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旅立ち

「さて、色々教えたが、ここでカズマにとって、とても重要な事を教えるかのう」

「なに?金貨の集め方?」

「それは教えんと言っておるじゃろう」

「わかってるよ」

「全く、ではまず身分の職業についてじゃ」

「はい」


ザイルさんはコホンと咳を一つしてから話しだす。


「身分の職業にはレベルが存在する」

「うん」

「それ以外の職業にはレベルが存在しない」

「うん」

「つまりカズマはレベルが上がらない」

「うん?」

「つまりカズマは職業を解放しないとこの世界でまともに生きる事が出来ない」

「なんで?」

「そんなもん、レベルが上がらなければステータスも上がらんからじゃろう」


カズマの表情が氷ついた。

ザイルさんはやれやれと言いながらカズマを揺する。


「これこれ、まだ始まったばかりなのに何を絶望しておる」

「いや、だって、強い魔物や盗賊に襲われたら終わりでしょ?」

「もちろんじゃ」

「ですよね~」

「まあ森とかに入らなければ大丈夫じゃよ」

「本当に?」

「まあ、この辺は大丈夫のはずじゃ」

「遠くに行ったらダメなんじゃん!」

「そうは言っても、カズマをこの村に置いておく事は出来んしのう」

「うん、わかってる」


カズマにはこの村に居場所はなく、いつかは出ていかなければならない。

今はザイルさんの保護下にあるだけなのだ。


「ならばまずは職業を解放させることじゃのう」

「無理、その前に強い魔物か盗賊が出てくる」

「じゃろうな」

「現実的なのはあちこちの村や町を渡り歩いて生活していくのが一番だけど、それもいずれ限界がくるだろうし、盗賊に襲われる危険がある」

「お金もないから奴隷は買えないじゃろうし」

「仲間を作ろうとしても好感度マイナス400が邪魔をして上手くいかない」

「ふむ、八方塞がりじゃな」

「だから詰んだって言ったよ」

「どうしたものかの?」


二人は暫く黙って思考を深くしていくが言い案は思い付かなかった。


「とりあえずこの件は後回しにすべきじゃな」

「後回しにしても詰んでる事には変わりはない」

「まあよいではないか、次はスキルについてじゃな」

「はい」

「戦闘用のスキルは問題なく発動出来るようになったのか?」

「うん、後は詠唱破棄ってスキルも手にいれたよ」

「まあ、それはあのカードのおかげじゃろうな」

「だよね」

「日常系のスキルはどうじゃ?」

「選定がいまいちどんな感じに使うのか分からないけど他はなんとか使えるかな」


識別系のスキルはアイテムのアイテム名、仕様方法、効果、材料、ランク等の情報を見ることができた。

解析であのカードを見ると


アイテム名:ステータスカード

種類:ステータス系

仕様方法:使用者の血を数滴カードに吸わせる

効果:スキルの使用、職業の選択

追加効果:スキル[詠唱破棄]取得

材料:サンダードラコンの瞳、アイスマーメイドの宝玉、神炎の大槍

ランク:S


だった。材料売ったらかなり良い金になりそう。

観察系のスキルはやましい事に使うスキルではなかった。

少しだけ期待していたのだが残念だった。

観察系の使い方は簡単、対人にも有効な強制ステータス閲覧能力だった。

まあ見ただけで何かが変わる訳では無かったが。

透視は全てのステータス、職業、称号、装備、所持品、所持金まで見れた。好感度は見れなかった。


なんだよ!大事なところ見せろや!ちょっとだけ!先っちょだけ!


まあ、すねても仕方ない。

透視、解析のスキルはMPを100使うので一回しか使えません。

盗撮、鑑定はMPを50消費して透視と解析のスキルより効果は当然劣る。が、現状一番使う事になるであろうスキルだった。

観察、識別はMPを10消費して最低限の情報しか見ることができなかった。

選択系のスキルは選択は職業を交換するだけ、選定は職業の固定も出来た。

ザイルさんに協力してもらって、選択系のスキルはパーティーに参加しないと、他の人には使用出来なかった。消費MPは動かす毎に1しか使わないのでそんなに気にせずつかえます。


「ならばスキルを使った商売ならばどうじゃ?」




さて、お分かり頂けただろうか?




