のんびりしちゃってます。
最後とか、ダメダメっぽいかな?
デスペナルティーを初公開(笑)
どうぞ~
桜は特にすることもないので、噴水近くのベンチに座っていた。
死に戻りしたプレイヤーが現れたり、ログインしたプレイヤーが現れたり。
そんなプレイヤーの中にスカイがいた。
「あ、桜君だ」
「やあ、スカイ」
「はい♪」
無難に挨拶しておく桜。
返事をしたスカイは、桜の隣に腰掛ける。
特に何かするわけでもなく、桜とスカイはベンチに座ってのんびりと景色を眺める。
「……平和だね~」
「……そうだな」
そんな二人を見て、プレイヤー達がざわめく。
「おい、あれって【死神狂い】と【天剣の聖女】じゃね!?」
「いや、本物知らないし」
「ノリが悪いな、最強の復活の呪文よ」
「PKするぞもょもと」
「すいませんでした」
という、二人の男プレイヤーのやり取り。
「あれが、【死神狂い】……どう話しかけたものでしょうか」
「うわ~美形だわ~」
「あの二人、付き合ってるのかな?」
「いやいや、一緒に座ってるけど腕一個分離れてるから、違うと思うよ?」
「でも、プレイヤーの中では一番近いんじゃない?」
『……』
女プレイヤー達の会話。
「そこで手でも繋がないと……桜に彼女が出来るのは何時になるやら」
「ニャ~なんで私はここにいるんだニャ?」
「……桜の隣、誰?」
「むむむ~なんか、仲良さげだよ!」
「いや~桜のフレンド登録してる人って少ないからさ~暇潰し?ぐはぁ!?」
「ぶん殴るニャ」
「あ、あの、殴った後に言われても……ひっ!?」
「ニャニャ!避けるんじゃないニャ!」
「ま、やめ、タンマ!?マジ待って!!桜ヘルプ!!」
桜の知り合いの会話。
というか、フレン、タマさん、アリス、エリーゼの四人だった。
タマさんがフレンを追いかけ、アリスとエリーゼはそんな二人を無視。
フレンが桜とスカイの方へ逃走したので、残りの三人も歩いて向かう。
フレンが桜に声をかけようとした瞬間、アナウンスが鳴る。
【緊急クエストが発生しました】
【シュールゼントの町の中に現れた存在を見つけてください】
【ログイン中のプレイヤー全員が対象です】
【制限時間内に見つけれられなければ、全町の設備が一部使用不可になります】
【制限時間は十分です】
【それでは、クエストを開始します】
上空に10分の表示がされ、1秒ずつカウントを減らしていく。
数人のプレイヤーは我に返り、すぐさまフレンドコールをして町を走り回る。
先ほどまでのんびりとしていた雰囲気が、一気に殺気立ったモノへと変わる。
「このタイミングで、緊急クエスト?」
「……」
「桜!スカイ!モンスター探しに行かないとヤバいぜ!うお!?」
ものすごく嬉しそうにフレンが言った。
スカイが無言の笑顔で噴水へと投げ飛ばした。
桜は、緊急クエストが始まってからジッと噴水を見つめ続けている。
タマさん、アリス、エリーゼも桜達の傍へ行き、クエストについて話し出す。
「設備が一部使えなくなるって、ペナルティーが厳しすぎないかニャ?」
「クエスト、どうする?」
「探さないとヤバいでしょ?」
「えっと、誰?」
「……お前等、俺の心配は無しか?泣くぞ?大の男が恥ずかしげもなく泣き喚くぞ!?」
全員フレンを無視して、自己紹介をして桜のフレンドであることをサラッと話、クエストの情報を整理し始める。
無視されたフレンは、桜に構ってもらおうと話しかけようとしたが、噴水から目を離さない桜に首を傾げる。
「どうしたんだ、桜?」
「いや、水に何か……魚?」
「は?噴水に魚がいるわけないだろ?」
「透明な、小さい魚が……」
《ハッハッハッハッハッ!!よくぞ見抜いた、少年よ!!》
『えっ!?』
桜の呟きに反応する様に、噴水から声が聞こえる。
