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第二話 起の舞-7-

 詩来は、改めて目の前で呑気にココアを飲んでいる青年を観察した。

 少し癖のある黒の髪に水色の瞳。外見から旅人だとすぐに知れたが、だからこそここまで生きて辿り着けたことが不思議だった。これといって身を守るような武器を持っている様子もなく、かといって、袖口から覗く細い手首からは腕が立つようにも到底思えない。

 短剣一本持たずに、森に入った。それは、自殺行為に他ならない。

 運がいい。

 神の存在を信じていない詩来でも、そんな言葉しか浮かんでこなかった。

 頬杖をつき、最適な温度に下がってきたココアを飲みながら横目で客人を見遣る。

 本当の馬鹿で、能天気な奴だと思う。

 それでも、思った事を口に出さないのは、多分。


「すっごい綺麗だったよ。水辺で群れる数匹の蛍。黄金色に輝いていて、本当に綺麗だった」


 青年の言葉が、心からのものだったから。その瞳が、優しげに輝いていたから。

 両手で抱えたカップに落とされた空色の瞳は、茶色の水面に記憶に残る美しい風景を見ているのだろうか。


「君の瞳と同じ色」


 不意に上げられた水色と視線が合い、詩来はその金の双眸を微かに瞠った。


「蛍の光。月…ううん、太陽の色だ」


 詩来を真っ直ぐに見つめ、青年はにこりと笑った。


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