四本目
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「どうした?女、早くこっちに来い。」
その言葉と共に世界が凍った。
累は確かにいい女かもしれないが、
この相手は確かに狂っているかもしれなっかたが、
≪崩天事変≫によってここまで常識が変わっているのかもしれないが、
コイツの言い方は何かおかしい。
まるで、そう言うのが当たり前であるかのような。
そんな言い方。
………まぁ、いいか、
って言うか、コイツまだ俺を無視してんのかよ。
「あはは~、いや~面白いね~。う~ん、じゃ~そこの彼に勝ったらいいよ~。
と、いう訳で~モモっち後よろ~。」
「ふむ、ならば早々にそこの愚民を殺そう。」
あぁ、この疫病神め、自分だけ楽しやがって、いつかブン殴る。
今は仕事だ、頑張ろう。
「さて愚民、どのように死にたい?」
「剣で斬られて失血死か?首を刎ねられるか?体中串刺しになるか?選ばせてやろう。我は偉大だからな。」
「正直俺がいつどこでなぜどのようにして死んだのかなんてすごくどうでもいいと思うよ。まぁ、その中から選ぶんなら、串刺しだけは勘弁してほしいかな。」
「ふむ、まぁいいだろう。『起きろ』『その男を限界を超えて磔にしろ』」
そうスザクという男が命令するといつの間にか近くに来ていた死体たちがいきなり百夜の体にしがみついた。唐突に、死んでいたはずの死骸が、体のあちこちが吹き飛んでいようとも、だ。
「んなっ、てこれは君の≪人形化≫の能力だね。≪人形化≫は生きた人間も人形に出来るんだからただの死体なんて造作もないか。」
「その通りだ。愚民にしてはなかなか冴えているではないか。褒めてやろう。」
「貴様ごときには惜しいが、我の最強たる証を見せてやろう。」
「『私を構成するは真なる剣』
『我は正義 我は王 我は絶対』
『我が血肉を骨子に 我が望みを用いて剣を編め』
『我は使い 振るい 滅ぼすのみ』
『我が身が最強である意味を示せ』
『心象世界 剣の墓標』」
そういうと同時にスザクから青色に燃える炎の境界が飛び出し瞬く間に私/俺とスザクを覆った。
その世界にあったのは地面に刺さった名剣、魔剣、聖剣、名刀、妖刀、等等どれもこれも歴史から消えていたりするものばかりであった。
その世界のソラは歯車の形になった月と太陽が噛み合いながら回っている。
「貴様が嫌だと言った串刺しにて仕留めてやろう。 『浮かび上がり 磔に向かい 刺され』 」
ってコイツ人の話、聞いてないな。
そう思った直後、地面から剣が浮かび上がり百夜に向かっていき、刺さった。
それは見事に磔の上からグッサリと深々と。
それでスザクは勝ちを確信したのか自分が勝者であるかのように振舞い始めた。
「余りにあっけないな、さあ女、我の下に来い。やつは死んだぞ。」
「いやだな~あの程度で百っちが死ぬはず無いじゃん~。まだ生きてるよ~。」
「あの状態で生きているはずが無いだろう。」
「まぁ~、見てみなよ~。」
串刺しになった磔から黒い染みが浮かび上がっている。刺さっている剣にもだ。
染みはだんだんと広がっていき、磔全体に広がった。
そして累は徐々にその端正な顔を狂気の笑みに染めて言い放った。
「私は言ったよ。あの程度であの殺人官とも呼ばれる吉田百夜が死ぬ筈が無いって。ついでに君に私が殲滅詩人と呼ばれる理由を体感させてあげる。」
「『おお狂いに狂った我が力よ、罪深く高慢な彼の者に地獄すら生ぬるい死の判決を』」
その言霊が告げられるとスザクを取り巻くように〝ナニカ〟の重圧が掛かり消えた。
その途端黒い染みが百夜を磔にしていた人形と深々と刺さった剣を飲み込んだと同時に、黒い影を鎧のように纏っている百夜が立っていた。
「なっ、何!?馬鹿な!どうしてあの状態から逃れたというのだ!?」
「別に逃れてなんかいないさ、ただ単に剣と人形を影で侵食して飲み込んだだけだよ。」
「それで、これごときが君の最強? だとしたら滑稽すぎて笑えてくるよ。」
「補足するならば、累が『運命の詩』を使ったみたいだからな。」
ふと、見渡してみてもどこにも累の姿が見えないことから『運命の詩』を使ったらどっかに言ったんだろうと結論付ける。
「この≪心象世界≫は君ごときが使えていいものじゃない。せいぜい≪管理者≫の一人に特典だの何だの言われてホイホイ貰ったんじゃない?」
百夜の痛烈な言葉は場に冷たく響いた。百夜は≪心象世界≫を親の仇のごとく睨んでいる。スザクの方もここまで言われるのは流石に腹が立ったのか今までに無いほどの怒気を振りまいている。
そして、微妙な近郊は崩れた。
百夜がスザクとの三十メートルほどの間を一瞬にして詰め寄り振り上げた剣の形に集まった影で首を狙えば、すぐさま近くにある剣を抜き放ち鍔迫り合いになる。
「君みたいなのは接近戦はダメだとばかり思っていたよ。」
「ふん、命令して進ませるだけが能ではない。」
「でも、死んでくれないかなっ。」
「断るっ。」
再び二人は離れた。
