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なんか、クエストが発生してたらしいよ。

できたお。

暑いお。

眠いんだお。

おおうるさいね。

前書きスルーはデフォでよろ(゜▽゜)/

今日の桜は、珍しく死神に挑まず町の探索を行っていた。

なんとなく井戸に入ったり、町の出入り口付近にある牢屋の見学をしたり、ケンカしているNPCと話したり、いろいろしていた。

ちなみに、井戸の中には猫がいた。

猫と一緒に井戸から出ると小さな女の子がいて、猫の飼い主であったりした。

【救助】というアビリティーを手に入れていたが、桜は一切気付かない。

【救助】とは、仲間のHPが0になると一回だけHP1で復活させられる、というものだ。

牢屋の見学では、脱獄しようとした盗賊NPCを捕え、看守から【捕獲】のアビリティーを手に入れている。

【捕獲】は、テイム率30%上昇という、テイマーからすれば垂涎のアビリティーである。

現在のテイマーのテイム成功率は、ほんのわずかである。

このゲームでの最弱モンスターであるコボルト一匹をテイムするのに、約100匹を倒してやっと一匹仲間になるかならないかという、テイム率の圧倒的な低さがテイマーの間で問題になっていたりする。

現在は、ケンカをしていたNPCの仲裁をしている。

ケンカしていたNPCは夫婦で、以下の様なケンカだった。


「どうして浮気なんかしたのよ!」

「違うって言ってるだろ!?大体君こそ浮気しているじゃないか!」

「私はそんなことしてない!!どうせあなたは若い子の方がいいんでしょ!?」

「なんだよそれ!!どうしてそうなるんだよ!!」

「なによ!!わかってるんだから!貴方も結局下半身直結の男ってことでしょ!!」

「ああそうかい!!なら君だって似たようなモノだろ!男に媚びてる女ってことじゃないか!!」

「なっ!?私がいつ媚びたっていうのよ!!」

「そっちが先に言ったんだろ!!」

「「フンッ!!」」


と言う感じだ。

夫婦喧嘩は犬も食わないというが、桜はこういうドラマ的な感じが好きである。

というわけで、桜はまず女性の方に話しかけた。


「少し良いですか?」

「……なによ?」

「盗み聞きするつもりはなかったんですが、話を聞きましてね。彼以外の男性と親しくしていたようですが、それってご家族だったりするんじゃないですか?」

「あ……彼、私の兄知らないかも」

「なるほど……では、彼と一緒にいた女性を見たんですよね?どんな女性でした?」

「……たしか、綺麗な人で、一緒にお店入っていってたわね。どんなお店かは覚えてないわ。すぐに、離れたから……」

「そうですか……ありがとうございます」


次に男性の方へ話しかける。


「なんだよ……」

「彼女、お兄さんと会ってただけみたいですよ?」

「え?……そんな、なら、僕は彼女に、酷いことを……」

「一ついいですか?どこかのお店に女性と入ったらしいですけど、誰と何所に?」

「装飾店に店員さんと……まさか、そんなことで?」

「彼女にプレゼントを買おうとして、店員さんと話してたってことですか?」

「……あぁ、そうだ……ハハ、勘違いされてもおかしくないじゃないか」


桜は、彼の背中を押して彼女の前まで持っていく。

二人は俯いて黙り込んでいるので、桜が主導しながら話す。


「彼女が会っていたのは彼女のお兄さん。彼が一緒にいたのは装飾店の店員さん。お互いに誤解だったみたいだね?」

「……そうだね」

「……そうね」

「お互いに言うことは?」

「「……ごめん」」

「うん、よろしい。二人に一つ聞いておきたいことがある。今でも愛してる?愛してるかわからないなら、ここで別れた方がいい。愛してるんだったら、分かるよね?じゃあ、俺はここで」


