掘って掘ってまた掘って♪
いつもより短め。
もうそろそろ主人公の強化方法がレベルアップ以外無くなってきた。
……もう、レベルアップしてもいいかな?
いや!もうちょい頑張ろうと思う!
では、どぞ~
桜は町の近くの草原で、つるはしを振るって穴を掘る。
ただひたすらに、穴を掘る。
垂直に穴を掘って、深さが20メートルを超えた辺りで、横に掘っていく。
穴を掘る。
ゲームだからこそできる掘り方。
普通なら支えが無ければ上から崩れてくるが、ゲームならではの重力が真横掘りを可能にしている。
垂直に掘った穴から半径が10メートルほどの円形に掘りまくり、部屋と呼べるような空間が出来上がった。
桜は何を思ったのか、螺旋状になるように階段掘りを始める。
地上から深さ50メートルほどで、一旦掘るのをやめる。
桜はそろそろ寝る為に、ログアウトしたのだった。
「ふぅ」
現実の身体を動かしているわけではないが、流石に精神的に疲れてしまったようだ。
メールを確認したら、友人から二通のメールが来ていたが、椿は風呂に入って寝たのだった。
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次の日の学校。
「何故無視した!!」
「何の話?」
「メールだよ!!昨日のメール!!ずっと返事返ってくるの待ってたんだぞ!?」
「……あぁ!」
「忘れてやがった!?」
友人と椿は楽しいそうに話していた。
片方が若干怒鳴っているが、楽しそうである。
そんな二人の会話に乱入するクラスメイト達。
中村悖敍ことモブ、山辺翔ことショウ、夜叉の幼馴染の鈴木健二ことスケの三人だ。
ちなみに、女子はスケのことをスケベと呼ぶ。
「なんだなんだ!楽しそうな話ししやがって!俺達も混ぜろよ!」
「そう言えば、モブに聞いたぞ。二人もアレやってるんだろ?」
「名前何?フレンド登録しようぜ!」
椿は何時も通りのんびりと本を読み始める。
友人は三人と話し合う。
「椿は死神狂いだ」
「何その物騒な名前」
「ホントか?いや、納得だが」
「なん、だと!?」
モブはあのゲームをやっていないので死神狂いが何かを知らないが、ショウとスケは良く知っているので驚く。
そして放課後である。
「じゃあ、噴水前で待ち合わせってことでいいな」
「オッケイ!」
「それで大丈夫だ」
「……俺もやろうかな」
友人、スケ、ショウは、今日一緒にダンジョンに行くことを約束していた。
モブは会話に混ざれず、とても寂しそうにしている。
「椿はどうするよ?」
「ん?俺は穴を掘らないといけないから」
「やらないか!?」
「絶対違うと思うぞ」
椿は今日も、桜として穴を掘るのだった。
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ログインした桜は穴掘りを再開する。
数十分掘り続けて、桜は飽き始めていた。
というか、死神に特攻したくなっていた。
「……足りない」
若干バトルジャンキー化しているが、掘るのはやめない。
すると、掘ったところからカンッという音が聞こえた。
少し手で掘ると、白い頭蓋骨があった。
掘り出して持ち上げて見る。
目と鼻の三つの穴だけが開いてる頭蓋骨だった。
「これは……化石?」
ちなみに化石ではなくイベントアイテムだ。
とある処に行った時、持っているとイベントクエストが始まる。
桜はとりあえず頭蓋骨をインベントリに仕舞う。
なんとなく頭蓋骨があった場所の真下を掘る。
数分掘ると、またカンッという音が聞こえた。
手で掘ると、アンモナイトのような白い石があった。
それは化石である。
やっと見つけることができた、のだが……その大きさが問題だった。
化石の周りを掘ること数分。
その化石はグランドピアノサイズだった。
インベントリに仕舞うには、一度持ち上げなくてはいけない。
桜は大きく重い化石を持ち上げることができないでいた。
「どうしたもんか……」
桜には二つの選択肢がある。
一つは何としてでも持って帰る方法を思いつくこと。
もう一つは……
「別の探すか」
諦めるだった。
つるはしで化石を破壊し、欠片を手に入れておく。
巨大な化石を中心に辺りの探索再開した。
そして掘ること一時間、桜はやっとバスケットボールサイズの化石を発見した。
