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一人だけ別の場所に召喚された勇者(仮)  作者: 鳩ゆうら
第1章 始まり
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第七話 酒場Ⅰ

ブックマークありがとうございます

 翌朝俺とリラは、ザルーガさんに教えてもらった酒場に行くことにした。


「私たちに魔法を教えてくれるのはどんな人かな?」

「おっさんとかじゃないか?  いつも酒場にいるって話だし」


 ザルーガさんによると、この街で一番強い魔法使いらしいが……


 俺たちはギルドに横にある酒場に着いた。

 ギルドよりは小さいが立派な建物だ。

 店内に入るとまだ朝だからなのか、今はお客さんが少ない。

 夜になるとクエストを終えた冒険者で賑わっているのだろう。


「すいません。魔法を教えてもらえるって……言われてきたんですけど?」


 俺がそう言うと店の奥の方から、一人の優しそうな女性がやってきた。


「話は聞いているわ。ソラくんとリラちゃんね、二人とも、私について来てちょうだい」


(普通に綺麗な女性じゃん )



 俺たちは女性について行く。

 酒場の奥に進み階段を降りると、そこには広い部屋があった。

 部屋と言っても殺風景で物は何もない。


「私はジーラ・マライア、 ザルーガの妹よ。ジーラとよんでちょうだい」


(全然似てないじゃん!)


 俺とリラは顔を見合わせる。

 多分リラも俺と同じようなことを思ったはずだ。


 ジーラさんは元上級冒険者だったんだが、3年前に冒険者を引退して、兄のいるルーブビレに酒場を作ったそうだ。


「俺は奏多(かなた)そらで、こっちの女性が リーラ・レイシャンです」


 リラがジーラさんにペコッと頭を下げた。


「二人には私が魔法を教えようと思っているんだけど、リラちゃんの適正属性を教えてくれない?  まずは2人に共通の適正属性のを教えるから」


 俺の適正属性はザルーガさんに聞いているようだ。

 そういえば、リラは誰にもギルドカードを見せていないので、俺も適正属性は知らない。



「私の適正は水に風と光と闇と回復の五属性です」

「えっ!  五属性あるの!」


 驚きすぎて思わず、声を出してしまった。

 ザルーガさんは、どれだけ魔法に才能があっても、適正属性は三属性だと言っていたのに、リラは五属性の適正かあると言っている。


(どう言うことだ?)


「リラちゃん本当なの?  ソラくんは勇者らしいからまだわかるけれど」


 ジーラさんもリラが言ったことに驚いている。

 リラはポケットから何かを取り出した。

 ギルドカードだ。

 リラはそのギルドカードをジーラさんに見せる。

 ギルドカードを見たジーラさんはありえないという顔になった。

 ジーラさんに見せた後、リラは俺にもギルドカードを渡す。

 昨日、俺はリラにギルドカードに書いてある字を教えてもらったので、リラのギルドカードも読むことができる。


−ギルドカード−


リーラ・レイシャン 17歳 女 エルフ

レベル1 駆け出し冒険者

魔力量 20000

適正属性 水 風 光 闇 回復



(本当に五属性書いてあるし、魔力量も多い……それより!)


 一番俺が驚いたことは、リラがまだ17歳だったことだ。エルフは長寿でも見た目は若い。

 マーシさんがいい例だ。だから俺はリラがずっと何歳か気になっていたがまさか、俺と1歳しか変わらないなんて……


「私も昨日見て驚きました」

「えっ!? 今までリラは、自分の何歳か知らなかったのか!?」

「えっと……ソラは何を言ってるの? 私が知らなかったのは風属性以外に適正があったことと魔力量の多さのことだよ」


 リラは俺のことを『バカなの?』って顔で見ていた。


(そうだ……。今は適正属性のことを話しているんだった)


 誰も、リラの年齢の話なんてしていない。

 俺が勝手に驚き盛り上がっていただけだ。


 リラがロナテーナにいる時は、風魔法しか使ってなかったそうだ。

 普通の人よりも適正属性と魔力量が違いすぎて、ギルドでは言えなかったらしい。


「ソラくんとリラちゃんは、将来が楽しみね。私なんてすぐに抜かれちゃうわ」


 ジーラさんは俺たちを見て微笑む。


「私の適正属性は火と風と水だから……まずは水属性の魔法を教えたいと思うわ」


 適正属性にも得意不得意があり、ジーラさんは水魔法が一番得意らしい。


「アクアフォース」


 ジーラさんの全身が青く光る。


「これは水属性の身体強化魔法よ」


 アクアフォースは初級魔法で、水の力を使い身体能力を二倍にすることができる魔法だそうだ。


「この魔法は初級だけど、全身を強化するのはかなり難しいわ」


 一部分だけの強化なら初級レベルに、全身強化なら上級レベルになるらしい。

 ジーラさんでも全身を強化するのに5年はかかったそうだ。


「まずは腕を強化してみてちょうだい。魔力を腕に行き渡らせる感覚よ」


 俺たちはアクアフォースを唱えたが、青い光は出なかった。

 やっぱり、感覚と言われてもいまいちピンとこない。


(そうだ!)


「アクアフォース」


 もう一度アクアフォースを唱えると、俺の全身が青く光った。


(やっぱりそうか)


 俺はオズタートでエートスを倒した時のことを思い出す事で、アクアフォースを成功させたのだ。

 思い出したのは、聖剣アルダートに魔力を吸われた後、俺の全身が輝いた時のこと。

 それをイメージして、アクアフォースを唱えたら簡単にできた。

 魔法にイメージは大切なのだ。

 俺は室内を自由に動き回るが、あの時と比べて4分の1以下の動きしかできていないことが分かった。


「ソラくん!  すごいわ、2回目で全身を強化することに成功するだなんて! 」


 ジーラさんは自分のことのように喜んでくれている。


「流石ソラだね。私も頑張らなくちゃ」


 リラは俺を見てやる気を出していた。

 褒められるのは少し恥ずかしい。


「リラちゃんはそのまま続けてて、その間、ソラくんに火属性の魔法を教えておくから」


 ジーラさんは俺のところまで来て……


「見ててねソラくん」


 ジーラさんが手を前に突き出し


「ファイヤーボール」


 そう唱えると、ジーラさんの手のひらから火の玉が出てきた。

 バレーボールぐらいの大きさだ。


「いけ!」


 火の玉はジーラさんの声に合わせて真っ直ぐ進んでいく。

 そのまま、火の玉は壁にぶつかり小さな焼け跡を残して消えた。


「ファイヤーボールは火属性の初級魔法で、手のひらから火の玉を出して、相手を攻撃する魔法よ」


 ジーラさんが俺を見る。

 やってみなさいと言っているように……


「ファイヤーボール」


 俺の手のひらから火の玉が現れた。


(やった! 成功だ)


 しかも、ジーラさんのファイヤーボールよりも、倍ぐらい大きい気がするのは気のせいだろうか。

 ジーラさんと同じように、俺はファイヤーボールを壁にぶつけた。

 


 ジーラさんを見ると口を押さえて驚いている。


「なんで一発で成功出来るのよ!? しかも……私のファイヤーボールより大きくなかった?」


 やっぱり俺の放ったファイヤーボールは、ジーラさんのより大きかったようだ。


 こうして俺たちの魔法練習は続く。

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