泣いている女の子を助ける──それだけだ。
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「──にしても、まさかポテチがこんなに化けるとはな……。想像の上を行ってて驚いたわ」
男性と別れて数十分。俺はポテチ一袋がもたらした物に未だ驚きを隠せないまま、街道を歩いていた。
だってよ、税込み134円が4万1800円になった上にローブと万能薬草のおまけ付きと来たもんだ。まるで海老で鯛を釣る──いや、ゴカイでマグロを釣るだなこりゃ。
そんくらいのローリスクハイリターンだぜ? 信じられないのも当たり前だ。あの男性には本当に感謝しなければ。
「さて、今後の目的はどうすっかな……。取り合えず今日は町に辿り着いて、宿を確保して──そんぐらいか」
流石に俺もちっぽけ(身体は平均的)な人間だ。一度に色んな事をやれと言われても無理がある。まずは目の前の事からコツコツ達成していかなければ。
そんなわけで、今日の目標は「町に着いて宿の確保」に決定。持ち物を藁しべ的に手に入れるのは、機会があるときでいいだろう。
一応、現時点で他人の役に立ちそうな持ち物は万能薬草のみ。あらゆる病気を治せるこの薬草なら、求める人間は充分にいるだろう。
万が一自分が病気になったり怪我したときの為に残しておくという手もあるが、生憎俺は中学から現在に至るまでインフル以外の病気にかかったことがない健康男子っ! そうそう病気になることもないだろうから、誰かに使って貰わなければ文字通り腐らせてしまう。
ついでに言うと持ち物はあと1個あるのだが──ポテチ(うすしお)の袋なんて精々ゴミ袋くらいにしか使わないだろうから、深く考えないことにする。所詮、ゴミはゴミなのだ。
まぁ藁しべの件は一旦置いておいて、今は第一目標である「町に着く」を優先しなければ。
──と、そんなとき。
「……ひぐっ……ひぐっ……うぇぇ……ぐすっ……」
どこからか、子供の泣き声が聞こえてきた。
どこで泣いているのかと辺りを見回すと、街道脇の土手の下に、踞って泣いている女の子が。
ここで俺がとるべき選択肢は2つ。
──関わったら面倒なことに巻き込まれて時間を食ってしまい、今日中に町に着けない可能性が出てくるので無視する。
──泣いている子供を放って置くなんて事は男が廃るので、事情を聞いて助けてあげる。
俺が選ぶのはもちろん後者。前者なんて選んだやつは許さない、絶対にだ。
「おい、どうして泣いているんだ?」
土手を降りて近寄ると、女の子は涙でくしゃくしゃになった顔で告げた。
「ひぐっ……! お……お母さんと……お父さんが…………し……死んじゃいそう……なの……」
「な、なんだってーっ!?」
女の子の泣いていた理由が自分の想像の斜め上を行っていたので、驚きのあまり大声で叫ぶ。どうやら予想以上に大変な事態に直面しているようだ。
出来ることなら助けてやりたいが、それも事の次第による。「土砂崩れに巻き込まれた」とかだったら俺一人では幾らなんでもどうしようも出来ない。
せめて病気や怪我とかなら何とかなるんだが……。
「で、一体お母さんとお父さんに何があったんだ!? 事故にでも巻き込まれたのか!?」
俺が聞き返すも、女の子はゆっくりと首を横に振る。
「違うの…………二人とも……すごく熱が高くって……息も……凄く苦しそうで……! お医者さんは……万能薬草を食べさせないと危険だって…………。でも……その万能薬草が見つからなくて……それで……」
瞬間、俺は確信する。
──この子の両親を助けられるっ!!
女の子のその言葉を聞いた瞬間、俺は懐に手を突っ込む。まさか、こんなにすぐ「これ」で人助けが出来るとは──人間、良いことはするもんだ。
これで、この子の涙をこれ以上見ないで済む。
俺は懐から取り出した「それ」を、女の子に差し出す。
「それなら──これを持って行くといい」
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