さらばポテチ(うすしお)よ
本編開始です。
え? ヒロインは出るのかって?
出る(確信)。──出るのかな(疑問)? ──出るんじゃないかなーって(推定)。
えっと……ご期待ください!
※あと数話後に出します。
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「──にしても、これから先どうしたもんかなぁ……」
気絶から目覚めて数分。絶望感にうちひしがれる事に飽きて、俺は行く宛も無くトボトボ歩き出した。
無論、ポテチ(うすしお)は小脇に抱えている。現状ではこれが俺の持つ唯一の食料であり、生きるための命綱。どれだけ頼りなくとも″これ″は手元に持っていなければならない。食べるなどもっての他だ。
上手くやれば藁しべ長者的に物々交換で良いものと交換できるかもしれないから、そちらの意味でも易々と食べるわけにはいかない。
そんでもって俺にとって幸運だったのは、すぐ近くに街道らしき整備された道があったということ。少なくともそこを歩いていけば人や町に巡り会える──と思いたい。
人に会える確率はそれなりに高くは無いだろうけど、とりまポジティブに行こう。うん、そうしよう。
しかしスマホが無いのは痛い。スマホがあれば結構いろんな事ができるというのに、残念な忘れ物をしたものだ。
電池が続けばだが、ライト機能は懐中電灯にもなるし、マップアプリはコンパス代わり、電卓があればこの世界の貨幣価値の計算も容易い。最悪壊れても内部の金属パーツを売れば金になる。最近の精密機器は金などの貴金属を使っていると言うし、その点は信頼できる。
──しかしそんなことが出来ないのが現状。
俺の手元にあるのは、元の世界では一般的なポテチ(うすしお味 税込み134円)。食べ始めれば数分で袋を残して胃袋の中に消え去ってしまう儚い食料だ。
が、良く良く考えれば元の世界の価値がこちらでそのまま通用するとは思えない。
信用金貨の価値はこちらが決める──と某ゲーマーは言ったが、まさにその通り。
この世界の人間がポテチの価値を知らなければ、こちらがその価値を設定すればいい。大雑把に言えばポテチが100万円に化ける事だって有り得る訳だ。
それを実際どんな場面で使うかは別として。
「ったく、陽射しがあちーよ……。どっかにでっかいボロ布落ちてねぇかな……」
照り付ける日光を浴びながら、俺は頬を伝う汗を手の甲で拭う。ニート故に引き込もって陽射しを殆ど浴びなかった為、照り付ける陽射しがキツいのだ。
一般人からすれば4月半ばのポカポカ陽気な日光だろうが、俺にとっちゃ初夏の陽射しに等しい。来ているTシャツやジーパンの内部が蒸れる程だ。
せめて大きな布切れか木でもあれば陽射しを避けられるのだが、真実程人に残酷な物は無いようで、布切れどころか木の1本も目に入らない。
と、そんな感じで暑さに苦しめられる俺の目にあるものが飛び込んできた。
「おっ、ラッキー♪ でっかいボロ布見っけー」
十数歩先に落ちていたそれは、茶色いボロ布。ローブのような物らしいが、きっと誰かが捨てたのだろう。
よし、これで日光を防げる!
そう思いローブの端を捲る。
人の顔があった。
──一旦元に戻す。
なんだ今のは。
ワンモア。
げっそりと痩せた人の顔があった。
「おいおい、マジかよ……」
まさか異世界来て早々餓死死体をお目にかかることになるとは。この暑さで飢饉でも起きたのだろうか。
流石に無いだろうが、生きてるかどうか確認する。
「おーい、生きてるかー?」
──へんじがない。ただのしかばねのようだ。
つついてみても反応はない。
「はぁ……しゃーない。念仏唱えて埋葬だけでもしてや」
「ま……まだ……いきてる……ぞ…………この…………あほう……」
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァ!!!
ハッキョーセットの如く叫びそうになるが、相手に悪い気がしたので心の中で盛大に叫ぶ。
「は……はら…………減った……なんかたべもん…………くれ……」
先程はげっそりしすぎて分からなかったが、どうやら男性らしい。んでもって空腹らしい。
このまま見過ごしたら鬼畜だ人非人だと蔑まれてしまうので、取り合えず助けたい。
よって、このあと俺がとるべき行動はつまり──分かるな?
「あの──これ、食べます?」
俺はポテチ(うすしお)の袋を開封すると、行き倒れの男性に差し出した。
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2014 12/21
・一部改稿しました。