未来の小説投稿サイトとは
ニーズを生み出す訓練をしてみようと思った。
突然だが皆さんは、「小説家になろう」というサイトをご存知だろうか。
「誰でも気軽に小説を執筆することができる」というスタンスをとっており、現在でも数多の小説が産声をあげている小説投稿サイトである。
文章を書く難しさや楽しさ、書き上げた時の喜びを知るにはちょうど良いサイトであり、私もそこでいくつかの作品を書き上げた。
そして、今の小説投稿サイトに必要な機能や、これからの姿を自分なりに考えてみた。
1.文章校正機能
これは内容や文章力の有無に関わらず、必要とされるべきものだろう。変換ミスや誤字脱字を自動的に修正してくれるものである。叙述トリックなどで、あえて変換ミスを残しておきたい場合はタグなどをつけておくことで残しておくことができるようにする。
2.個性追加機能
キャラクターのセリフや行動を入力し、「個性追加」のボタンを押す。「ツンデレ」やら「ボクっ娘」やらの属性を選択すると、属性に応じた文章に変わる。
例としては「ごめんなさい」というセリフを選択して、「個性追加」→「ツンデレ」と打つと「あ、謝ってあげているのだから、感謝ぐらいしなさいよねっ」に変わる。ちなみにレベルを調整することで重度のツンデレから、ツンデレっぽい人にもできる。
3.言い回しトレース機能
小説家や漫画家にもあるが、独特の言い回しや、書き方というものがある。
この機能は、苦労もせずにその技術を盗めるというもの。
おそらくジョジョ風とかは人気になるだろう。
4.斬新ジャンル機能
残念ながら、一人で生み出せる発想には限度がある。
「これは斬新だな」「見たこともないな」と思えるジャンルや小説形式でも、実は他の誰かが作っていたりするのが現実。
この機能は、世界中の情報データベースを探し回り、「このネタでは小説化されていない」というものを見つけ出してくれるというもの。
まあ、そんなマイナーなものでうまくやっていくには腕が必要ではある。
5.感想追加機能
どうしても感想が欲しい…という人の為に、コンピュータが勝手に感想を書いてくれるというものを予想。コンピュータに人の気持ちがわかればの話ではあるが。
6.いいトコどり機能
自分が感銘を受けた作品群をまとめて、一つの小説にする機能。
それぞれ作品の個性やエッセンスだけを抜き取り、小説全編をいいトコだけで構成させようという狙いから作られたものなのだが…
おそらく盗作騒動が起こることは間違いない。
7.ゴーストライター機能
これは言い回しトレース機能の応用版。
「この人ならこういう次回作や続編を書きそうだな」とコンピュータが判断。
その人がいない間に、勝手に次回作を書き上げるという機能。
多忙な時でも更新され、読者から忘れ去られることがなくなる。
8.夢日記
これは少し大掛かり。
睡眠中の脳波等のデータを検出することで、夢の内容をそっくりそのまま小説…というか文章にしてしまおうという試み。エジソンなんか夢から発明のキーを見つけ出したりしたみたいなので、意外とアイデアとしてはいいのかも。意味不明な文章が大半だろうけど(夢の内容なんてそんなものだし)。
9.すれ違い小説
すれ違い通信の小説版。ウチの近くに「なろう」住人が…とかなかなか面白そう。
10.小説家をつくろう
某育成ゲームの小説家版。
自分の作った小説が、世間ではどれくらいの評価を受けるのか…というシミュレーションができる。出版社の選考を擬似的に再現してみたり、「話題作になる」という評価を受けて、本腰入れてみたり。
このシミュレーション結果を真に受けて小説家を目指した結果、数年を棒に振った事件が出てきそうではある。大体その後、「あくまでシミュレーションであるため、確実ではないことに注意して欲しい」という警告文が新たに追加されてくる。
ここまでは、あったらいいなという機能について述べた。
ここからは、「未来の小説投稿サイト」の姿について考えた結果である。
1.小説投稿サイト終了エンド
ここから先、アニメやドラマを作って投稿するサイトができるようになるかもしれない。作り方は「小説投稿サイト」と同じように、登場人物のデータを書いておき、セリフや行動、心理状態などを書いておく。そうすると、機械が自動でイラストの描画を行って、アニメーションや動画を作ってくれる。
