五本目
時間は平等に流れると言う。なら時間操作系の能力者はどうだろうか?
byゼクア・シルバーフィールド
「随分とあっけなかったね、スザク・フェンナルド。まあ『限定奥義:空覆い』をまともに食らって体が残っていることを褒めればいいのかな?それにしても奇妙だね、『空覆い』は結界破壊もあるけど、一時的に時間さえも停滞させて777回の攻撃に匹敵するダメージを与える一応禁呪に近い扱いを受けているんだけどね。」
「まぁ、そんなことは置いといて。自己紹介をしていなっかたね。≪第九階層≫『生き残り達の世界』組織【六角天】所属『処刑人兼選別者』吉田 百夜だよ。持っている字は滅亡制御。最も俺に字なんて意味が無いけどね。これから死ぬ君にも余り意味の無いものかもしれないね。」
「≪第九階層≫?『生き残りたちの世界』?何だそれは?何なんだ?我/俺/私/僕は誰だ?ここはどこだ?【六角天】?あぁ、何か懐かしいそれだけは聞いたことがある。我/俺/私/ボクノネガイハakdaあqwせdrftgyふじこlp; jofjdnnfnks。」
突如としてスザクだった者が気が触れたようにオカシナ言葉を使い始めた。
その瞬間百夜の第六感にも等しくなった五感がその異常の正体を正確に捉えた。かつて感じたことがあるべったりと肌にくっつきそうになる程の気持ち悪い気配。その気配に百夜は覚えがあった。
「貴様、天使だな?わざわざ瀕死の人間に取り憑くなんてお前ららしく無いじゃないか。」
「あー確かに天使っぽい腐った気配だねー。」
「累、今まで何処に行っていた?戦闘の最中スザクになんか言ってから何処にいったのかさっぱり分からなかったぞ。」
「ソレの違和感はなんとなく分かっていたから最寄りの空中都市型航行船に連絡入れに行ってたのとこのサーカスって言ったって一応空中じゃん?中の人とか生きているのか見に行ってたんだよー。」
「それで、応答してくれた物好きな航行船は何だったの?あとどれくらいで着きそうなんだ?それに中の人は?」
「質問が多いよー。『ハバムート級:坂東』【江戸教導館】を中央に据えている空中都市型航行船だよー。それともうそこまで来てるってー。あとこのフネの中の人は全員死んでるよ。それでもあと三時間ぐらいの航行には問題がないみたいだよー。」
「そうか」
こんな会話をしながらもちゃんとスザク・フェンナルドを見張っているのは流石だろう。しかし、今回の相手はどんなに腐っていようと天使であったというだけであろう。
「『限定的対世界侵食』」
ほんの少しの声量だった。それだけで、体は動かないけれども声は出せる。声は出せるだけで、〝力〟が練れない。いくら瀕死の肉体とはいえここまで容易く≪能力≫を展開できるのは流石天使であろう。
天使とは≪崩天事変≫の時に神を名乗ったある元人間が生み出したまたは改造されたモノの事を指す。一部は創造主に対して反逆し、自立したがいまだに多くの天使が神の復活のために動いている。
そしてここに出現した天使は後者のようだ。
「掲示枠表示、広域発声モード。」
「『マイクテス、_______聞いているか?愚民ども。
天使たる私がわざわざこうしてで出て来た理由を教えてやろう。
それは単純に≪崩天≫をもう一度起こす。我らが主たる神をもう一度この世界に呼び出し主が望んだ≪大望≫をかなえてもらわんが為に。
止められるなら止めてみろ。では、さらばだ。』」
そんな衝撃発言が聞こえると同時に、ある男の声が掲示枠から聞こえた。十代後半から二十台ほどのなぜか頼れるような男の声が。
『おい、待ちやがれクソ天使。それは【六角天】に宣戦布告してると見ていいんだな?』
「『無論、むしろお主に伝えることが主な内容でもあるぞ、【六角天】八大首領の一人にして八席の第零席にして庭の頂点、吉田 守霧!』」
『ならテメェの上の奴にでも言っとけ、暴れたらブッ殺すってな!』
「『ふっ、では諸君。いつか殺しあうその日まで元気にしているといい。』」
そう言い放ち天使はスザクのカラダ(器)から抜けて消えていった。それと同時に限定的対世界侵食も解けた。
『百夜、そこにいんだろ?いたら返事をしろ。』
そう声をかけられてふと放心状態からその場の全員が戻った。
「ああ、いるよ。累も一緒だ。」
『依代になった奴は生きてるか?まぁ、生きていても死んでいても本部まで運んで来い。『板東』にはこっちが話をつけとくから小型の輸送艇でも貸してもらえ。』
