白蛇様の祟り
セリカの世界へようこそ♪この作品は前に短編として投稿したものです。
本日の24時に新しいお話の前編を投稿予約していますので、ぜひそちらもよろしくお願いいたします♪
このお話の主役は、わたしの友達のAくん。
Aくんは宮崎県のとある町に住んでいました。
幼少の頃、お爺さんから「宮崎にいる間はいいが、宮崎から出ると白蛇様に祟られる」と教えられてきたため、進学や就職はもちろん、遊びにいく場所でさえも宮崎から出たことはありませんでした。両親も健在で交際相手もおり、仕事でも非の打ち所のないまさに順風満帆な生活だったのです。
※ここから、A視点も織り混ぜてあります。
ある日のことです。
いつも通り朝を迎え、電車を経ていつも通り出社した彼に、普段と違う出来事が起こりました。
「Aくん、工場長が呼んでるんだってー!」
「工場長が? なんの話かなぁ?」
「さぁね? ともかく、伝えたからちゃんと行ってきてね?」
「はいはい…。」
「あっ、そうだ!」
「ん? どしたー?」
出ていこうとしたAくんへ、思い出したとばかりに声をかける女の子。
「Aくんのデスクの近くにウチワなかったっけー?」
「ないよー?」
「えー! 絶対あるってー!」
「あっ…。」
「あってなに? やっぱりそっちにあったんでしょー?!」
「いや、その…さ。」
「なに?」
「イスの背のとこ、みてみ?」
「あっ…あった。」
「こ、これがよくある内輪揉めってやつかな! あはは…。」
「…。」
「とりあえず、いってくるね!」
寒いギャグの後特有のいたたまれなさ、そして同じ職場の女の子から、逃げるように小走りに廊下へと出たAくんは、しぶしぶ工場長のとこまで歩いていく。
Aくんには昔から変な癖みたいなのがあって、それはなにか戸惑ったり困ったことがあると、右手で前髪をつまむというもので、道中は片手で無意識に前髪をつまんでいました。
正直なところ、これといったミスもした覚えのない彼にとってこの呼び出しは不本意なものでした。工場長からの呼び出しなんてきっと面倒な仕事の要請か、最悪は解雇を告げられて野に放たれるのか…。
悪い方向にばかり考えてしまいます。
コンコン。
「失礼しまーす。」
ノックを2回して工場長の返事を待つ。
「どうぞー。」
返事が聞こえたので入ってみる。工場長の部屋はなんというか偉い人の部屋とは思えないくらい質素で、棚という棚からは顧客のデータと思われるペーパーファイルがこれでもかというほど詰め込まれあふれている。
デジタル化が進む現代に取り残されたかのようなその部屋は、ぼくにとって落ち着くことのできる空間で、この部屋を訪れるまでの緊張感はほどよくリラックス出来ていたのだった。
「お呼びだと伺ったのですが、いかがなされましたか?」
「あぁ、Aくん。急に呼び出したりしてすまなかったね。さぞ驚いたことだろう。」
「そうですね。…悪いお話ですか?」
「いきなりだなぁ…。もっと余裕を持たないと肝心なときに運気を逃がすぞ??」
「縁の下の力持ちで、あまりおおやけに姿をおみせにならない工場長にお声をかけられたというだけでも、同じ職場の子達からの噂の種になるくらいですので…。」
「こりゃあまた手厳しいなぁ! いやいや、結構結構! それでだな、キミに話というのはだな…。」
「はい。なんでしょう?」
「…そうじっと見つめられると言いにくいんだが?」
「じーーーーっ。」
「わざわざ口で言わんでいい! でだな…?」
工場長の話を要するところ…。
それはつまるところ転勤してくれ、ということでした。
転勤先は京都で、栄転ともとれるお話。
なにげない毎日の積み重ねを評価し、さらなるスキルアップを期待しての処遇とのことでした。
素晴らしいことでしたが、変化を望まない彼にとってそれは不服でした。
交際している彼女や家族の問題、そしてお爺さんから言われ続けていた白蛇様の祟りをなによりも気にしていました。身内に相談をして、転勤しようという結果を得た彼は、仕事だからと自分の気持ちにケリをつけ旅支度をはじめました。
そして旅の前日、宮崎での最後の夜ということで彼女とデートをし、共に熱い夜を過ごしてから当日を迎えました。
ここからはAくんの手記です。
転勤先の地へ向かう途中、彼女を助手席にのせ車を運転していたときのこと、新しい住居があるという、ある村の付近にある水田に差し迫ったとき、ふと前方に白いひらひらしたものが落ちているのが見えました。この時彼女は、ここにくるまでの道中をスマホのマップ機能でナビゲーションしてくれていたのですが、水田に差し掛かったとたんに酔ったらしく、ダウンしていました。
(なんだろうか…? いやまてよ、あれはきっとポリエステルのヒモかなにかかもしれない。)
そう思って走っていると、ヒモだと思っていたものがもうすぐ追い越すといったときになってクネクネと突然うごめき始めた。
白いヘビだ! そう思って急ブレーキを全力で踏み込み、ハンドルをきった。
キキィィィィィィーーーーーーー。
ドン! ズボッ、バシャバシャバシャ!