桜は二人から離れ、民家の影に隠れながら観察する。

愛し合う者の雰囲気が好きな桜である。


「その……」

「あの……」

「……ホント、ごめん」

「……私こそ、ごめんなさい」

「えっと、僕は、その……」

「……あんなこと言ったけど、やっぱり、貴方を愛してるわ」

「……ありがとう。僕も愛してるよ」


そして、イチャイチャし始める二人。

それを見て満足した桜は、立ち去ろうとした。

そんな桜を二人が引き止める。


「「あの!」」

「ん?どうかした?」

「「ありがとうございました!」」

「いえいえ」

「これ、よかったら使ってください。僕達には、必要ありませんので」

「私達、これからは疑うんじゃなくて信じ合ってみます!」

「うん、頑張って」

「「ホントに、ありがとうございました」」


完全に仲直り完了である。

今回の突発的なサブクエストの報酬は称号【繋ぐ者】、アビリティー【管理】、装飾品【真紅の羽飾り】である。

【繋ぐ者】は、パーティー時に自身以外に常時全ステータス5%アップ。

【管理】は、状態異常確率半減と状態異常効果弱化である。

簡単な例を挙げると、混乱や暴走の状態異常になった時、仲間を誤って攻撃したりしなくなる。



◇◇◇


【真紅の羽飾り】

ガード+1%

レジスト+3%

スピード+3%

火耐性+20%

水耐性-10%

氷耐性-10%


◇◇◇



というように、これらの報酬から見ても今回のサブクエストは、かなりの難易度だったのがわかる。

最初に男に話しかけていれば失敗。

3分以上片方と話していると失敗。

愛してるという言葉を言わせられないと失敗。

素でこれらをクリアした桜は、むしろ攻略方法を知ってるんじゃないかと疑いたくなるほどだった。




◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇




桜は小さな道を謎の歩法で滑るように進む。

特に目的もなく彷徨っていると、道場の様な建物から一人の男性が出てきた。

髪が白く顔にしわがあることからそれなりの年齢であることがわかるが、研ぎ澄まされた刃の様な眼光、胴着隙間から見える引き締まった無駄のない筋肉、尋常でない存在感、衰えているとは思えない覇気、それらから相当な実力であることを推測する桜。

