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女の子を助けたと思ったら──


 最後にヒロイン登場です。




 俺が万能薬草を見せた途端、女の子の泣く声が止まる。

「お……お兄ちゃん……それ…………もらって……いいの?」

「もちろん。お兄さんが持ってても使わないから、君のお母さんとお父さんに使ってあげて。あ、お金なんて取らないから安心して」

「う…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!! ありがとう……お兄ちゃん!! ありがとう!!!」

 万能薬草をしっかり手に掴ませてあげると、女の子は嬉し涙を流して俺に抱きついてきた。

 分かってる。両親を救えること、そして万能薬草を分けて貰ったことが、この女の子にとっては限りなく嬉しいのだ。それほど、この子の両親はこの子にとってかけがえのない存在ということだ。

「ほら、いつまでも泣いてないで。早くお母さんとお父さんを助けにいってあげないと」

「ひぐっ……えぐっ……そう……だよね……! あ、お兄ちゃん……お礼にこれあげるっ」

 俺に慰められて泣くのを止めた女の子は、そう言うと足元に置いていた小さなバスケットから何かを取り出した。それは少し大きめの布で包んであり、少しだけ香ばしい匂いを漂わせていた。

 俺が不思議そうに見る中、女の子が布を外すと、それは手作りの2つのパン。香ばしかったのは生地の香りらしい。

「これ、おやつ用に自分で作ったんだけど……お兄ちゃんにあげるっ」

「え、いいのか? 自分がおやつで食べるように手間暇掛けて作ったんだろ?」

「……いいの。おやつなんかより、お母さんとお父さんが生きている方が大事だから……。私に出来るお礼はこのくらいしか無いけど──受け取ってほしいな」

「────分かった。ちゃんと味わって食べるよ」

 女の子から差し出された2つのパンを、俺は懐にしまい込む。

「えっと、じゃあ私家に戻るね! バイバイ、お兄ちゃん!!」

「じゃあな! お母さんとお父さん、元気になるといいなー!」

 土手の下の草原を駆けていく女の子に手を振ると、女の子は見えなくなるまで手を降り返してくれた。

 あの子の両親は、無事に治るだろうか。いや、きっと治る。そうじゃなければ、あの子はまた涙を流す。それだけはさせない。

 あとはもう、万能薬草の力に頼るしかない。

 神様──どうかあの子の両親に救いの手を。

「──さて。じゃああの子のくれたパン、食べてみるか」

 俺は街道脇の手頃な岩に腰掛けると、女の子のくれたパンを1個取り出した。流石に数時間程ぶっ続けで歩き通した上に何も食べてないので、そろそろ腹が限界だ。

 人間三食きちんと食べないと充分な活動が出来ないと聞くので、最低限の食物は摂取しなければ。

 また人間の脳はブドウ糖さえあれば機能するらしいので、パンはブドウ糖摂取出来る食物の中でカロリーとコストパフォーマンスが最強なんだとか。

 よくアニメなんかでは遅刻寸前の主人公やヒロインが食パンをくわえて登校しているが、あれは結構利にかなっている事になる。

 パンって凄いね。

「んじゃ、いっただっきまー──」



「お助けくださいっ!!」



 ──すと言いかけたその時、誰かが助けを求める声が俺の腕を止めた。

「何方か、お助けください!!」

 その声のする方を向くと、街道の向こう側から誰かが走ってくるのが見えた。

 始めは遠くて分からなかったが、その人物が近付いてくるにつれてその容姿が鮮明に捉えられるようになる。

 透き通るような白い肌。

 肩まで届くセミロングの金髪。

 慈悲を感じさせる碧眼。

 そして──明らかに人の物ではない、尖った耳。

 間違いない──エルフだ。

「あっ──そこの御方! 助けてくださいっ!!」

 息を切らせて駆けてきたのは、俺と同世代の見た目のエルフの少女。

 必死に走ってきた様子から、ただ事では無いことが見てとれる。

「お、おい、どうしたんだ?」

「はぁ……はぁ……はぁ……私……怖くて逃げてきたんです……」

「え、どこか──ら?」

 と、そこまで言って俺は息を飲んだ。

 俺にそうさせたのは、彼女の首に付いている物体。

 それは──



 ──首輪。



 それが意味することはただひとつ。

 この少女は──奴隷だ。




 感想、コメント共にお待ちしています!

 また、誤字脱字等ありましたら、ご遠慮なくお申し付けくださいm(__)m


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