スザクが槍でもって突きを繰り出せば、百夜は影を剣の形に集めて切り上げる。百夜が切り上げた剣を加速して振り下ろせば、スザクは盾を手繰り寄せて斬撃を防ぐ。反動を利用して離れた百夜が弓矢の形に集めた影を放てば槍を投げて相殺する。スザクが身長の倍はあろうかと言うほどの大剣を構え、百夜は長い柄を持つ斧槍を構えた次の瞬間、二人は音を置き去りにして結界内をあちこち動きながら己の得物をぶつけ合う。
二人の動きが止まった時には百夜はコートの様な影で編まれた軽鎧で防がれているのに対し、スザクは体のあちこちに傷を作っていた。
その事象が信じられないのか怒りに震えながらスザクが怒声を上げた。
「なぜっ!貴様は私より有利に居られる!?」
「はぁ?何言ってんの?」
「この結界内において全ての力は展開と共に解析され、即座に結界に吸収されて剣の形にて『剣の墓標』に保存されるハズだぞ!」
「そんなことか。じゃあ教えてあげるよ。俺の元々の能力のせいもあると思うが、一番大きなのは累の『運命の詩』だろうな。あいつの能力は複数ある未来の結果の内から自分にとって一番都合のいい未来を詠唱して手繰り寄せるいや、無理やりその未来を引っ手繰ると言ったほうがいいな。そしてあいつの能力は相手にとって残酷な未来であればあるほど引っ手繰り易いらしいからな。累のヤツ顔を狂気に染めて笑っていたろ?なら間違いない。かつて四つの都市を壊滅に追い込んだ殺戮女王の頃の笑顔だ。今じゃ【六角天】のおとぼけ観察官兼予報士だがな。」
「バカな!その程度で『剣の墓標』が無効化されるわけ無いだろうが!!」
「それが事実だ。それにこれは元々お前のものではないだろうが。この能力は極東暦69年にウクライナ暫定政府管理下において発生した危険遺跡≪薔薇と吸血鬼の森≫の攻略中に原種級の吸血鬼と相打ちになった【六角天】第三大隊所属:恒神 尊の所持していた固有級能力だった筈だ。所持者ではない貴様が完璧に扱える訳が無いだろう。」
ため息混じりにそう返してやれば、スザクは怒りが具現化しそうな程の怒気を身に纏いながら叫んだ。
「ふざけるな雑種!こうなったら完膚なきまでに殺してくれる。この『剣の墓標』の真の力を見せてくれる!」
「いいよ別に見たくないし。っといっても無駄かな?ここからは俺の奥の手で殺してやるよ。」
「事象を枉げてその内に秘めし力を解き放ちながらヤツを押しつぶせ!≪剣群≫ども!」
「固有級能力:利己的な審判者第三位階に移行。」
その言霊を言うと影が百夜を包み弾けた。中から現れたのは髪が長くなり、眼鏡を掛け、裾が長く縁を白で彩り黒い生地の中を白い蝶が下から羽ばたいている図柄が描かれたコートを羽織った百夜が現れた。
「さぁ終わりだスザク・フェンナルド。貴様の全てを【セカイ】に返せ。」
「貴様が死ね!それでこの場は収まる!」
そう言うと二人は同時に詠唱を開始した。
「その内に秘める偉業を開放せよ!混沌を拓きし剣!勝ち続ける者の剣!大神が持つ至高の槍!厄災なす魔の杖!」
「『我は審判者、我に刃向かう全てを殺す。切り裂き、叩き潰し、刃向かう者全てが消えるまで潰し続ける。』」
「総てを貫く光明神の槍!断てぬ物無き絶世の剣!雷神より授与せし霊剣!抜けば玉散る氷の太刀!」
「『我が右手には 金の金槌 我が左手には 銀の杭
白金の鎖が反逆者を縛り 大理石の逆十字が反逆者を捕らえるだろう
我は殺し続けるでだろう 反逆するモノが居なくなるまで』」
「天地を分けし青銅の剣!虹の弓に稲妻の矢!聖人を貫きし聖槍!腕に刺さりし致命の矢!」
スザクの詠唱が一瞬早く完成し、攻撃を放った。
「『十二に及ぶ至高の兵器、一重二重と重なり続けろ!』」
「『抱かれし絶望』」
攻撃の名を言うと空の果て地平線の果てから数え切れない攻撃の数々。
一瞬遅れて百夜の詠唱も完成する。
「完成(詠唱完了)。
故に『侵し尽くせ』
『偽りの世界を』」
たった一言、そのたった一言だけで百夜が纏っていた鎧からもはや波動といってもいい勢いで出た黒い染みが世界を侵し始めた。
スザクから放たれていた『抱かれし絶望』にあたろうとも減衰すらせずに貪欲に広がった。
黒い波動が過ぎ去ると、そこには何も無かったのかのように最初と変わらぬ風景が広がっていた。
「バ、バカな!い、最終奥技が敗れただと!あれは世界をやり直させることさえ可能なんだぞ!」
自分の最終奥技が敗れて明らかに動揺するがまだ戦いの最中であることを思い出し、即座に次の行動に移る。
「っは!『刺され』! 『穿て』!」
その言葉と共に数千、数万の剣が浮かび上がり百夜を目指し飛んでいくが、
「『侵せ』」
ただその一言だけで剣に黒い染みが染み渡り剣を無くしてしまった。
しかし、攻撃して再び最終奥技を放つチャンスを伺うしかないスザクは防がれると分かっていても再び同じ攻撃をするしかない。
「『刺され』!『穿t「見苦しい、もう無駄なだけだぜ。」やらなければ分からないだろう!」
「無駄だ、空を見てみな。」
「空だと? なっ馬鹿な!? 何だこの空に広がる黒い線は!?」
スザクの言うとおり空には無数の黒い線が広がっていた。
「『限定奥義:空覆い』結界などの限られた空間でのみ発動可能な空を通して世界を侵食する技だ。」
「さぁ、終わりだ。」
その言葉と同時に鎌状に集めた黒い染みが地面を叩くと、世界が割れた。
_____結論。圧倒