それがわかるのがおかしいが、それを指摘する人物はいない。


「お主、素晴らしい技量を持っているようじゃな……一手、手合わせをしてもらえんか?」

「えぇ、いいですよ。俺も得られるものがありそうですから」

「そうかい。じゃあ、ついてきてもらえるかの」


桜と道場主?の二人は道場へと入っていく。

このクエストは運営の悪ふざけの産物で、クエスト開始条件がプレイヤーデータで一定以上のプレイヤースキルを持っている者限定である。

分かり易く言うなら、死神相手に無傷で一割以上のHPを削れるぐらいである。

桜に手合わせを申し込んだ男性はガイアという名で、設定上死神と互角以上に戦える最強クラスのNPCである。

普通ならプレイヤーが瞬殺される強さだが、今回のクエストではガイアはステータスに頼らず技量のみで戦うようになっている。

簡単に言うとガイアのレベルが一となる。

まあ、プログラムとはいえ世界の達人の技量を持っていて、AIがさらにその技量を上達させているので、普通の一般人が攻撃を掠らせることすら不可能である。

そんなこんなで、道場の真ん中にてお互いに向かい合う。

周りには、門下生と思われる者や師範代であろう者が座して見学している。


「見世物になってしまうが、よいかの?」

「大丈夫です。武器の使用は?」

「ありがたい。武器は、そうじゃな……刃物でなければよいぞ。あと、魔法はなしじゃ」

「わかりました」


以降、言葉はない。

お互いに気迫を滾らせ、呼吸、目線、筋肉の動きなど、あらゆるものを一瞬のうちに観察する。

二人の気迫に当てられたのか、新入りであろう門下生が数名気を失っていたりするが、二人はそれに気づかない。

気付いていても、その程度の些細なことに気を逸らせない。

桜とガイアの現在のレベルは一。

ガイアの技量は間違いなく超一流。

大刀を使った戦い方が本来のスタイルとはいえ、無手でも達人である。

対する桜は、ゲーム中に一度も倒したことが無いとはいえ常に格上との戦闘で、一般人の技量を大きく超えている。

そして、最初に動いたのは……桜だった。


最初は無手でいくようで、ステップで一気に間合いをつめ、正拳突きを放つ。

ガイアは桜の突き出された拳に手を添え、あっさりと受け流す。

桜は避けられたと錯覚するほど見事に受け流されたことに驚きつつも、流れるような動作でガイアの顎に向けて足を振り上げる。

軽く首を曲げて桜の蹴りを避けるガイアに、振り上げた足の勢いを利用してもう片方の足でもガイアの顎を狙う。

上半身を後ろに傾ける様に倒して、桜の二回目の蹴りも避ける。

空中で逆さまになった桜は、完全な無防備状態に見える。

普通なら攻撃をするであろう状態の桜を前に、ガイアは腕を上げて防御する。

桜は足を振り上げていた時に体を捻っており、逆さになった時には身体の捻りを利用してガイアの頭部に回し蹴りを放っていた。

ガイアに防御された足には、まるで大木でも蹴ったかのような衝撃が走る。

これが達人の防御なのかと思いつつ、桜は棍を装備して地面を突いて天井に足をつける。


まだまだ連続で攻撃できたが、ダメージを与えられないと思った桜の判断で一旦距離を取る。

ほんの数秒で先ほどまで向かい合っていた二人が、上下に移動していた。

この道場の師範代クラスは、眼で追えはするが同じことは絶対に出来ないと言えるだろう。

今の一瞬にどれほどの技量が必要なのか、それがわからないのだ。


桜は天井を蹴って、棍を突き出すようにガイアへと落下する。

ガイアはバックステップでその攻撃を回避し、攻勢に移ろうとする。

コンッという軽い音が道場に響く。

桜が突き出していた棍は攻撃の為でなく、足の延長として地面に触れさせるためだった。

それに気づいたガイアは【ミラージュステップ】というゲーム内だからこそできるアビリティーを使用する。

分身したかのように、五人のガイアが桜へと襲いかかる。

【ミラージュステップ】は、最大十人の幻影を出して撹乱しつつ、【ソニックステップ】と同等の効果を発動する。

桜は一瞬全てのガイアを視界に入れ、棍を軸にしつつ一体のガイアに蹴りを放つ。

それは幻影だったが、あっさりとすり抜け幻影を消した。

本来、幻影の耐久度は熟練度によって強化されていくが、このクエスト中は熟練度も初期状態にされるので、桜のアタックでも一撃で消せる。

そして、幻影で手元が隠れた瞬間に桜は武器を鞭に変更しており、床に着地する前に二体の幻影を鞭で消し去った。

本物と偽物であろうガイアが左右から迫る。

鞭をトンファーに変え、【ソニックステップ】で右のガイアを襲う。

こちらも幻影だったようで簡単に消える。

背後から本物であろうガイアが迫る。

桜はゆったりとした動きで振り返り、何時の間にかトンファーの無くなった手を胸付近まで上げ、人差し指を軽く曲げる。

瞬間、ガイアがバラバラになる。

だがそのガイアも幻影だったようで、煙の様に消えた。