現状ではこのまま次の町に進んだところでレベルが上がらないのでどんどん詰んでいきます。

仲間も増やせません。

唯一魔法使いが上位職業を取得出来ますが、MPの最大値が増えないのでそのうち詰みます。

レベルが上がらない原因は解決出来ません。


識別、観察は使用回数が多いですが商売になりません。

また、解析、透視は使用回数が少ないのですが、商売になるかも知れません、しかし町では透視が必要になるアイテムは、まず出回りません。

国には入る事が出来ません。


選択系はパーティー編成がないので商売になりません。


お金が入らないので奴隷が買えません。


詰みました。


「どうやっても詰んでませんか?」

「そうじゃのう」

「唯一可能性が有るのは、鑑定と解析を使って町で資金を稼ぎつつ、国の情報網に引っかかる位有名になって国に招待されるまで一つの町で生活する、その間に盗賊に襲われない、町が税金を払い続ける事が条件で、国に招待されたら解析を使ってお金を稼いで奴隷を購入する、その国の王族の誰かと仲良くなりつつ、商人のLv300以上の奴を見つけて仲良くなっておく、奴隷の中にパーティー編成持ちを加えて戦闘、条件達成でようやくLv上げが出来ると」

「その頃には儂と同じぐらいの年齢になってそうじゃの」

「嫌だー!そんなつまらん人生嫌だー!」

「そうは言っても他に道が無かろう!」

「そうだけどさ、そうだけどさ」

「いじけるな!全く、情けない。そのぐらいの逆境自分でなんとかせい!」

「じゃあザイルはなんとか出来んのかよ!」

「無理じゃな!」

「ですよね~」


とりあえず現状は把握出来た。完全に詰んでる事がわかった。この世界の人生もつまらなくなった。


「まあ、わかったよ」


僕は立ち上がりザイルに向かって頭を下げる。


「色々教えてくれてありがとうございました。この恩は、いつか必ず返しに戻ってきます」


僕は感謝の意を込めて深く深く頭をさげた。

頭を上げるとザイルは少し寂しげにしていた。


「そうか、もう行くのか」

「はい、これ以上は村人達が我慢出来ないでしょう」


今朝からこの家の前に人が数人集まってきていた。

これ以上はいくら村長の保護下とは言え危険性がでてくる。


「すまんな、何も力になってやれずに」

「いえ、この世界の事を沢山教えて頂きました。これからは自分で考えて行動します」

「そうか、では最後に一つ教えておいてやろうかの」


僕は遂にアレについて教えてもらえると思いザイルに食い付いた。


「金貨の集め方だね!?」

「違う違う、まあ金に関するお話じゃがな」

「なんだ違うのか」


なんだよ違うのかよ、勿体ぶるな早く金貨の集め方を教えなさい!


「まあ、聞いておけ、ここに2枚の木貨がある」


ザイルはポケットから2枚の木貨を取り出して机の上にならべる。

何か手品でも始めるかのような緊張感がある。

僕は2枚の木貨を見るがどこも変わりはない。


「ほうほう」


僕は2枚の木貨を見続けながら頷く。


「商人達は二つのスキルをよく使う、一つは計算のスキルじゃ、そのスキルは儂が持っとる、この村で買い物をする時に3割安く買い物が出来るスキルを適応して計算する」


つまり商人は3割引と分かっている事になる。


「へー」

「その通りに計算した金額でしか商人は売買が不可能なんじゃ、それを破った商人、または計算のスキルを使わずに商売、計算のスキルを使った後に商売を中断した商人は盗賊になるらしい」


つまり商売の相手が割引のスキル持ちであった場合は商人には不利な商売になる。しかも計算をした後で割引スキルを所持しているのが発覚するから、やっぱりやめたとかは通じない。つまり赤字が分かっているのに売らなければならない。


