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死なない奴等の愚行  作者: 山口五日
第1章「イモータルへようこそ!」
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第3話 どうやら不死身のようです

「……マリアさんってゾンビなのか?」


 いきなり起き上がって噛みついてくるかもしれない。噛みつかれたら俺までゾンビだ。

 もし襲い掛かってきたら目の前のオッサンを犠牲に逃げよう、うん。


「ゾンビじゃねえよ。人間で、不死身なんだ。ほら、そろそろ起き上がりそうだぞ」

「え?」

「……ごほっごほっ」

「!?」


 自身の吐いた血によってできた、血の池の中で死んだと思われたマリアが咳き込む。そして喉に残っていたらしい血を吐き出すと、ゆっくりと目を開けて上半身を起き上がらせた。


「ふうっ、すみません。一度死に掛けてしまいました」

「気を付けろよ。お前はいつも死に掛けやすいんだからな」

「あら、いらっしゃったんですか?」

「お前が血を吐いてぶっ倒れたもんだから、そいつが助けを呼んだんだよ」

「あら、そうだったんですか。すみません。不死身なんですけど私の場合は不死身になる前から不治の病に患っていてよく死にかけてしまうんです」

「病気の状態が長かったからなー。お前、知ってるか? 不死身っていうのはな、怪我や病気といった異常が発生すると正常に戻ろうと力が働くんだ。だがな、マリアのように病気の期間が長いとそれが正常の状態と不死身の力が勘違いをしちまうんだ。だから、こいつの病気は不死身の力では治らないんだよ」

「知らねえよ、そんな不死身あるある!」


 暫く黙って二人の会話を聴いていたが……何だこの不死身トーク。


 不死身なんて……そんなものがありえるのか? 確かにマリアさんは致死量とも思える血を吐き出したにも関わらずピンピンしている。この床にぶちまけられている血も、鉄臭い臭いからして本物だ。


「……本当に不死身なのか?」

「ん? 傭兵団イモータルって知らないのか?」

「傭兵団イモータル?」


 聞いた事がない。というか自分の名前すら覚えてないから、もしかすると聞いた事があっても忘れてしまっているのかもしれない。


 俺の様子を見てオッサンは溜息を吐く。


「知らないみたいだな……。百年くらいやって来たから、世界中に知れ渡ってると思ってたんだけどなー」

「ふふふっ、まだまだ認知度は低いみたいですね。まあ、不死身の傭兵団なんて御伽噺のような話ですもの。ほら、この人も未だに信じられないといった顔してますよ」

「そうか……じゃあ証拠に…………ほら」


 何らかの魔法か、オッサンは虚空からナイフを取り出すと柄の部分をこちらに向けて差し出した。


「俺を思いっ切り刺してみろ」

「できるか!」

「ん? 遠慮するなよ。心臓を刺してもいいし、首を斬ってもいいぞ」

「遠慮とかじゃねえ! そんな人を殺すような真似ができるかって言ってんだよ!」


 こいつはヤバい。狂ってやがる。 


 不死身を証明するなら、それが手っ取り早いかもしれないが、そんな事ができる訳がないじゃないか。もし、不死身でも何でもなく、死んでしまったらどうするつもりだ。いや、死なない自信があるからやらせるんだろうけど、普通の人ならナイフで人を刺したりする事はできる訳がない。


「仕方ないな……じゃあ、こうするか」

「え?」


 オッサンはいつまでもナイフを手にしない俺に肩を竦めると、器用にナイフを回して逆手に持つと自身の首筋にあてて横に引いた。すると深く肉に食い込ませ、太い血管を切り裂いた為、オッサンの首から大量の血が噴き出した。


「オッサン!?」


 室内の血の臭いが濃くなり気分が悪くなるが、それよりもオッサンだ。マリアさんと同じくらいの勢いで血が流れ出て……止まってる?


 首から噴き出した血は止まっていた。

それも首に付着している血をオッサンが手で拭うと、ナイフで付けた傷が綺麗さっぱりなくなっていた。


「ほらな。俺は不死身歴が長いから、傷だけじゃなく血も戻ってるぜ」

「…………本当に不死身なのか」


 とても不死身なんて存在信じられなかったが、目の前で起きた事は幻を見せられていない限りは現実だ。本当にこの二人は、いや傭兵団イモータルは不死身の傭兵団なのか…………ん? 待てよ……。


「おいオッサン、部屋に入って早々の犯人扱いは何だったんだ? マリアさんの事を分かっていたんだから、俺が何かした訳じゃないって事は分かってたんだろ?」

「…………ノリ?」

「オッサン、ゴラァ!」


 一発殴ってやりたい。というか殴っていいだろ? いや殴るだけじゃ足りない。今なら先程のナイフを借りて躊躇なく刺せる。


 怒る俺をマリアさんが「まあまあ」と微笑みながら宥めるが、それぐらいじゃ俺の怒りは静まらない。よし、オッサンのナイフを奪い取って滅多刺しにしてやる。


「落ち着きましょう。これから、あなたは私達と共に行動するんですから」

「…………へ?」


 マリアさんの言葉は俺を冷静にさせた。

 一緒に行動? どういう事?


 するとオッサンは気まずそうに頭を掻きながら口を開く。


「お前を不死身にしちまったんだ」


 ……………………はい?


 オッサンの言葉の意味を俺はすぐに理解できなかった。

読んで下さりありがとうございます。


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