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新たな街  作者: 瑠璃
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-- ランエル 01

「魔法と冒険の世界はね、一日が二十時間で四百五十日で一年だよ。んでね、四十五日でひと月、十ヶ月で一年かな。言葉の感じは日本語に近い。月とか年とか。あっ! 月はね、すっごくでっかいのがひとつだけあるんだよ」

「ふーん。微妙にここと時間がずれるな」

「まあ、その辺は気にならないでしょ。どうせ長生きなんだし」

「まあな。ここより一年が十日分長いのか……」

「季節はね、冬がないの。春と夏と秋。でも一年中この島みたいに安定した気候だよ。雪なんて山の頂上とかに行かないと見られないし」

「ふーん。俺寒がりだから冬がないのはいいな」

「結構びっくりしたのが、世界共通の標準語みたいなのが、ひらがなみたいに一音が一字なんだよ」

「へえ。珍しいな」

「でしょ。もちろん文字はひらがなじゃないんだけど」

「そうだろうな」

「あとね、聞いて驚け! なんとその世界、箱庭みたいなんだよ」

「は?」

「つまりね、母様の故郷やここと違って、世界が丸くないの」

「惑星じゃないってこと?」

「厳密に言うとこの世界も惑星ではないけどね」

「あー、確かに違うよな……で、箱庭って何だよ。海の端っこは突き当たっちゃうわけか?」

「反対側にたどり着くの。ほら、RPGのマップとかもそうじゃん、北の端まで行くと南の端にいつの間にかいるような。あんな感じ」

「ふーん。まるでゲームだな」

「現実だけどね。空は青いし、雲は白い、山もあれば海もある。重力もあれば大気もある。箱庭のくせに環境はここと変わらないかな。あっ、あと海は塩辛くないから。淡水だよ」

「マジか! 俺淡水魚より海水魚の方が好きなのに!」

「まあ、その辺は鞄から取り出しなよ。どうせあのとんでも鞄持って行くんでしょ」

「とんでも鞄言うなよ。俺の最高傑作なんだから」

「あれ、日本でも使えたらいいのになぁ……。後でフェンに相談しよう」






「はい。ここが魔法と冒険の世界ですっ!」

「なんか、一瞬なんだな、門をくぐるって」

「門って母様みたいに言わないでよ、ゲートって言って、ゲートって」

「門もゲートも同じだろ」

「響きが違うよ! ゲートの方が格好いいでしょ!」

「どっちでもいい。で、ここどこ?」

「この世界の真ん中」

「いや、森ん中だし」

「んーとね、ラン兄様この世界の理解力使える?」

「ん? ………………使えるな。あーでも大まかなことしか分からん」

「母様と一緒だね。母様も最初は大まかなことしか解らなかったみたいだよ。ってか母様の場合は自分で事細かに考える気もなかったみたいだけど」

「あー、お袋ひそかに大雑把だもんなぁ」

「でねでね、この世界は大気中に魔力が含まれているところは一緒なんだけど、人体に魔力の器が存在するんだよ。その器の大きさによって魔力量が変わるの」

「へーえ。俺の体もそうなったの?」

「いや。ラン兄様の体はどこも弄ってない。だから今までと同じように魔力が使えるし、今まで通り魔力が体を調節してくれる」

「その魔力の器って、臓器的な?」

「臓器とはちょっと違うんだよね」

「どういうこと?」

「うんとねぇ、脳全体で魔力を蓄えている感じ?」

「……なんか、危険な香りがするな」

「うん。過剰に魔力を流し込まれると、脳みそバーンになる」

「……過剰に魔力を流し込めることの出来るヤツってこの世界にいるのか?」

「うん、目の前に」

「俺か!」

「現時点ではラン兄様くらいだと思う。だからそれも踏まえて、うまいこと魔法の伝道師となってね。ラン兄様は母様譲りの信用出来る人アンテナと人誑しスキルがあるじゃん。それで上手くやってよ」