「…」

「そしてもう一つのスキルは[マネーボックス]」


ザイルがスキルを発動させた。ザイルの手には手のひらに収まる小さな箱があった。机の上に合った2枚の木貨は片方だけが小さな箱にしまわれた。


「この通り片方の木貨しか吸わん、吸われなかったものは偽物と言う訳じゃ、そして、それが判明した商売の取引相手は盗賊になる」

「なるほど、偽金は通用しないんだ」

「その通り、いくらそっくりに作ろうがマネーボックスに吸われなかったものは偽物じゃの、偽金を掴まされないように気を付けるのじゃな」

「ありがとう、気を付けるよ」


魔物が落とすコインは間違いなく本物のお金だ。

しかし商人からお釣りとして受け取ったコインは、本物かどうかは、あのマネーボックスのスキルやそれに類似した効果を持つアイテムがないと、本物かどうか区別がつかない。

商人もお客も色々考えてるが基本的には商人が有利かな?アイテムボックス持ちは基本的には商人が持っているスキルだし、観察スキルがあれば身分の職業は覗ける。つまり商人がついていない客には偽金を渡せる訳だ。それが判明しなければ盗賊にはならないって事か。

それに割引スキルはそんな簡単に取得出来そうも無いし

これは少し面倒な世界みたいだ。

これを最後に教えてくれたザイルはどんな考えで教えてくれたのだろう。

色々な意味が有るように感じる。

でも一番強いメッセージは一見八方塞がり見えている自分の状況でも、抜け道はきっとあると言うメッセージなのだろう。


「じゃあ、また今度」

「ああ、気長に待っておるよ」


そう言って僕はザイルの家から出た。村の中で服を買い残ったお金で保存食を買う。

そうして僕はこの村から旅立つ。

ポケットにはステータスカードと木貨のコイン一枚、袋には服と下着と木で出来た火お越しの道具。

腰には木で出来た剣を携えて僕はようやくこの世界へ旅立つ。


村の人達から嫌悪の眼差しを背に受けて旅立つ。

これからどんな世界が広がるのかワクワクしている。

職業のお陰でLv1からのスタートは当分先になりそう、しかし前の世界よりは楽しめそう。少なくても前の世界よりは幸せになれそう。そんな予感を胸に村から一歩一歩進んでいく。

今からこの世界で僕は何をして生きていくのかな?

少なくてもすぐに死ぬ事はなさそうだ。

さあ、この世界で何をしよう。



――――視点変更 ザイル



カズマはこの村を出ていった。

村から追い出すような形で、とても申し訳なかった。

空を見上げる快晴の青空が広がっていた。


「村長!やっとあの少年が村を出ていってくれましたね!」


見張り役を任せていたブラムが話しかけてきた。


「これでようやく平和な村に戻れますね!」


ブラムは笑顔でそう言った。


「はて?最近は平和じゃなかったかの?」


儂はボケたようにブラムに答えた。


「え?いや、だって、?、あれ?そういえば魔物が襲って来ていなかったような」


儂はブラムに背を向けて家に戻る


カズマは自覚していなかったがこの村を平和にしてくれていた。

本人はお金を稼いだだけのつもりだっただろうが、カズマがこの村に来てからの数日は魔物が襲って来なかった。

カズマが村の外で魔物を退治していたからだ。

儂はカズマに対して恩を返せたのだろうか。

必要な事は教えてあげれた。

しかし必要な事しか教えてあげれなかった。

この世界にはどんな国や町があるとか、どこに行けば綺麗な景色が見れるのかとか、魔界に行くにはどうすればいいのかとか、この世界は儂にとってとても面白い世界だったとか。

カズマにまだまだ教えてあげたかった事は沢山あった。

スキルの影響でこれから苦労するであろう彼に少しでもこの世界を楽しめるようにいろんな事を伝えたかった。


(まあ、今思ってもしょうがない事かのう)


儂はカズマと約束した。

また会うと、恩を返しに来てくれると。

そんな恩はもう貰っておると言うのに。

次に来たときは盛大に歓迎してやろう。

そしてこの世界について語り合おう。

どんな国を見て、どんな景色を見て、どんな人と巡り会って、どんな旅をしたのか話し合おう。

職業をいつ解放したのか聞いてやろう。

どうやって奴隷を買ったのか聞いてやろう。

どこの王族と仲良くなったのか聞いてやろう。

どんな商人と仲良くなったのか聞いてやろう。

そしてこの世界はつまらなかったかどうか聞いてやろう。


カズマはこれから何をしていくのじゃろうの?

はい!今回5000文字も書けませんでした。

文章力が低い作者です。

次はどんな話しになるんでしょうかね、誰と出会いどんな町に行くのでしょうか?

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