村の道路は舗装しておらず、急ブレーキを踏んだぼくの車は思い切り水田に突っ込み、田んぼのなかにある水を盛大に巻き上げ…、止まった。稲への損害はもう考えたくもないレベルの惨状になっている。
大惨事になってまで止まったものの時すでに遅く、ぼくは白ヘビをひいてしまった。途中のドンという音。
あれがそうなのだろう…。ドアを開け、田んぼのなかに足を突っ込んで泥だらけになりながら現場に戻り確認するも、そこには何もない。
水田まで続くブレーキ痕が1ヶ所だけ、不自然に途切れているだけだ。おそらくここで白いヘビに当たったのだと思われるものの、そのヘビがいない。ただほんの少し水のような液体で濡れているだけだった。
村の人にトラクターで車を引き上げてもらって、水田の持ち主に事情説明と謝罪を行い、稲の件はなんとか示談で済ませてもらえた。
水田に沈んだ車は、扉を開けた際に雪崩れ込んできた泥たちで見るも無惨なことになってしまった…。
これはやはり、爺ちゃんの言っていた白蛇様の祟りなのだろうか?
と、手記にはここまでが記されていた。
その事件から数週間。
そう、数週間も気づいたら経っていたようだ。Aくんはその間のことはなにも覚えていない。ただ言えること、それはその期間の記憶がなく、長年そばにいてくれていた彼女とAくんは別れたということ。
彼女がいうに、この数週間のAくんは荒れに荒れて、まるで人が変わったかのようになっていたんだとか…。
時に支離滅裂になったり、夜中に突然大声で笑いだしたり、かと思えば突然なにかに怯えだすなどは頻繁に起こっていたのだという。
もちろんAくんは覚えていない。
おかしな間のAくんはなんだったのか…。
(わたしはいったい誰と生活していたのだろう…?)
そう何度もおこなった自問自答の先でみつけた答えが、最後に彼女の恐怖心へのとどめをしてしまったのだ。
その後、Aくんには彼女と呼べる存在は現れていなかったようだ。
ある日のこと、わたしはAくんの家にお泊まりに来ていた。
寝る前に歯を磨こうと、わたしたちはお風呂場の脱衣所にある洗面所の前にやってきた。
ふと鏡を見ると、一匹の白い蛇が写っている。普段はタオル等を入れている棚で観音開きになっているのであるが、その棚の取っ手に巻きついて、鎌首をもたげてじっとこちらを見つめている。
Aくんの言っていた、京都へ来たときに引いてしまったヘビだろうか…?迷信で、ヘビは家の守り神と聞いたことがあるため、蛇を逃がそうと鏡に写っていた棚を見て探すも蛇は見つからない…。
「なにしてるの?」
Aくんが聞いてきた。
「いや、鏡に写ってるヘビ逃がそうとしたんだけどさ、鏡の場所にいないんだよね…。」
「…どんなヘビだ?」
「なんか珍しい白いヘビで…って鏡に写ってるじゃんか。」
「鏡にヘビなんていないよ。」
「え? だっ、だってAくん…。」
「鏡に、ヘビなんて、いない!」
Aくんはまるで自分に言い聞かせているかのようにゆっくり、そして大きな声でそういうと、おもむろに鏡へ向かって手をかざした。
けれどもそこにはいまだ白い蛇が写っている。鏡自体に張り付いているのかと思ってもみたけど、Aくんが手をかざしてもびくともしないことからそれも違うのだろう。
すると突然、鏡の中から【にゅっ】と1本の手が伸びてきて、Aくんの手首を掴んだ。
その手は手首が細く色白で、まるで女性のような手だったが、人間とは思えない力でAくんを鏡のなかへ引きづりこもうとしてくる。
(ヤバイ、このままだとひきずりこまれる…!)
