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一人だけ別の場所に召喚された勇者(仮)  作者: 鳩ゆうら
第1章 始まり
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第五話 ギルド

 俺たちは今、ロナテーナから一番近いルーブビレと言う街に向かっている。


「あのさぁリラ?  道はこっちで合ってるんだよな」


 リラが『この森のことなら私に任せて』と言って、俺を案内してくれているのだが、俺はルーブビレにちゃんと到着できるのか心配になっていた。

 何故なら、先程まで緑豊かな森だったのが、いつの間にか、霧の立ちこめる薄暗い森に豹変しているからだ。

 どうみても正規の道ではないだろう。


 俺の前を進んでいたリラは、後ろに振り返り、立ち止まった。


「私はここまで来るのは初めてだけど……このまま進めば大丈夫だよ! ……多分」

「多分なのかよ! だいたい、リラはこの森に詳しいんじゃなかったのか?」

「詳しいよ。それじゃあ、私がそらにこの森についていろいろ教えてあげるよ」


 リラはそう言って俺の横に並んだ。


「この森にはね、外の人には迷いの森って呼ばれているらしいよ」

「迷いの森?」


 迷いの森って言われるくらい、この森な迷いやすいってことだろうか?

 やっぱり俺たちは迷っているんじゃないのか?


「実はこの霧はおばば様の魔法なんだけど、この森に入ってきた魔物がロナテーナまでたどり着けないようにするための魔除けの効果があるんだって。まぁ、エートスは入ってきちゃったんだけどね」


(この霧が魔法か)


 こんな凄そうな魔法、俺にも使えるような時が来るのだろうか。

 俺が今使える魔法は、小さな水の塊を回転させて、貫通力のある水弾を飛ばす、アクアショットという魔法だけだ。

 一週間の間で俺は1つしか魔法を覚えることができなかった。


 魔法は体内にある魔力を変換して放つ。

 それは誰にでもできる基礎で常識なことらしいのだが、異世界から来た俺には、魔力の変換の仕方なんて全くわからなかった。

 マーシさんやリラにコツを聞いても……

『『感覚じゃな(だね)!!』』

 と、言われ全く参考にならない。

 結局俺は自分でわかりやすい答えを見つけた。

 日本にいた頃に読んだ漫画に、魔法はイメージだと書いてあったので、頭の中で銃の弾をイメージして魔法を放ってみたのだ。

 すると、今まで失敗に終わっていたアクアショットが成功した。

 何故か、リラとマーシさんが驚いていたのは、今でも覚えている。

 一つ魔法が使えれば、次から魔法を覚えるのは簡単だと言う事で、その後は、剣術の基礎を教わる事になっのだ。


「あっ!  見てソラもう直ぐ森を抜けるよ!」


 霧も薄くなり、俺たちの目の先には草原が見えた。

 リラは、年相応にテンションが上がっているようだ。

 まぁ、年相応と言っても、リラの年は未だに知らない。

 見た目は俺と同じくらいだけど、マーシさんたちを見たらなんとも言えない。

 それに……


(女性に年は聞けないし)


 そして、とうとう俺たちは森を抜けた。

 そこには、草原が広がっていて、遠くには街が見える。


「あれが、ルーブビレか」


 ルーブビレの場所を確認した瞬間、隣から『グゥ〜』と音が聞こえてきた。


「リラ?」


 俺が隣を見るとリラは恥ずかしそうにお腹を抑えていた。

 そして、俺が見ている事に気がつくと、リラはそっぽを向く。

 よく見るとリラの顔が真っ赤になっているのが分かる。どうやらリラのお腹の音がなったようだ。


「リラ、お昼にしようか」

「うん」


 リラは嬉しそうに頷いた。


 俺はサフィークからいくつかの包みを取りだした。その中にはなんと、おにぎりが入っているのだ。


 この世界にはお米がある。マーシさんによれば、

じいちゃんがこの世界に召喚される直前まで、じいちゃんは農作業を手伝っていたらしく、籾米もみごめを手に握っていたらしい。

 そして、環境が整っていたロナテーナで、籾米を育て初め、お米を作り始めたそうだ。

 サフィークの中にはおにぎりと500キロ以上お米が入っていたので、中を確認した時は驚いた。


「動いた後のご飯は美味しいね」


 リラはもぐもぐおにぎりを食べている。


「リラほっぺにご飯粒がついてるよ」


 俺はリラのほっぺからご飯粒を取り、そのまま口に運んだ。


「「…………………あっ (えっ)!?」」


 俺とリラの驚きの声が重なる。


(なにやってんだよ!  おれは!?)

