1:晴海ー9
前回のあらすじ:
教室で弁当を食べようとしていた私と飛鳥。
そこに襲来する但馬と加賀先輩
そんなこんなで早3ヶ月が立った。
中間テストを終え、私はぐったりと机に伸びていた。
「晴美ちゃん~、テストどうだったぁ?」
「・・・聞かないでぇ~。」
飛鳥は私の席の隣に立ち、私のテストの様子を伺う。
徹夜明けの私は目を擦りながら、飛鳥を見る。
初めて徹夜を体験したけど・・・こりゃあ、眠いわぁ~。
「ふぁぁ~」
「凶暴猿が大きな口を開けて、カバにでもなりたいのか?」
「はぁ?!」
私が大粒の涙を目に貯めながら、大きな欠伸をした時、飛鳥の後ろにいた但馬から声がかかる。
その但馬も徹夜したのか目が赤かった。
「あんたも徹夜?」
「お前もか?」
「二人ともぉ~、徹夜はお肌の天敵だよぉ~。」
飛鳥は私達に注意を促す。
「ところで、飛鳥ぁ~。すっかり男の人と喋れるようになったね。」
「え、・・・うん。」
この1ヶ月の間、飛鳥は男の人が苦手だったのに、但馬と加賀先輩と鬼○郎とすっかり喋れるようになった。祐めぇ~、ノビノビしてたら、飛鳥取られてしまうぞw
「今日は部活ないし、どっか寄ってかないか?」
但馬が私達を誘ってきた。
「う~ん、眠いしぃ・・・家に帰る。」
「おい、冷てぇなぁ~。せっかく俺がおごってやるっていってるのに。」
「お、おごってくれるの!」
「晴美ちゃん・・・。」
ーん、中々魅力的な話だ。今、私の財布には50円しかないので・・・そりゃあとても魅力的。
「ああ・・。食欲に素直だな。」
「せ、せっかくだし、少しくらい暇つぶしに付き合って上げようかと思っただけよ。おごりなんて、そんなに期待してないし・・・。少しくらい・・。」
「私も行くわ。」
すると私達の話に入ってきた女がいた。・・・・但馬の幼馴染の由比だった。
由比は両手を組んで、私達の少し右側の位置に仁王立ちしていた。
「由比も来るのか?」
「敦、私が言ったら駄目な理由あるの?」
「お前、凶暴猿とどう見ても仲良くないだろ。」
「そんなことないわよねぇ、ねぇ?」
由比は目が笑っているが、威圧するようなオーラを放ち、私の方を見ていた。
ふぁぁ~、めんどくさいなぁ・・・。
もう帰って寝ようかなぁ。
「三重さん、ちょっといいかな。」
「うん?」
私は後ろから急に話し掛けられる。
ゆっくりと後方を確認すると、そこには最近ほとんど絡むことがなかった佐野君(後頭部男)がいた。
名前も佐野君がこのクラスの学級委員をしていなければ、きっと覚えていなかったと思う。
「なぁにぃ?」
私は気だるそうに、佐野君に話し掛ける。
「僕は君が好きだ。」
「「「「「「「「「「!!??」」」」」」」」」」
私達、いえ、クラス全員が驚きの余り、沈黙になり、佐野君に視線が集まる。
こ、こんなクラス全員がいる中で告白するなんて、なぁ、なに考えてんのよぉー。
私は顔を真っ赤にし、さっきまで訪れていた睡魔が嘘のようにはれていた。
「君は色んな男に少し人気があるみたいだ。このまま何もしなければ君は誰かに取られてしまうだろう。」
「は、はぁ・・・。」
「僕は先に動き出す。誰よりも! 君を僕だけのものにしたい。」
「・・・・。」
なんだ、この展開は・・・。私、佐野君にフラグを立てるようなこと何もしてないけど。
「わ、私のどこが好きになったの?」
「小さいとこ。」
「・・・・・・。」
「キュートイズビューティフォー。」
ぜんぜん惹かれませんけど・・・こいつ、それで私を口説くつもりか。
周りの飛鳥達を除いたクラスメート達は、ヒューヒューとかつきあっちゃえばとか適当な事を言ってくる。
飛鳥は顔を真っ赤にし、口元を両手で押さえ、慌てていた。
飛鳥が告白されたんじゃないでしょ・・・。
由比は付き合えば、お似合いよとか言ってくる。
但馬は横目で私達の状況を見ているだけであった。
「ここで返事を聞かせてもらえないか?」
「ここでぇ!?」
「ああ。何事も早いほうが良い。どうせ返事は決まっていると思うが。」
「じゃ、じゃあ・・・無理。」
「え?」
私が告白を拒否すると、佐野は信じられないという顔で私の顔を見ていた。
いや・・・そうだろう。どう見ても、この結果になるだろ。
「こ、この僕が・・・文武両道できるこの僕が・・・何をしても完璧なこの僕がぁ。」
聞いていない佐野君の情報を本人から教えてもらいながら、私は溜息をつく。
女を口説く練習をしてから来いと心を大にしていいたい。
「佐野君、晴海さん嫌がってるみたいなんで、そろそろ席にもどったら?」
「あ、ああ・・。」
鬼○郎が私のフォローをし、佐野君は席に戻り、急いで鞄を持って帰っていった。
「すごかったねぇ、晴海さん。」
にこやかな笑顔を見せ、可愛らしさがアップする鬼○郎。
ズキっと乙女の心に刺さるその笑顔、反則です。
その時、鬼○郎が震えた手でポケットから何かを取り出し、私の手に何かを握りしめさせる。
その手は汗を書いていたみたい・・・。
飛鳥は後ろからキャアキャア言っていた。
「じゃあ、これで・・。」
「は、はぁ・・・。」
「ハアハア、三重さん!!」
勢いよく教室の扉が開いたと思えば、走って疲れている加賀先輩が私の名前を呼んでいた。
「少しきてくれ!!」
「えっ!・・あぁ・」
加賀先輩は私の手を強引に引き、私はなされるがまま、加賀先輩と一緒に教室を出た。
「敦、加賀先輩一体何を・・」
「・・・・。」
但馬も無言で席を立ち、教室から走って出て行った。
「な、なに?」
「ふぁあああああああ、今日は何の日ぃ?」
由比は但馬の行動に驚き、飛鳥は嬉しそうに状況を見守っていた。
もちろん、飛鳥も教室を出て行った。
更新遅くなりました。
つ、ついに話しが急展開に。
短編なんだからもっと早く急展開にすべきだったのですが。
お待たせしました。次回、晴海完結編・・・・・のつもりです。