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題名のない僕たちの   作者: マヨ
1/1

最初の歌

死、死、死。

ここはそんな匂いで溢れ返っている。

生、生、生。

ここはそんな言葉で溢れ返っている。


「生きるって、どんなのかなぁ」

僕に尋ねてきたのは小さい幼女。普通なら、こんな幼い子供がこんな事聞かないはずだが。

「さあ」

僕はそっけなく返した。

少女は「そう」とうっすら笑い、僕から目線をはずした。

僕らは暗い病棟の廊下を進む。

目指すは、「303」とかかれた病室。

「あったよ」

そう言いながら幼女はゆっくりと中へ繋がるドアを開いた。中には僕と同じくらいと思われる少女が寝ていた。外はもう真っ暗だったし、時計は真夜中の1時をさしているから当然といったら当然なのだろう。

少女の腕には何本かの人工的な管がついていた。その腕を近くで見たくて、そっと少女に近づいた。

「痛々しいなぁ」

「何よ」

僕はぎょっと目をひらいた。寝ていると思ってた少女から声が聞こえたのだ。腕から顔に視線を向けると、少女の目は開いていて、その目には僕らの事を怪しいと言わんばかりに訴えてきた。こうなると「怪しい者ではありません」なんて、信じてもらえないだろう。

「えーいやーその」

「私達はあなたを迎えにきた」

いきなりだな!?

ためらう僕をおいてけぼりにして、幼女は無責任に言い放った。

少女の目に宿した僕らに対する思いが強まった気がする。これは単純に、や、ば、い。

いや、僕らはいいんだけど…

「看護師さんでも呼んでくる」

ああああほら…。僕は頭を抱えた。

「だから、迎えに来ました」

いや、ね!?敬語にしたらいいってもんじゃないんだよ!?

幼女の言葉を聞かずにして少女は病室から出ていってしまってた。

「隠れなくても大丈夫だよ」

何故か知っている事をドヤ顔で言われた。僕は我慢していたため息を開放した。「幸せ逃げるよ」なんて言ってる幼女を無視して深いのを、1つ。

そうしているうちに足音が2つ。カラカラという音はきっと少女の点滴だろう。

ついに、きたか。きてしまった。この時が。

バンッという音と登場してきたのは、少女とこの病院の看護師で。男の看護師はドカドカと入ってきては、個室の小さい病室を一回りした。

飛鳥あすかちゃん、寝ぼけてる?」

「え?」

「だって誰もいないよ?」

「は!?」

看護師は優しさの中に困りを含ませた笑みを浮かべた。

「ここに!います!!!よ!?」

僕らの方をズバッと指した。が、看護師は笑みを崩さず首をかしげた。

「疲れてるんじゃないかな?もう寝なさい?」

そういい残して看護師は去っていった。

「そんな…じゃあこいつらは幽霊だっていうの…?」

飛鳥はヘタッと床に膝をついた。

「迎えにきたって…私、死ぬ…の?」

「それはわかりません…。いつどこで誰か。僕らにもわからない。そして、生きるか死ぬかも」

「どういう事?」

飛鳥は僕らの方に顔を向けた。

「今はなんとも言えません。ですが、僕らは君の中にある『力』を迎えに来ました。君の力は殺すのか生かすのかはまだわかりません。ですがその力は確実に近い将来死ぬべきではない命を救える可能性がある。その可能性を現実にできるようにするため、僕らはここにきた」

飛鳥の頭には「?」が浮かんでいる。そりゃそうだろう。僕だってこんな事いきなり言われたら困るし、理解できないだろう。しかも見ず知らずの他人に。仕方ない。

「帰れっつったら?」

「できません」

「…」

飛鳥は少し黙って考え込み、再び口を開いた。

「よくわからないけど…、そのうちわかんのね?ならいいよ。やってやる」

飛鳥の目が輝いてる気がした。



___



飛鳥は感情豊かで面白い。

僕らが飛鳥以外には見えないから誰かに言ったところで意味がない事を伝えると怒った。だから僕はやばいと。恥をかくのは飛鳥の方なんだと。心の中であせっていたというのに。まぁ、いくら怪しいとはいえ、露骨にあの態度は傷つくよ。軽い仕返しという事にしておこう。

とりあえず詳しい事は朝になってからという事になった。僕らは病院の屋上で夜を越す事にした。



___



「んん…ねむぅ…先行ってぇ…」

幼女は目を開かず言った。ま、小さいから仕方ないな。

僕は飛鳥の部屋に1人で向かう。機能と同じく303のドアを開いた。

「飛鳥~おはよ…ってごめん!」

開いた先には着替え中の飛鳥がいた。僕は急いで飛鳥に背中を向ける。

「…いいよ。てか、きてよ」

「え!?でもそんな…」

「じゃあいいよ」

諦めてくれたのだろう。僕は胸をなでおろす。

「自分で行くから」

「え…!?」

「嘘だよ。いいよ、終わった」

きつい冗談だぜ、やれやれ。

僕は安心しながら振り返った。

「終わってないよ!?」

「煩い。また背中向けたら殴るから」

そんな…。僕は世間一般でいうと『童貞』という立場なのに…。せめてそれはうまく隠さないといけないのにこれじゃ…これじゃ童貞丸出しではないか…!

幼女がいなくてよかったと思う反面、幼女がいたらこんな事にはならなかったのではないかという恨みが同時にこみ上げてきた。

「目、開けて…?」

ぎゅっと両目を閉じ続ける僕に不満を感じたのか、飛鳥は告げた。声色は優しかったが、それは策略かもしれない。ゆっくりと右目を開けていく。あ、結構おおきい…じゃなくてじゃなくて。

「どう?こっちの方が痛々しいんじゃない?」

飛鳥はいたずらっ子みたいに笑った。

よく見ると、飛鳥の体には手術と思わしき後があった。

「出会って24時間も経ってない人に見せんのおかしいでしょ?でも、あんたならいいかなって。あ、あんた名前は?」

飛鳥はさらしだした体を隠すため、ボタンを閉めた。

「僕の…名前…は、無いかな…いや、正確に言うとわからないんだ。僕らは、死んでて。生きてた記憶がなくて。でも、こうして存在してて。上手くいったら転生できるらしいけど、僕もあの子もあんまよくわからないんだ」

「そっか。ゲームみたいだね」

「そっかな」

「うんうん。私ゲームすきだからさ。」ま、好きじゃなかったらこんなもんうけいれないよねぇ」

なるほど。だからあの時目を輝かせたのか。

「やる理由がゲームって」

僕は思わずふきだした。

「笑うって酷くない!?」

そういった飛鳥も笑っていて。

楽しい。僕はそう感じた。


この幸せが、願わくば永遠に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








『アイツダアイツダアイツノアイツガアイツダアイツダアイツアイツアイツあははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは殺さなキャ』



ここまで読んでくださってありがとうございます!

飛鳥たちとはまた次の『間奏』でお会いできたら幸いです。

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