 

「そろそろ行こっか?」

「そう……だな」


 俺たちは気まずい空気の中、再びルーブビレに向けて出発した。



    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 俺たちは魔物に会う事もなく無事にルーブビレにたどり着くことができた。



(ここがルーブビレか……)


 西洋風の建物が広がる小さな街だった。この世界のすべての街は西洋風だそうだ。


「まずは冒険者登録からだな」


 ロナテーナを出る前にマーシさんから旅をするならギルドに登録しておいた方がいいと言われた。

 旅に必要なお金はギルドのクエストで稼せぐのが一番効率がいいらしい。


 俺たちは人に聞きながらギルドを目指す。

 この街には獣人や魔族などの種族はおらず、ヒト族ばかり住んでいるようだ。

 ギルドを目指し、歩いているといつの間にか俺たちは皆の注目の的になっていた。

 みんなリラの美貌に目を奪われているのだろう。


「ここがギルドか」


 ルーブビレの中でも、ひときわ目立つ建物が、目の前にあった。

 俺たちはギルドの中に入る。


「人がいっぱいいるね」


 リラはキョロキョロして周りを見ていた。

 ロナテーナから出たことのないリラは1つの場所にこんなに人が集まっているのは珍しいのだろう。

 俺たちはギルドの中を進み、受け付けの人っぽい人がいるところまで移動して立ち止まった。


「あのぉ、すみません……冒険者登録をしたいんですが? ここでいいんですか? 」


 俺は18歳ぐらいの若い女性に話しかけた。

 すると、女性は俺に話しかけられた事に驚いたのか、ビックと身体を揺らす。


「だっ大丈夫ですよ。そっそれでは、冒険者になるための説明をしますので、こっこちらにお願いします」


 俺たちは、女性に奥の部屋に案内された。


「まずは自己紹介を、わっ私は、新米ギルド員のフラン・エレジー と申します。フランとお呼びください」


 フランさんは昨日、就任したばかりの新米受付嬢で、これが初仕事だそうだ。

 物凄く緊張しているのが伝わってくる。


「まず初めに、とうりょく……登録料に大銀貨銀貨1枚かかりますが、宜しいでしょうか? 」

「わかりました」


 俺はサフィークから大銀貨2枚を出して、フランさんに渡した。


「確かにいただきました。それでは次にこちらを」


 そう言って、フランさんは俺とリラに2枚の紙を渡す。


「規約証明を読んで、だっ大丈夫ならこちらにサインをお願いします」



 俺は紙に書いてある文字を読もうとしたが、読めなかった。日本語ではなく、この世界の文字だったからだ。


(なんで、来る途中に気づかなかったんだよ俺は)


 ギルドに来る途中にも、看板などの文字が知らない文字だった事に今更気づいた。

 ここで一つの疑問が生まれた。

 それは、文字は読めないのに、言葉だけは日本語にきこえているのだ。


(なんでだ? って今考えても仕方がないか……)


「すいません。俺、文字が読めないんですが? 」

「それでは私が規約を読ませていただきましゅ」


 規約証明の内容を簡単に訳すと、死んでもギルドは責任を一切取らないという事だった。

 俺たちは紙にサインをする。


「次にクエストについての説明をします」


 クエストはギルドランクによって受けれる難易度の上限が変わる。


 ギルドランクは1から100までのランクがあり、

  1から10 駆け出し冒険者

 11から20 初級冒険者

  21から50 中級冒険者

 50から90 上級冒険者

 91から100 最上級冒険者

 と、なっている。


 ランクを上げるには、クエストをこなしていくか、王族に活躍を認められるかの二つらしい。



「次にギルドカードの発行をいたします」


 フランさんは、俺とリラに一枚のカードを渡した。


「ギルドカードは、個人証明書としても使えますので無くさないようにお願いします」


 ギルドカードを無くしたら、再発行料に銀貨5枚がいるそうだ。


「では、そのカードに魔力を流してください」


 魔力には個人の情報が詰まっているそうなので、魔力を流すだけでギルドカードはできるそうだ。

 俺たちはカードに魔力を流す。

 すると、カードに文字が浮かび上がった。

 まぁ、さっきと同じくこの世界の文字なのでなんて書いてあるかあるかわからないのだが……

 なので、フランさんに見てもらう事にした。


「なに!?  これ!」


 フランさんが大声を上げた途端、『バタン!』と椅子から綺麗に転げ落ちた。

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