イラストのタッチも、絵師やアニメ制作会社で種類を選択できる。それがわからなくても、「あのアニメのタッチがいいんだ」とかでも良い。
俳優や声優などもボイスサンプルがあり、流暢にしゃべる。声のトーンなども選択可能。声質を混ぜたり、不必要な部分を取り除くことによるオリジナル声優や俳優を作り上げることができるようになる。
自分のイメージした通りの世界が簡単に具現化できるようになるかもしれない。
…さて、そうなると小説だけを、敢えて公開するサイトの意義はなくなっていく。
小説家の最終的な夢といえば、映画化だとかアニメ、ドラマ化であろう。夢を最初から叶えてくれるサイトがあれば、わざわざ過程を辿ろうなんて思わない。
「テレビが消したラジオスター」よろしく、「アニメが消したノベルスター」になっていくと思われる。
2.小説MMOサイト化エンド
端的に言えば、「小説家にレベルがつき、レベルによって特典が得られる」というもの。レベルは投稿小説につけられたポイントや、お気に入り登録数などによって決定する。
レベルが上がると、有名小説家からの指摘を受けられる。逆に「人気小説アドバイザー」として低レベル小説家に対して指導を行ったりする。
期間内に処女作を書くと、ポイントを普段より多くもらえるキャンペーンが実施される。
しばらくすると、ポイントのリアルマネートレードが始まる。ポイントにすがりつき、レベルを上げていく。初心者小説家からポイントを強奪するNKも横行していく。「小説投稿廃人」と呼ばれるものが生まれ、カリスマ化される。
そして、小説投稿サイトにログインしたっきり、ログアウトできなくなる事態が発生。運営の陰謀によって、デス・ゲームが始まる。その中で偶然バグを受けてチートになった小説家が小説投稿サイトで暴利を貪ることもあるかもしれない。
3.小説先進国化
日本のアニメやゲームは、海外と比べて異質であることはよく知られている。
「Moe」やら「Kawaii」やら、「ジャパニメーション」やらが示している通りだ。
この未来は、日本が小説の分野をかっさらっていった場合のケースである。
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日本人が書いた小説は、海外では「Japanese Novel」と呼ばれている。
わざわざ「日本人の」小説なんて書かずに、「Novel」でいいじゃないかと思う人もいるだろう。
だが、明確に分けなければならない基準がそこにはあった。
日本は世界で初めて、小説からエネルギーを取り出すことに成功した。
そのエネルギーは万能であり、近年では小説生命体「ノベロイド」を生み出すことにも成功している。
しかし、この現象は日本人が書いた小説にしか起こっておらず、諸外国は「日本人の小説は特別なものである」と認識した。その結果として「Japanese Novel」と区別して読んでいるわけである。
さて、そんなこともあったものだから日本は「一億総小説」プロジェクトを立ち上げた。これによって、日本人は生まれながらにして「小説家」になっており、無職やニートは職業欄から消えた。
名刺の代わりに、自作の小説を交換するようになり、日本の憲法には「いついかなる時も小説を執筆すべし」という項目が追加された。
小説力が火力や原子力に代わって発電に利用されるようになり、エネルギー問題は解決への道を進んでいる。
軍事においてもこれは有力なものであった。日本人が団結して1週間ほど小説を書くと、それによって発生した小説エネルギーは大国を滅ぼすほどになるという。
これには各国首脳陣も大慌て。「どうして日本だけがこんなことに…」とハンカチを噛む姿も多数目撃されている。
こうして日本は唯一の「小説先進国」として、絶対的な優位を見せつけている。
しかし、日本人だけがエネルギーを作り出せる理由は、書いている本人達もよくわかっていない。
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いかがだっただろうか。
以上の項目が、私が想像した小説投稿サイトの機能と、その未来の姿である。
実際にはどんな未来が待っていて、トレンドはどう変わっていくのか。
私はそれを少し楽しみにしながら、今も小説を執筆している。
まあ、「こうしたい」という欲望がある限り、ものごとは動いていく。