本物のガイアは、何時の間にか最初の位置に戻っていた。

最初から幻影だった、と言うことはない。

どうやら、二人とも満足のいく戦いが出来たようで、試合を終了した。


「カハハ、実に優秀ではないか。今使っておるのは、鋼糸かの?」

「そうですね、鋼糸です。貴方は?気配を感じませんでした」

「なに、簡単なことじゃよ。【気配遮断】のアビリティーじゃ。気配に敏感な者ほどあっさりと見失うものじゃよ。まあ、近づけばバレたであろうがな」

「なるほど……これが、本来の対人戦と言うものですか」

「一分もやっておらんが、実に楽しかったぞい。誇ると良い、お主は間違いなく一流じゃ。愛弟子に欲しいくらいじゃよ」

「申し訳ありません。自分には目的がありますので」

「それは残念じゃの。まあ、何時でも来るとよい。お主となら儂も更なる高みへと登れそうじゃわ。カハハ」

「感謝します」


この時点でクエストがクリアされ、報酬が自動的に獲得される。

報酬はアビリティー【気迫】【気配察知】【気配遮断】、称号【武神への挑戦者】である。

【気迫】は、発動する際MP10を消費する。

物理的な攻撃に+25%のダメージボーナスと敵の全ステータス1%低下。

あと今更だが、HPとMPは隠しステータスでアビリティー【HP・MP視覚化】というのなどをつけないと見ることは不可能である。

【気配察知】は、熟練度に応じた一定範囲の存在を感知する。

敵味方判別機能付きのマップシステムがあるのであまり意味はないが、戦闘中などに背後からの攻撃などを感知することができる。

【気配遮断】は、熟練度に応じたヘイト率の低下。

裏技で【闘気】という【気迫】の上位互換を使用後に【気配遮断】を使うと、自身の姿を完全に消すことができる。

ただし、音などは消せない。

【武神への挑戦者】は、一対一の時にアタック・ガード・スピード+10%。

自身が一人で相手が複数の時、アタック・ガード・スピード+25%。

自身が複数で相手が一人の時、アタック・ガード・スピード-50%。

自身が複数で相手も複数の時、アタック・ガード・スピード+5%

この効果はパーティーメンバー全員に適用される。


「では、俺はこれで」

「うむ。また来るのを楽しみにしておるぞ」


そして桜は、またあてもなく町を彷徨うのだった。




◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇




「―――と言うことがあったんだ」

「……そうか」


広場に戻った桜は、偶然そこにいたフレンを捕まえて今日会ったことを楽しそうに話す。

桜のニコニコ笑顔にプレイヤー達は全滅しかけていたりする。

話が終わった時に、フレンは思ったことを口にする。


「お前さ……ゲーム変わってない?」

「こういうゲームじゃないの?」

「なんていうかさ……最初の方はまだいいんだよ、後の方が格ゲー化してるよな?」

「格ゲーって何?」

「大したもんじゃねぇよ。にしてもさ……アビリティー増えすぎだろ。それに、テイマーが五月蠅そうだ。今の話、あんまり言いふらすなよ?」

「友人に言ったら満足したからもういい。それよりもっと対人戦を経験したい」

「おっと!用事を思い出した!!じゃあな!!」


桜の対人戦の要求を聞いた瞬間、フレンは全力で逃走を図る。

しかし、桜はフレンの行動を先読みしてフレンは逃げられなかった。


「じゃ、行こうか」

「……はい」


この日フレンは、桜が満足するまであらゆる行動が先読みされ攻撃の当たらない相手と戦闘し、延々と殴られ続けた。

いつも通り、平和な一日と言うことだ。

今日のGM


「街中のサブクエがクリアされていく……結構難易度高くしてあるんだけどな~」

「せんぱ~い、サブクエクリアしたの誰かわかります~?」

「ん~桜だって」

「桜?あぁ~死神狂いさんですね~」

「誰?有名なの?てか、死神ってアレでしょ?」

「有名ですよ~アノ死神に挑み続けてる猛者ですよ~」

「へ~あ、またクリアされたってこのサブクエネタで作った奴じゃないの?うっそ、マジでクリアしたんだ」

「うわ~流石死神狂いさん~普通という言葉が当てはまらない人ですね~」

「……なんか、悔しい。もっと難しいのクエスト創ってやる」

「先輩って~負けず嫌いですよね~」

「負けず嫌いじゃなくて、勝つのが好きなだけよ」

「頑張ってくださいね~私は~お仕事があるので~」

「むむ、助っ人がいるわね……」

「すいませ~ん、これにサイン貰えるっすか?」

「……ちょうどいいわ。貴方、私を手伝いなさい」

「え?いや、あの、仕事があるんっすが」

「同時進行できるでしょ?やりなさい」

「……おーのー」

「女王に捕まったか、馬鹿な奴め」

「巻き込まれる前に退散しようそうしよう」

「お仕事~」

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