逆の手で後ろのヘビが写っていた棚に捕まり、Aくんを掴んで抵抗していると、諦めたのか突然にふっと引っ張られる力がなくなった。
見るとさっきまでAくんを掴んでいた手、そしてへびが共に消えている。
なんだったんだろう?
そうおもってAくんから手を離した。
「な、なんだよっ! なんなんだよいまの…!」
鏡に引っ張られたことによってか、急にAくんはなにかに怯えだし、何もないことを確認しようと鏡に顔を近づける。
何も起きない。
「き、きっと幻覚かなにかだったんだよな!」
「うん…きっとそうだよ。」
嘘だ。
現にわたしは先ほどの鏡から伸びた色白で細い手を見ている。
見ているが、怯えるAくんを前にしてそれを肯定することは、わたしにはできなかった。
わたしの言葉に、鏡を覗きこんだままホッと息を吐くAくん。
すると突然、さきほどの手が今度は両手になってAくんの顔を掴んだ。
凄まじい勢いだったので彼は鏡に頭をぶつけた。鏡は音をたてて盛大に割れ、Aくんの顔面は血まみれになるとともに、おびただしい数のガラス片が突き刺さっていた。
不謹慎にも、鏡の中へ引っ張りこまれるかと思っていたので若干肩透かし感をくらったものの、応急措置をして病院へと連れていった。
翌朝になっても、こうして書いているいまもまだ、Aくんは目覚めていない。
あのときの手はなんだったのか、結局は謎のまま。
もしかすると、Aくんは意識だけを鏡の中へ連れていかれたのかもしれません。
「パパー! お本書くの終わったー?」
「うん、今終わったよ♪」
「じゃあ一緒に遊ぼーよ!」
「いいぞー! じゃあなにして遊ぼっか?」
「じゃあかくれんぼしよっか?」
「うん!!!」
一連の事件で相談を持ちかけてくれていたAくんの元彼女とわたしは結婚して、今では子どもにも恵まれています。
この子はかくれんぼが大好き。
もしかすると本当のお父さんを探しているのかも…しれません。
「パパ、あのね?」
「なになに?」
「あの…ね? 最近ね、へんなゆめを見るの。」
「へぇ? どんなゆめかな?」
「ゆめのなかでね、わたしね、おとこの子になってクルマにのってたんだけどね、ヘビさんひいちゃったの…。」
「ヘビ? どんなへびなの?」
「まっしろのきれいな子。」
「へぇー…。それでそれで??」
「でね、ぼーーっと鏡を見てるんだけどね、ふと気づいたらわたしに戻ってるんだよ。でね、そのおとこの子の声があたまにひびくように、聞こえてくるの。」
「その声はなんていってたの?」
「オモイダセ、オモイダセ、オモイダセってずーーーっと繰り返してるんだよー。変でしょ?」
そういいながら困った顔をして、前髪をつまんでいる娘。
「なにも思い出さなくてもいいんだよ。さぁ、そろそろ寝る時間だよ♪」
「はぁーい。」
そう告げて、わたしはかわいいわが子を眠りにつかせるのでした。
これもまた白いヘビのお導き、だったのかもしれません。
執筆中小説が増えすぎて管理が難しいです(;´д`)
やっぱり紙に書き出すべきなのでしょーかね…(・・;)
仮で投稿して、ユーザーさんに見れなくなるようにとかできたらいいのにとか思うセリカでした☆
本日24時に予約投稿している新しいお話もよろしくお願いいたします♪(=゜ω゜=)




