PVPトーナメント・二戦目後半
やっぱり、戦闘描写って苦手だよ。
桜とフレンの距離がゼロになる。
フレンが振るった斧が空を切り、桜のトンファーがフレンの顔面を強打する。
どうしてそうなったのかと言うと、桜は左のトンファーをフレンの斧の柄に当てて、斧の上で一回逆立ちした。
そして、着地と同時に右のトンファーでフレンの顔面を強打したのだ。
顔面を強打されたフレンは、一瞬仰け反る。
桜は足元が崩れたフレンに足払いをかけて、あっさりと転ばす。
フレンが地面に倒れる前に、鉈の石突きでフレンの身体を上へ投げる。
鉄扇でフレンを地面に落とさないようにしながら、骨に衝撃が行くように強打を続ける。
十数回目でフレンを今までよりも高く蹴り上げて鞘に入った刀を居合で構える、落ちてきて地面にぶつかる前に一瞬の交差。
キンッと言う音を鳴らして、刀を鞘に納めた。
「……ダメージはほとんどないのに、勝てる気がしないんだが。ホントに手加減してる?」
「ハルバートとかハンマーあたりなら地面に叩きつけながら攻撃できるけど?それに、本気だったらもう首落としてる」
「あ、凄く加減してくれてたのね……たく、これじゃトッププレイヤーの面目丸つぶれだな」
ぶつぶつ文句を言いながらも、立ち上がるフレン。
これがフレンの特技の一つで、気絶しない限りはいくらでも立ち上がることができるのだ。
根性論と言えばそれまでだが、普通に出来ることではない。
桜はフレンのこういうところを評価していたりする。
まあ、こんな特技の所為でさらにボコボコにされるのだが。
「シャァオラ!!かかってこいや!!」
「そうか……行くぞ」
「あ、やっぱ待って」
気合を入れて挑むかと思いきや、来られると逃げ腰になるフレンだった。
桜はステップでフレンの武器範囲外に移動し、その場でジャンプ。
双戟でフレンの両腕を真上から攻撃して下げさせ、空中で二回目のジャンプをしてハンマーでフレンの頭をぶん殴る。
吹き飛んだフレンは何回か地面をバウンドしつつも、なんとか体勢を立て直して桜を視界に入れる。
その時にはすでに、桜は僅かに回復したMPを消費して魔法を発動していた。
ファイヤーボールとウォーターボールの二つを同時に発動し、フレンの目の前でぶつかる様に放っていた。
フレンは何かを感じたのか、盾を構えつつサイドステップで回避する。
先ほどまでいたフレンの場所の前で二つの魔法がぶつかり、水蒸気の白煙に変化する。
白煙がフレンと桜の姿を見えなくする。
フレンは姿勢をできるだけ低くし、先ほどまで桜がいた場所に向かって盾を構える。
白煙を切り裂いて何かがフレンへ襲い掛かる。
フレンは【シールドバッシュ】で何かを吹き飛ばす。
一気に近づいて斧を振り下ろそうとするが、自身に向かってきた何かがただの剣だったのだ。
一瞬呆気にとられるが、すぐに周囲を警戒する。
が、一瞬気を抜いたのが運の尽きだった。
まばたきをする一瞬の間に世界が反転していた。
そして、ゴルフの様にハンマーでフレンを吹き飛ばす桜。
吹き飛んだフレンに槍を投げて串刺しにし、落ちるであろう場所に向かてトマホークをぶん投げた。
見事に足と足の間にトマホークがぶち当たる。
当たった瞬間、フレンがビクッ!となったが気にしない。
桜は鉄球を上空に放り投げ、フレンに向かって振り下ろす。
ドゴォン!という鈍い音が闘技場内に響き渡る。
桜はここで攻撃を中止。
フレンの出方を確認する。
観客達は他の試合での盛り上がり方が嘘の様に静まり返っていた。
ちなみに、司会はキラキラした目で桜を注視していたりする。
完全に司会の仕事を放棄していた。
桜が攻撃をやめて十数秒後、フレンが起き上がった。
「おね、がい……ちょっ、とだ、け……ま……」
プルプルしながらある部分を抑え、息も絶え絶えに何かを我慢していた。
そんなフレンを見ながら、手加減している桜は律儀に待機した。
二分後、なんとか立ち上がるフレン。
「よ、よっしゃ……俺は、まだやれるぞ」
「もっと手加減しようか?」
「ぅ……お願いします」
一瞬プライドが答えることを拒否したフレンだったが、結局桜に手加減追加をお願いしたのだった。
桜は双剣、槍、弓、大鎌、鎖の五つの武器と拳だけで戦うことにした。
双剣を逆手に持って、フレンに向かって駆け出す。
フレンは【震脚】を使って桜を怯ませようとしたが、桜はフレンの足が上がった時点で跳んでいた。
