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え、たかがポテチでこんなにもらっていいんですか?

 するとぶっ倒れた男性は、落ち窪んだ眼でポテチの袋を見た。

「……こ…………これ……たべもの…………なの…………か?」

 しばらくそのままポテチ(うすしお)の袋を見やっていたが、そう口を開いた。

「ああ、食べ物だよ」

「…………そんな……薄っぺらい……ものが……か?」

「もちろん。まぁ、騙されたと思って食べてみろ。美味いから」

 そう言って袋に手を突っ込むと、ポテチを1枚取り出して男性の口の中に。

 ──ポリポリ。

 男性は口に入れたポテチをゆっくりと噛みながら、自分の口の中にそれを埋没させる。

 顎に余り力が入らないのか時間を掛けてモグモグした後、何回かに分けてそれを飲み込んだ。

 ──これで回復してくれればいいのだが。

 そう思いながら、男性が口内のポテチを全て飲み込んだ瞬間──



 ──男性の眼に光が灯る。



「はぅわぁはぁぁぁぁぁぁぁっ!!? う、ま、いっ、ぞっ!?」

 まるで脳内に電撃が走ったかの如く、男性は眼を見開き叫ぶ。

「こ、これ? お前が? 作った──のか?」

「もちろんだ……!」

 もちろん嘘だ。

「少年っ! こっ、これはなんと言う食べ物だ!? うおおおギガントうめぇぇぇっ!!」

 ポテチ(うすしお)1枚がそんなに美味かったのか、すっかり元気を取り戻した男性は袋をひんだくって夢中で食べ始めた。

 しかし袋を奪ったあのスピード、ガン○ムオンラインで鍛えた俺の動体視力をもってしても視認出来なかった。あれが極限まで追い込まれて発揮された人間の底力なのだろうか。

「──げふっ! あー、うまかったー! 恩に切るぞ少年!」

 そんな事を考えているうちに、気づけばポテチの袋は空になっていた。

 今更だがビッグサイズを買っておいて良かった。きっと普通サイズなら「全然たんねぇぞ!」とか言われてたな、うん。

「まぁ、人間一人餓死から救えて良かったよ。一体何日食ってなかったんだ?」

「なんかやたら上から目線だなおい……。えーっと、確か2日……くらいか? 前の町で食ったのが最後だからそんぐらいか」

「なにっ!? 2日歩けば町があるのか!?」

「え? あ、あぁ……」

 男性の台詞にようやく見えた一筋の希望を見いだし、俺は男性に詰め寄る。

 もしそれが本当なら、頑張れば1日ちょいで町に辿り着ける! 町なら働くとこは幾らでもあるだろうから、そこで少しずつでも稼げば取り合えず生きていける。

 宿は──どっかに居候でもさせてもらおう。最悪、公園にでも寝泊まりすればいいわけだし。

 これで俺の未来は多少明るくなった!

「歩いて行くと、実際はそんなにかかんねぇ。俺は空腹で足が進まなかったからな」

「そうか──ありがとう!」

「あぁ、ちょっと待ちな」

 希望の未来へレディ・ゴーな勢いで走り出そうとすると、男性は俺を呼び止めて懐をまさぐり始めた。

「お前見た感じ手ぶらで金も持っていなさそうじゃねぇか。良かったらこれ持ってけ、飯の礼だ」

 そう言って男性が懐から取り出したのは、数枚の紙幣らしき紙と硬貨。硬貨の方は金貨が3枚に、銀貨が3枚。

「え、いいのか?」

「構わねぇよ。お前に飯恵んで貰わなければ野垂れ死んでたんだ、そんくらいのお礼はするもんだろ。あ、それ全部で4万1800円あるから」

 ここで衝撃の事実! この世界の通過単位は──円っ!!

 ということは、この紙幣は恐らく1枚1万円。金貨は500円で銀貨は100円か。

 なんとド・シンプルな世界!! 円が異世界を制したのだっ!!

「そうだ、あとこれも……」

 と、更に男性は腰元の袋から何かを取り出した。見た感じ何かの葉みたいだが……。

「これは『万能薬草』。大概の傷や病気なら、こいつを食えば一発で完治する優れもんだ。ま、滅多に手に入らない上に苦いからぶっ倒れても食わなかったんだが……」

「そ、そんな物まで……。本当にいいのか?」

「何度も言わせるなって。命を助けて貰ったんだ、まだ足りないくらいだ。何なら予備のローブもやろうか? ローブ無しだと町行ったときに目立つぞ」

 男性は今度は背負った小さめのリュックから、自分が着ているのと同じローブを取り出して俺に差し出す。

 たかがポテチ1袋でこんなに貰って、感謝しきれないのはこっちの方だってのに……。

 早速ローブを羽織ってみると、通気性がいいのか以外にも涼しい。軽くシャドーボクシング的な事をやってみるが、運動の妨げにならない親切設計。これは──良いものだ。

 男性曰く魔法に対する防御機能も備わっており、攻撃を受けても表面を蒸発させて着用者へのダメージを軽減するのだとか。どこのクロス○ーンガン○ムだ。

「んじゃ、俺はこの辺で失礼するわ。またどっかで会えるといいな!」

「俺もです──お達者で!!」

 丘の向こうに消えていく男性に手を振ると、男性も笑顔で手を振り返してくれた。

 やがてその姿が丘の向こうに消えると、俺は再び歩き出した。



 感想、コメント、共にお待ちしています。

 また、誤字脱字等がありましたら遠慮なく作者にお申し付けくださいm(__)m


12/22 100円の枚数を間違えていたので訂正しました。



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