今回のクエストは【ログイン人数が3000人以上】【シュールゼントの町にいるプレイヤー500人以上】で発生する、一か月に一回限定クエストであり、クリア自体は難しくない。
ただ、クリア条件が複数あるのだ。
樽の中を探すとクリアできたり、屋根の上を探すとクリアできたりする。
そんな中でも、運営の悪ふざけの産物である【噴水の透明な小魚】を見つけた桜。
「知っていなければ見つけることは不可能」とは運営の総意。
死神を押していた社員は「死神を倒せるなら見つけられる!」と言っていたとか言っていないとか。
そして悪ふざけだからこそ、このクリア方法にだけ続きがある。
本来なら、見つけた時点でクエスト終了。
《よっし!俺様に一撃でも入れられたら、ものすっごいお宝をくれてやんよ!!》
透明な小魚は水から飛び跳ねて、本来の姿を現した。
そのモノの名は【大海の覇者・リヴァイアス】。
全長50メートルで、竜と蛇を混ぜ合わせた姿の怪物。
噴水の水が拳大の水玉のように周囲に浮かび始める。
ゲームだからなのか、水が多ければ多いほど巨大化及び強化するというある種のチート仕様。
現状ですら、三次職レベル100以上がフルメンバーいてやっといい勝負。
なにより、このクエスト専用のイベントスキルなのか、浮いているのだ。
普通にジャンプしたのでは絶対に届かない位置。
魔法や遠距離武器で攻撃しようにも、水玉プカプカ動き回っていて邪魔をする。
試している者はいないが、水玉を足場にしようとしても、触れた瞬間にただの水に戻る。
実にいやらしいクエストルートである。
だが、今回は普通ではない桜が相手だった。
《なんだとぉ!?》
思考詠唱をしつつ【二段ジャンプ】で跳び上がり、出来る限り跳んでから近くにある水玉に触れる。
そして、水玉が崩れる瞬間に思考詠唱していた氷属性【コフィン】で崩れ始めていた水を凍らせる。
何故触れてから凍らせるかというと、水玉のいやらしい所に原因がある。
水玉状態の時は、触れるまで一切の魔法を無効化する仕様になっている。
だが、触れた瞬間水に戻る。
なので、玉の状態で凍らせるのはほぼ不可能。
一番可能性があるのは、【アイス・フィールド】といった地形型の魔法だろう。
だが、裏技的な方法が一つある。
それが桜のした方法だ。
水玉に触れた瞬間に【コフィン】を発動する方法だ。
【コフィン】は触れた水を凍らせる魔法で、水場のダンジョンで足場を作る為の魔法である。
言葉だけだと簡単に聞こえるかもしれないが、普通の反応速度では不可能である。
触れる前に発動していると、水玉に触れた瞬間解除される。
触れてから発動すると、水が手から離れる。
ましてや、水玉の状態を維持して凍らせるのは触れた瞬間に魔法を発動する必要がある。
遅ければ玉が崩れ、速ければ魔法が無効化される。
それを空中でやってのけた桜。
触れている氷の玉を掴み足の裏に触れさせる。
そして、さらに上へ跳ぶ。
ゲームシステムとして、ジャンプするには足場に立つこと。
【コフィン】は足場を作る魔法。
なので、ゲームとしても地面に立ったと判定される。
リヴァイアスの目の前に跳び、驚愕の表情で目を見開いているリヴァイアスに鎖鎌を巻きつける。
《ヌゥ!舐めるでない!!》
リヴァイアスが激しく身体を動かす。
だが、桜はリヴァイアスが動く前に鎖を手放していた。
振り回される鎖の軌道を見極め、鎖を足場としてジャンプする。
そして、槍を装備してリヴァイアスに向かって槍スキル【飛槍一閃】を使った。
【飛槍一閃】は、槍を片手で持ち、持ち手を頭より上で頭の後ろに構え、前へと投げる。
この動作をすることで投擲速度が上昇し、ダメージを二倍にする。
ただし、ターゲット機能などはないので、プレイヤーの技量依存だったりする。
ここまでの行動は、桜が動き出してから13秒の出来事。