さあ帰ろうとしたところで、桜は気付いた。
「どうやって帰ろう?」
最初に真下掘りしてしまったので、どうにかして登らなければいけないのだ。
しばらく考え、その場で新しいスキルを作った。
短剣を片手に持ち、スキルを発動する。
桜は自分の首を切った。
次の瞬間には何時もの死に戻り地点の光景。
作ったスキルは【自害】。
効果は使用者の強制即死。
普段から死に戻りしかしていない桜には、何の問題も無かった。
町に戻ってきた桜は、さっさと化石を持って刻印屋へと向かう。
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「ケヒャ!?もう見つけて来たの?」
「あぁ、ほら」
「ホントだ!それにこんな大きさの化石を持ってくるなんて、予想外ですよ!」
「……そうなのか?」
桜は知らない。
鉱石採掘ポイントで、ビー玉サイズの化石が意外と手に入ることを。
もっとも、このクエストでは野球ボールサイズ以上の化石じゃなければならないので、普通に採掘しててもかなり時間がかかる。
採掘ポイントも無限に採掘できるわけではなく、採掘後は一定時間経過しないと再採掘ができないし、採掘できる回数も1~10回程度である。
桜の方法は発見が難しいが、化石を要求されるクエストの時は確実にクリアできる大きさが手に入る。
桜の行動も正解と言えば正解である。
「イヒヒ、それじゃあ、紋章【武器制限解除】を刻印するよ?」
「あぁ、頼む」
「ついでに、ちょっと特殊仕様に改造するね~グヒャヒャ!」
額に剣を二つ交差させ後ろに細かい模様の入った盾、両頬に三つの爪痕の様な模様、首を一周する様に雷模様が刻印される。
かなりデカい紋章だが、それだけ刻印の難易度が高いということだ。
刻印屋が紋章に何かの粉をかけると、紋章が消えて綺麗な桜の顔になる。
店内の鏡でそれを確認した桜は、少しだけ疑問の表情を浮かべる。
「アヒッ!今のは、戦闘時以外は紋章を消す特殊な魔法粉だよ。戦闘時になれば勝手に浮かび上がるから、安心していいよ?」
「なるほど。ありがとう、これでやれそうだ」
「グフュ!どういたしまして!また来てね~今度はお金持って!エッヒャッヒャッヒャ!!」
刻印屋を出た桜は、さっそく死神へと向かっていく。
今日も死神のHPは一割を切ったが、桜は何時も通り死に戻ったのだった。
桜が死神を狩る日は、近い。
死に戻った桜は、手裏剣の練習をしに練習場に行った。
そこにはスカイ、ジャンヌ・ダルク、邪鬼眼の三人がいた。
「桜君!決闘しよ!」
「貴方に勝負を挑ませてもらいます」
「ウチはちゃうからね!?」
一人は桜と話しに、二人は桜とPVPをしに来ていた。
驚きつつもPVPを承諾し、フルボッコにするのだった。
イベントの時とは戦闘方法が別物になっているのだから、当然の結果だったりする。
そんなPVPを見ていた野次馬プレイヤー達は、驚愕していた。
イベントの決勝戦の邪鬼眼不戦勝は、桜が女プレイヤーと戦わないからだと思っていたからである。
やるならやるで容赦ないのが桜である。
そんなこんなで、今日も桜はLV1のまま最強プレイヤーとして有名になっていくのだった。
今日のGM
「桜君、よく掘り続けられるな~」
「ホントだな。いつ終わるかわからない作業を強制されてるわけでもないのによく続けられるよな」
「あの頭蓋骨は!?誰だアレを地面に埋めたのは!いくら上司でもやって良いことと悪いことがあるっしょ!?」
「アタシだけど、なんか文句あんの?」
「あ、化石見つけたっすよ。あのアンモナイトって後の方で出てくるボスっすよね?」
「犯人女王だからって諦めんなよ……」
「桜君、やっぱりあの紋章を!これで桜君はまた一つ進化した!」
「間違った方にな。あのPVPを見ろ。もはや人間じゃないぞ。なんであんなに大量の武器使いこなせてんだよ」
「桜君っすから」
「……だな」
「へ~桜っていうんだ……可愛い顔ね」
「桜君は渡さない!!いくら女王でも桜君はダメっす!!」
「……モニタしてるだけじゃん」
「言ってやるなよ」
「桜君は必ず死神を倒してくれるんだぁぁぁぁぁ!!!」
『うるせぇぇぇぇぇ!!!』
「ぐふぉ!?ちょ!?まっ!?」
「……止めないの?」
「ただのスキンシップだよ」
「だずげでぇ!!」