「死んでるよ。それと今サーカスを見に行っていたんだけど、上演会場だった空中上演場の中の人も全員死んでるっぽいんだけど、どうする?」
『いつまで持つ?』
「三時間」
『なら十分だ。『坂東』に乗せてもらって掲示枠の映る範囲にそのフネを映せ。そっから俺がぶっ飛ばしてやる。そして見ておけ≪我が真名は全罪を背負う≫なんてデタラメな呼ばれ方をしたその後ろ姿と理由をな。
それで十分か?『坂東』艦長兼【江戸教導館】総長兼院長の絹原 災蔵?どうせ聞いているんだろ?』
『んー、まあ、その条件と追加条件でこっちはいいんじゃない?』
『その追加条件は?』
『【六角天】に『坂東』が停泊できる陸港を作ってくんない?それと陸港の使用許可ぐらいかな?』
とふざけているとしか思えない声でふざけているような交渉に及んでいるのは仮にも『坂東』艦長兼【江戸教導館】総長兼院長の絹原 災蔵マヌケ見えても教導館館長であるのでこの手のことは強かでないはずがなかった。
しかし、
『そんぐらいなら別にいいぞ。』
そんなに容易く条件を飲むとは予想していなかったようだ。
『そんじゃ、そこの二人の回収と【六角天】までの運搬よろしく!』
『っつー訳だからさっき言ったことしといてくれよ百夜。累も頼んだぞ。』
そう言って守霧は掲示枠を閉じた。おそらく攻撃の準備に入ったのだろう。そして残る掲示枠は一つ絹原のもののみで絹原も
『んじゃあ?そろそろこっちに乗ってくれない?もうついてるから?ちなみに四番ゲートね?』
と言って掲示枠を閉じてしまっているのでもうココから出るのみとなっていた。
「でもーその前にーあれ(スザクの死体)をどうにかしないといけないねー。」
「そっ、そうだったな忘れていたわけじゃないからな?いいか?忘れていたわけじゃなかったぞ?」
「わかってるよーそんなことー。」
「まあ、さっさと撤収しようか。『生命圧縮術式 起動 対象:死亡』『奔り 圧縮しろ』」
次の瞬間スザク(元依代)に円環状にいくつもの言語で描かれた文字列が取り付き瞬時にスザクを一枚の符にしてしまった。
「相変わらす早いねぇー、生命圧縮術式。普通十分から三十分は軽くかかるんじゃなかったっけ?」
「まぁ割と得意な術だからな。それよりもさっさと行こうぜ。」
「そうだねー早くしないと守霧さんの攻撃に巻き込まれちゃうねー。」
「笑えねー冗談言うんじゃねえ。それにもう着いたみたいだぞっと。」
二人が着いたのは空中上演場の船着場でそこにはすでに『坂東』の輸送艦が着いていた。輸送艦の中から案内人らしきメイドが出てきた。
「待ちしておりました。滅亡制御:吉田 百夜様、殲滅詩人:塔霧 累様すでに出航の準備が出来ております。搭乗をお願いします。」
「いや、俺たちは親父に映像送んなきゃいけないから輸送艦の上にいるよ。ってことでじゃーねー。」
そう言い放ち百夜はジャンプして輸送艦の上に乗り込んだ(ちゃっかり累も着いてきている)。
「それでは浮上します。」
__しばらくして__
輸送艦が上昇し、上演場の全体が見えたとき百夜が「掲示枠表示、映像モード」と言い守霧に通信を繋いだ。
「見えてる?」
『よし。ちゃんと見えてるからもういいぞ。百夜あんがとな。』
「いやこのまま繋いでおくよ。存分に撃っていいよ。」
『じゃあ、そのままにしておくよ。』
「しっかし守霧さんの隔界遠距離攻撃なんて久しぶりに見るんじゃないかなー?」
「まぁ、そうだろうな。おっと始まるぞ。」
『〝平坦な秩序がもたらされる
あなたは黄金の精神を持たなければならない
死 そして再生
世界は機械的に操作を行うだろう〟
〝決意は柔らかい衣に包まれる
意思はまた繰り返しを望むだろう
一人でいるのを好むのはよしたほうがいい
古くからの願いは叶えられるのだから〟
〝人は上昇気流に乗るだろう
大きな数字を手にするのはよしたほうがいい
狂気と知性が調和する
どれほどの血が流れるだろう〟
〝心は揺るぎなく安定する
全ては因果の流れの中にあるのだ
誰も来ない寂れた場所で
あなたは派手に魂を燃やすだろう〟』
『四行詩全詠唱』
『穿て 叛乱無銘』
その瞬間、世界を改変して撃たれる空間をも揺るがすような荘厳さの光の柱が上演場を貫いた。
_____結論。戦闘終了
ゼクア・シルバーフィールドは後々時間操作系能力者として出て来ます。