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第二話 起の舞-5-
しばらくの間落ち着きなく小さなテーブルの置かれた居間を行ったり来たりしていた青年は、ようやっと自分を取り戻したのか、弓を片手に入り口を塞ぐ詩来へと、その綺麗な水色の双眸を向けた。
「改めて、助けてくれたお礼を。ありがとう」
浮かべられた微笑みは優しく、聴覚の捉える彼の声は柔らかくて心地よい。
そんな相手に、深い吐息をついた詩来は、ようやく警戒心を解いた。弓と矢を元の場所へと戻し、居間から直に続いている台所へと立つ。
「礼には及ばない」
寝る前にココアを淹れようと沸騰した状態で放置していたやかんを再度熱しながら、詩来は抑揚に欠けた声音で口を開く。
「椅子に座れ」
広い家に一人でいた時間が長い詩来にとって、自分以外の存在が視界に映るのすら煩わしい。暖かみのまるでない口調で席を勧め、沸騰を煩わしい声で告げるやかんを片手に持った。慣れた達樹であらかじめ用意しておいた二つのマグカップに湯気の立つお湯を注ぐ。
「あ…ありがとう」
両手に持ったカップのうち一つを青年の前に置いた俺には特に反応は示さず、詩来は正面から少し右にずれた所に移動させた椅子に腰を降ろした。
「お前、あの森で何をしていた?」