「……」

「……」

「……現状で魔法を使えるヤツの数と程度は?」

「少ないよ。全人口の一パーセントくらい。程度は……うーん、生活魔法が使える程度?」

「つまり一般人程度ってことか」

「そんな感じかな。魔法師って言われてるんだけど、ものすごく地位が高いからか、ものすごく嫌なヤツが多い。最初はこの世界の人に魔法の伝道師になって貰おうと思ったんだけど、誰も彼もが嫌なヤツでさぁ。ムカついたからラン兄様にお願いしたの」

「……」

「あっ! 今から取り消すのナシだからね!」

「……」

「取り消さないよね?」

「……魔力の器って、程度はあれ誰もが持っているものなのか?」

「そう。でもたいていの人は一般人程度だね。魔力で体を調整してない分、程度の差はあれみんなが魔力を使えるはず」

「なるほどな」

「ただ……器の大きい人からは器の大きい子が産まれやすい」

「あー、それ面倒だな」

「でもいずれは分かることだし、その後のことはこの世界でなんとかすべきことだと思うから、ラン兄様は気にしなくていいと思う」

「ふーん」

「あとなんか質問とかある?」

「翼は何かあるか?」

「私のような存在は?」

「今はいないかな。ここでは魔物って呼ばれてるけど、みんな魔獣並みだね。下位すらいないかな」

「じゃあ翼は人型でいるか、不可視の結界張った方がいいな」

「でも、ここの魔物は魔獣と同じでみんな黒いから、間違われないと思うよ」

「ああ、確かに翼は無駄にきらきらしてるもんな。羽根は純白だし、嘴も毛も黄金色だし」

「無駄って……そーゆー言い方ないと思う。突くよ!」

「前から思ってたんだけど、翼ってちゃんと男の子だよね、ときどきオネエっぽいよね」

「ちゃんとって何よ! れっきとした雄グリフォンだよ。言葉が柔らかいって言ってよ!」

「だいたい、グリフォンじゃないし、翼」

「あー、確かにな。お袋のいい加減さが分かるよなぁ」

「でも他に言い様もないよね」

「まあな。グリフォンみたいな、って感じだもんな、翼」

「それ以上言うと突っつくよ!」

「じゃ、もういいね」

「行くのか?」

「うん。あっ、忘れるところだった。あとこの指輪。この指輪に向かって父様の名前を呟くと、近くにある扉と仕事部屋の扉が繋がるから、何時でも帰って来られるよ。ただしラン兄様からの一方通行だけど。戻るときは仕事部屋の扉を指輪のはまった手で開けると戻れるし、戻るときは来たときと同じ時間に戻るようになってる」

「は? そんな簡単なのか?」

「あーうん。父様にしようか母様にしようか悩んでたら、父様が絶対母様はダメだって言うから……それ、父様とペアだから」

「微妙だな」

「一度装着したら外れないから」

「つける前に言えよ! くそっ! 本当に外れない!」

「……左手の人差し指にしてよかったね。ちなみに父様も同じ指だよ」

「エル!」

「ぐへへへへ……」

「お前、笑い方だけは本当直せよ、折角お祖母様に似て見目がいいのに、その笑い方はないわ……」






────用語の説明────


二人の母──ある日突然異世界に連れて来られた元日本人。


とんでも鞄──正しくは何でも鞄。何でも望む物が取り出せ、収納出来る、特殊な魔法陣が刻まれている鞄。命名はランドルフ。


門──世界を超えるときに現れるその境界。


理解力──その世界の有り様が理解できる力。


信用出来る人アンテナ・人誑しスキル──魔力が大きすぎるため、自然とその人の本質を見抜いてしまう。人が自然と畏怖し敬い、慕う。


翼のような存在──魔力の塊が具現化した存在。力あるものと呼ばれる。高い思考力と意思を持ち、その姿を契約したものと同じにすることが出来る。契約した力あるものは契りしものと呼ばれ、本来の姿は伝説上の生き物に近い。魔力の大きさにより、上位・中位・下位・それ以下と分かれる。それ以下は魔獣・魔物と呼ばれ、意思がなく人や獣を襲う存在。翼は上位体。






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