跳んだ状態で双剣をフレンへ投げつけ、槍を出す。
フレンは飛んで来た一本目の剣を盾で弾き、二本目の剣を斧で叩き落とす。
桜は石突きから横薙ぎでフレンを攻撃する。
フレンは石突きを盾で防ぎ、横薙ぎを斧で受け止めた。
桜は槍から手を離し、鎖を鞭の様に振るう。
フレンはサイドステップで鎖を避け、鎖はバギャン!と音を鳴らしながら舞台にめり込んだ。
【シールドバッシュ】を桜の顔面にぶち当てようとするフレンだが、桜は舞台にめり込んだ鎖を引っ張ってフレンの真横を滑るように移動する。
めり込んだ鎖を蹴り上げ、一本背負いの要領でフレンへと振り下ろす。
鎖はドォォォン!!と舞台を真っ二つにするも、フレンは盾を振り下ろされた鎖に向かって投げることで、ギリギリ回避できるようにしたのだ。
これもフレンの特技で、普通なら回避できないことに対して回避する方法を無意識に実行することができるのだ。
それはさておき、フレンは転がるように回避しつつも、すぐさま立ち上がって桜の方へ走る。
走った勢いに合わせて斧を横薙ぎにする。
その攻撃に対して桜は、斧の面を下から掬い上げる様に綺麗に受け流した。
フレンは勢いをつけ過ぎたいで、桜に背中を向けてしまう。
そして、桜はフレンの背中を踏み台に、上空へと跳び上がる。
落下し始める前に空気を蹴って、さらに上へ跳ぶ。
クルッと半回転して、空中で逆さまの状態になって弓を構える。
落下が始まるのと同時に、フレンに対して矢を放つ。
三本同時に放たれる矢を回避しきることができないフレンは、突き刺さる矢を徐々に増やしていく。
桜が放った合計60本の矢のうち、17本がフレンに突き刺さっていた。
フレンとしては、今すぐに動きを邪魔する矢を抜きたいが、それをする隙が無かった。
弓をしまう前に一本だけ矢を撃ち、その矢が斧を持つ手に直撃する。
攻撃された反動で斧を持つ手が上がらないフレンに対し、桜はフレンの脳天に向かって踵落としを決める。
メキッと言う音が聞こえ、桜が足を振りぬくとフレンが舞台に前のめりに叩きつけられる。
桜はフレンの背中に着地し、大鎌を出してフレンの首に宛がう。
「もういいかい?」
「……もういいよ」
そして、フレンの首が斬り落とされる。
即死判定で桜の勝利となった。
観客達は先ほどまでの同じ人間なのか怪しい戦いの余韻に浸っていた。
ここでやっと司会が仕事を始める。
「キ、キ、キマッタァァァァァ!!!桜選手の勝利だぁぁぁぁぁ!!!あれで加減されてとか誰も信じられない気もするが、前半まともに反応すらできなかったフレン選手が後半はしっかりと防げていたのが手加減の証拠になってしまっているぅぅぅぅぅ!!!自分は、フレン選手に感謝したい!!なんと言っても、桜選手の実力を理解できる状態にまでしてくれた彼に、敬礼!!ビシッ!」
『ビシッ!』
「死んだ人みたいになるからやめてくんない!?」
相変わらず司会と観客は息ピッタリである。
「これにてトーナメント決勝戦の選手が決まったすよ!!【レミエール・S・K・ルシフェル選手】VS【桜選手】だぁぁぁ!!決勝戦は10分後に開始しますので、その間に御手洗いなどへどうぞ!では、いったん休憩入ります!」
『うぇ~い』
という訳で、決勝まで休憩となった。
休憩時間の十分間、桜は瞑想を始めたのだった。
今日のGM
「ふぃ~いや~最高っすわ~決勝終わったら一週間徹夜しても悔いはないっすね!」
「今シネ」
「すぐシネ」
「骨まで砕けろ」
「ジェノサイド―――」
「遊んでないで働いてくださいよ!?」
『は~い』
「おぉ~部長達が素直に言うことを聞いてるっすよ……珍しい」
『お前、仕事終わったら覚悟しとけよ?』
「あ~今日が終わらなければいいのに……」
「貴方は、今休憩時間中でしたね?ゲームの方は順調ですか?これにいろいろ記入しないといけないみたいなんですけど、真っ白で……」
「それなら俺が明日やるっすよ?」
「あ、助かります。じゃあ、他の仕事してきますね」
「いえいえ、頑張ってくださいっす……軍曹」
「あんだ?」
「彼、なんでまたやってるんっすか?」
「社長に気に入られた」
「……何回まで助っ人だと思うっすか?」
「そうだな……後二回で染まると思うぜ?」
「ご愁傷様っすね」
「だな。まあ、仕事ができる奴だから全員歓迎してるけどな」
「助っ人さん、強く生きるっすよ」




