リア充と丑の刻参り序
序と結に別れております。今回こそ1話でと思ったんですけどねぇ…。
2018年、1月のある日ある時。
風の強く肌寒い、そんな夜中に一匹の犬をつれて散歩している若い男女がいた。
陽の差さない薄暗い森を前にイチャつくふたり。犬のリードを持っていた男は、女の肩に手をおいたときについ離してしまう。
しかし男は気づいていない。
ただの発情した♂犬のようだ。
女性の方もまた、周囲の薄暗さによる恐怖感、そして好きな人とふれあっていることによるドキドキ感。それらの気持ちがない交ぜとなって、彼女の心に渦を巻いていく。
男は綺麗な夜景や、彼女のキラキラした思い出となるようなサプライズでなく、恐怖感からの吊り橋効果をねらって、彼女へとプロポーズをした。
夢見ていた状況と違って複雑な感情を抱きながらも、プロポーズを受け婚約をした彼女。
二人が手を繋ぎ歩き出そうとしたとき、どちらからということなく、犬がいないことに気づいた。周囲を確認するも見当たらず、おそらく森の中へいったのだろうとの結論になった。
夜の森は危険が多い。
本来であれば次の日の朝方にでも探したいところであるが、よその犬に噛みついたり、行方不明になったりとの事を考えると、そうするわけにもいかなかった。
手を繋ぐ二人。
森は危ないからと彼女を森の外で待っているようにお願いしたが、彼女が折れなかったため共に森へと入った。
入ってしまった。リア充を狙う森に潜む動物たち。
カサカサカサ…。
ふと葉が擦れるような音がした。犬かもしれないと感じた二人は音の方へと歩いていった。
しばらく歩いていると、開けたところに出た。
そこにはおーっきな木が1本真ん中に植わっており、よく見ると何らかの紙と共にいろんな人形が飾ってあるようだった。
「あんたら、あの犬の飼い主さんかい?」
木がどれだけ高いのかと上を見ていた二人は、不意にかけられた声に驚き、半歩後ずさりながら声の方を見た。
そこにいたのは、真冬なのに薄い白装束を着た老人だった。
「えっ、あ、はい。そうですけど…。」
「うちのワンちゃん見掛けられたんですか?! どっちへ走っていったかとかってわかりますか??」
老人の突然の出現による困惑からいまだ立ち直れていない彼女をそっと後ろに下がらせた男は、そう老人へとたずねた。
「あの犬ならもうあの世へ旅立ったんじゃないかの…。あんたらもそっちへ連れていってやるよ」
老人の言葉に困惑している男、ふと彼女は老人の手元に目をやると、そこにあったのは五寸釘、そして赤い液体に染まっている金槌であった。
赤い液体はいったいなんなのか、嫌な想像が沸き立ってきたが、今はまずここから逃げないといけない。
あの老人の先程の言葉は本気だろうから。
いまだ困惑したままの彼の手をとり、走り出す彼女。
老人が逃すまいと追ってきているのは、蹴られる落ち葉の音、ドタドタと言う足音から嫌でもわかる。
丑の刻参り。
白装束に五寸釘、そして金槌といえば誰もが連想するであろうそれは、木に写真と人形を打ち付けることで、写真の相手を呪うと言う忌むべきものだ。
最初、あの木に人形があるのは飾りかと思ったのだけれど、あこは呪いに最適なスポットだったのかもしれない。
この丑の刻参りには、また別の関連する噂もある。
それは、その行為を誰かに見られると、呪いは自分に返ってきてしまうので、『見た人は殺さないといけない』というものである。
おそらく、男女の飼っていた犬はあの老人の行為を見てしまって○されたのかもしれない。
あの赤い液体、あの老人の言葉はそういうことなのであろう。
二人は走りにはしって、なんとか森を抜けた。
体力の差もあったのだろうか?
途中から老人の気配がしなくなり、ここらで一息こうということになったのだ。
周囲にあるのは公衆便所。
離れることを渋った男は、
『今は非常時なので、少しでも個室の多くある女子トイレに隠れよう』
そういって中へ共に入った。
この公衆便所は入って右側、左側に三つずつ個室があり、それらは洋式らしく、全部が押し戸の個室となっている。その一番奥の扉を開けようとするも鍵がしまっている。誰かが入っているようだ。
仕方がないので反対側の一番奥に隠れることにした。
しばらくすると、足音がして誰かが男子トイレに入ったのがわかった。
キィィ~…バタン。
キィィ~…バタン。
キィィ~…バタン。
「いないなぁ~。こっちかな~。」
やばい!! きっと老人が自分達を探しているのであろう。
女子トイレの方に回ってきてしまったようだ。
「ここにいるのはわかってるんだよぉ♪ 怖くないからでておいで、連れのワンコを連れてきてあげたんだぁ♪」
その言葉を聞いて二人の恐怖心は最高潮に達した。
間違いない! 先程の老人の声だ!!
二人は震えるからだを互いに抱き合って、しゃがみこんだ。
キィィ~…バタン。
キィィ~…バタン。
音はどんどんと近づいてくる。
2個目のドアが開く音が聞こえたあと、無音になった。
そういえば右側奥の個室には誰かが入っていた。
コンコンコン。
「いっしょに楽しい遊びしようよ♪ 怖くないからでておいで。」
コンコンコン。
扉の開く音がしない事を考えると、向こうの子もきっと震えているのかもしれない。
「出てこいっていってるだろうが!!!」
ゴン! ゴン! ドンドンドン!
ついに体当たりと手元の金槌で殴り始めたようだ。
ガリガリ、ベリベリベリ!
やばいやばい!!!!
見つかれば絶対に○されてしまう!
今の音なんて個室の扉を破壊する音だろう。
………。
……………。
音がしなくなった。
しばらくたってもなにも物音がしない。
助かったのかとおもって抱き合うのをやめ、しゃがみこんだまま互いに離れた。
そして、ふっと彼をみると、
彼は首をかしげるように横にしていた。
いや、その表現はおかしいのかもしれない。
なぜなら彼の顔は…。
次の瞬間、胴体から転げ落ちたのだから。
ブクマ、評価よろしくお願いいたします。