《イタッ!?ギャァァァ!?鼻に入った!!ヘルプ!!俺様の存在は、フィクション!!です!》
「……面白い奴だな」
「そうニャ~」
「桜君、カッコいい……」
「桜、凄い」
「あの槍使ってくれてるんだ~」
桜が地面に着地すると同時に、浮かんでいた水玉が噴水へと戻っていく。
噴水の中でとぐろを巻いて、桜の方へ顔を向けるリヴァイアス。
《いや~参った参った~こんな簡単に一撃入れられるとはな!!一撃を、鼻に入れる!なんつってな!!》
『……』
《えっと、その、すいませんでした!!さて、少年よ!よくぞ俺様の試練(笑)に打ち勝った!褒美をやろうではないか!ありがたく、かしこまって、崇め奉りながら、受け取るがよいぞ!!》
桜の前へ玉手箱が……
「いらん」
リヴァイアスに戻した。
焦りだすリヴァイアス。
《ちょ!?受け取れよ!良いもんなんだぞ!そして、家に帰るまで開けるなよ!絶対だからな!!》
「なら、お前が開けてくれないか?」
《……さて、冗談はほどほどにして、こっちが本当の褒美だ》
玉手箱を噴水に沈め、噴水の水が集まり一つの羽衣になる。
それは、まさしく―――
「おい!あれってみずの○ごろもじゃね!?絶対そうだって!ドラ○エファンのもょもとが言うんだから間違いない!!」
「……とりあえず、黙ろうな」
みずの○ごろもではない。
【大海の王衣】という羽衣で、魔法に対して絶大な防御力を誇る。
さらに、打撃系の攻撃は半減というおまけ付き。
ただし、雷系の魔法は倍のダメージだ。
他にもデメリットがあるが、それを差し引いても優秀な性能である。
インベントリに収納され、リヴァイアスが光りだす。
《では、俺様は去るぜ!!そして、やられっぱなしは嫌なので、嫌がらせをしておくんだぜ!!》
そう言って、専用魔法【タイダルウェーブ】で町中にいたプレイヤー全員に水流の波を当てて死に戻りさせた。
桜を除いたプレイヤー全員から一言。
『なにすんだ!!』
ちなみに、死に戻りの際のデスペナルティーは一定時間獲得経験値半分、一定時間熟練度上昇率低下、レベル一低下(経験値リセット)、一次職以上所持金半分、死神遭遇率上昇(月毎にリセット)。
実は厳しいデスペナだったりする。
《ガッハッハッハッハ!!ザマァwww俺様!最強!!サラダバー!!》
そして、去っていくリヴァイアス。
憤慨するプレイヤー達。
リヴァイアスの鼻に刺さっていた槍と巻き付いていた鎖が、桜の手元へ戻ってくる。
桜は特に気にせず、何故か死神と戦いたくなった。
という訳で、走る桜。
「え?桜君!?」
「おい!桜!?」
桜の行動に反応したのはスカイとフレンのみ。
数分後、戻ってきたのは、言うまでもない。
そんな日の出来事。
今日のGM
「うは!あのクエストが発動するとは……しかも桜君がいるとき!最高だ!」
「お~い。早めに仕事終わらせろよ」
「終わってます!」
「ホントだ。これなら大規模アップデートにも対応できそうだな」
「おぉ!流石桜君!あのイベントを発動させるとは!」
「さっきからうるさいが、何やってんだ?」
「プレイヤー観察です」
「プライバシーは守れよ~」
「何当たり前のことを……馬鹿ですか?」
「……人を殺したいと思ったのは久しぶりだ」
「今二人もいなくなられたら困るから、やめろよ」
「その内ヤルわ」
「おぉぉぉぉぉ!?桜君スゲェェェェェ!!」
「ん?そんなにか?……化け物か!?」
「どんなもんだよ……え?人類ですか?」
「あちゃ~そういえばこのイベントの景品桜君装備できないじゃないっすか~誰だよこれ設定したの」
「女王だな」
「女王だぞ」
「……なら仕方ないっすね。忘れましょう」
「女王ね……ちょっと話があるわ。三人とも、談話室に来なさい」
「「「……タ、タイムで」」」
「却下」
「「「ギャァァァァァ!!!」」