第八話 酒場II
「これならどーお。ウォーターバリア」
ジーラさんの目の前に薄い水の壁が現れた。
「ウォーターバリアは水属性の魔力を含んだ水を出して、攻撃から身を守る初級魔法よ。維持するのにも魔力を使わ」
俺もジーラさんの真似をして、ウォーターバリアと唱える。
すると、俺の前に厚い水の壁がが現れた。
「さっきから、初めて見た魔法を一発で成功させて! しかも、私の魔法より精度が断然高いなんて! それなら次はこの魔法よ!」
俺は今、ジーラさんと勝負? をしている。
俺がいろんな種類の初級魔法を一発で成功させるもんだから、ジーラさんが『どこまでついて来れるのかしらね』と言って挑発して来たのだ。
ジーラさんが初級魔法を使い、その後に俺が同じ魔法を真似して使う。
ただ、それを繰り返していた。
リラは安全なところで座って、俺たちのやりとりを見ながら、アクアフォースを全身にできるように練習している。
「はぁはぁはぁ」
ジーラさんは魔力が切れてきたのか、息を乱し始めた。
「大丈夫ですか? ジーラさん」
「だぁ大丈夫よ。でも……今日は終わりにしましょう。もう疲れたわ……体力的にも精神的にも」
ジーラさんはそう言って壁に寄り掛かる。
「見て! 見て! 」
ジーラさんが壁に寄りかかってすぐ、リラが俺たちの方へ走ってきた。
全身をアクアフォースで強化させて……
「おー! リラも全身に出来るようになったのか」
「私、頑張ったよ」
リラはニコッと笑って喜んでいる。
本当に嬉しそうだ。
「リラちゃんって何者なの?」
「私は何処にでもいる、ただのエルフだよ?」
「何処がただのエルフよ。リラちゃんみたいなエルフが何処にでもいたら、この世界は大変よ」
(実は、リラは勇者だったりして)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
終わったのが丁度昼だったので、俺たちは酒場で昼ごはんを食べることにした。
丸いテーブルに俺たちは座る。
「そう言えば、どうしてソラくんだけ他の勇者と別行動なの? 」
「それは……」
俺は言葉に詰まった。
どこまで話していいのかわからないからだ。
「俺は別の場所に召喚されたんです」
「別の場所? リフホーネじゃないってこと?」
リフホーネは輝たちのいる王都のことだ。
「そうです。実は俺は……」
魔法を教えてもらっているので、じいちゃんのことと聖剣を扱える事を除いて、ジーラさんに話すことにした。
「だから俺は他の勇者について、あまりしらないんですよ」
「それなら、私が知っている情報を教えてあげるわ」
王都リフホーネに召喚された勇者は、前聞いたように30人。
今は王都で、武器や魔法の訓練と、この世界のことについて勉強をしているそうだ。
「ジーラさん、リフホーネって何処らへんにあるんですか?」
ここから近いなら次の目的地はリフホーネで決まりなのだが。
「ソラくんたちは、地図を持っていないの?」
「すいません。持ってないです」
俺がそう言うとジーラさんは、『ちょっと待ってて』と言って立ち上がり酒場の奥に入っていく。
「どうしたんだろうね?」
「さぁ?」
10分後、ジーラさんは何かを持って帰ってきた。
そして、手に持っているものを俺に渡す。
ジーラさんが俺に渡したのはたのは、銀のブレスレットだった。
「なんですかこれは?」
「それはワールブレスレットという魔法具なんだけれど、取り敢えず、そのブレスレットを腕に付けてみてちょうだい」
俺はジーラさんに言われたとうり、ワールブレスレットを腕に付けた。
が、ワールブレスレットは大きく、俺にはサイズが合わない。
「ワールブレスレットに少し魔力を流してみて」
俺はワールブレスレットに魔力を流す。
すると、ワールブレスレットのサイズが小さくなり、俺の腕にフィットした。
そして、ワールブレスレットから地図が映し出される。
「これは、この世界の地図ですか?」
「そうよ。ワールブレスレットは魔力を流す事で現在いる大陸の地図と、この世界全体の地図が映し出される魔法具なの」
スマホのマップみたいなものだ。
「それは、私がまだ冒険者をしていた時に使っていたものよ。使わないからソラくんにあげるわ」
「良いんですか貰っても?」
「貰いものだから気にしないでちょうだい。必要な人が持っていた方が良いもの」
「ありがとうございます。ジーラさん、大切にします」
俺はワールブレスレットから映し出された地図を見ている。
(リフホーネはどこだ? この光っているのが俺ってことでいいんだよな……)
そんなことを考えていると、いつの間にかジーラさんの顔が横にあった。
「ここがルーブビレで、こっちにあるのがリフホーネよ」
ジーラさんが地図に指をさして教えてくれる。
(近い! ジーラさん近すぎる! )
ルーブビレからリフホーネの途中には、いくつかの街や村があった。
俺がリフホーネまでの距離をジーラさんに聞くと……
「軽く2000キロはあるわね」
(遠!!)
どれくらい遠いいのかと言うと、福岡から北海道ぐらいまでの距離がある。この世界には、飛行機なんて便利な乗り物なんてない。歩いて行ったら何百時間もかかるだろう。
これは、次の目的地わリフホーネにするのはやめたほうがよさそうだ。
「ソラ! ここにロナテーナがあるよ!」
リラが地図を覗き込む。
(だから近いって!)
その後、俺たちはこの街について雑談しながら、食事を済ませ、別れた後俺とリラは、ルーブビレを観光することに決めた。