スライム
スライム
スライム
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「リネットさん、これは一体……?」
「スライムによるトラップですね。スライムが敵の身体にまとわりつき、ねばねばと不快な感触を与え続けます。他にも、状態異常を悪化させる、服を溶かすなどの効果もあります」
「服を、溶かす……」
ヨハンの頭に、服を溶かされて必死に胸や局部を隠すリネットの姿が浮かび上がった。
「…………いやらしい」
「え、なに!? 僕は何にも考えていないよ!?」
「まあいいです……。これにより、機敏な動きは出来なくなるため相当苦労するでしょう。先ほどのように岩のトラップが発動しても、逃げ足ではどうにもなりません。それと、是非とも利用したいのは、クリアできないイライラ感です」
「な、なるほど。それじゃあ、こういうのはどう?」
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(^o^)丿 ゴール
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(^o^)丿=最初に戻る床。
「いいですね。ラスト間際で、振り出しに戻る。いちばんイライラするやつです」
「でしょ? やっぱ迷宮はこれがないと」
「しかし、一つだけでは踏まない可能性もありますね」
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(^o^)丿 (^o^)丿(^o^)丿(^o^)丿
(^o^)丿 (^o^)丿 (^o^)丿 ゴール
(^o^)丿(^o^)丿(^o^)丿 (^o^)丿
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(^o^)丿=最初に戻る床。
「これでいいです」
「アレ……? 見直してみたらこの迷宮、絶対クリアできなくない? なんか途中で敵死にそう。さすがにちょっとやりすぎたかな……?」
「確かに、絶対に死にそうですね。そうなってもつまらないですし、片づけるのも面倒です……。敵に不死のバフでもつけられませんか?」
「いや、それは本末転倒じゃない? それに、そんな都合良くは……。あ、でも似たようなことは出来るかも。敵が死にそうになった瞬間、回復のバフが発動するようスキルを仕掛けておけばいいんじゃ……」
「なるほど、ではそれで行きましょう。敵は何度も繰り返し痛みを経験することになり、たとえ死にたくても許されない。逃げることもできず、クリアするまで決して苦痛から逃れられない。なかなか私好みです。このダンジョンの洗礼を受ければ、フェルキア様を倒す気力など敵から消えることでしょう」
「じゃあ、即死床は激痛床にでも変えようか」
「そうですね。基本はそれで行きましょう。あとは、他にも細かい部分を――」
ヨハンとリネットが数時間かけて、さらなるトラップについて話し合う。迷宮が時間で形を変えたり、突然壁が迫って来て敵を強引に押し潰したり、あらゆる種類を考える。
そして、ようやく方針が決まった。
「それでは、早速このように作ってください。スライムなどは私が用意しますので、その他トラップはお任せします」
「はい!」
こうして深夜になる頃には、地下迷宮が完成することとなった。
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少しずつ魔王城をトラップだらけにしていきます。




