82:新しい彼女が元カノと出会う。
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「あれ……菅原さんよね?」
白髪の少女に背後から声をかけられた……
「はい……あなたは……元カノさんですよね?」
「まあ……そう呼ばれると私が悪者みたいじゃない……お買い物?」
後ろから声をかけてきたのは他でもない、アキトの元カノ、星野だった
「はい……友達と来てたんですけど、先に帰っちゃいました……」
「じゃあ……ちょっとどこかで話さない?」
サメちゃんが頷いた……二人はショッピングモールの中のレストランに入って、話をした……
「もう長く付き合ってるのね?」
「はい……半年くらいになりますね……」
彼女は食事をしながら、嬉しさを隠しきれない顔で答えた……
「おめでとう……どう? 彼と付き合ってみて……」
彼女は頬杖をつきながら……元カレの新しい彼女を優しく見つめた……
「アキくんって思ってたより気持ちのいい人ですよ……まあ確かに悪いところもあるんですけど……彼女として日々しつけ中です……」
「悪いところ?」
「なんか……お酒を飲んだり、怪しいお店に行ったりするのを私に黙ってることが多くて……」
「えっ?……怪しいお店……」
「あ……元カノさんはまだ知らないんですね……アキくんってYouTubeでそういう話を語るチャンネルをやってるんです……たまにそういう系の話もしてて……最初は行くなら教えてって言ってたんですけど、最近はもう報告させるのをやめました……」
それを聞いた星野はすぐに困惑した表情を浮かべた……自分だったら絶対に止めていただろうに……
「あの……アキトくんが浮気するのが怖くないの?」
そりゃあそういうお店に行くということは、こいつが本当にやばいのはもう分かってることだ……でも……
「あー……あの人、そんな度胸ないですよ……」
サメちゃんは涼しい顔でそう言った……
「度胸がない……でもそれって……」
「確かに、やるかもしれないですよ……でももしやったとしたら……傷つくのは私じゃなくて彼のほうですから……」
「……」
「彼が言ってくれたんです……卒業したら結婚しようって……」
この子は……
「だから……結婚後の生活は今みたいに自由にはできないって分かってるから……それまでは思いっきり生きていいよって思ってるんです……」
本当に変わった子だ……
「元カノさんはどうして彼と別れたんですか?」
シンプルな質問……でもこれほど答えにくい問いもなかった……
「あの頃……東京を離れた大学に行くことになって……それで別れを告げた」
「あの時の私は……怖かったんだよね……離れたままでは、一緒にいた時みたいに愛せなくなるんじゃないかって……」
「信用してなかったんですか?」
「そうじゃなくて……ただ……離れたら……彼が私を待ち続けることが辛くなるんじゃないかって思って……別れを告げればそれほど傷つかないかなって思ってた……でも私はずっと間違ってた」
星野は目の前に置かれたチャーハンの皿を見つめた……
「……」
「相談するんじゃなくて……自分だけで全部決めちゃって……私って本当に馬鹿だったな……」
「馬鹿じゃないですよ」
「え?」
「人はいつだって間違えるものですから……たとえそれが取り返しのつかないことだったとしても……次は同じ間違いをしなければいいだけです……」
星野は女神のように微笑むサメちゃんの顔をじっと見た……
「あなたって変わってるわね……ご実家はヨーロッパ系なの?」
「ははっ……母方の親戚がロシア人で、ロマノフ王朝の婚外子の子孫だって話もあるんですよね、本当かどうか分からないんですけど……だから幼い頃はヨーロッパ式の育て方をされてて……」
彼女は照れ笑いをしながら、たしかに私の言うことって変かもしれないね、と付け加えた
「ヨーロッパ式の育て方?」
「ええ……まあ大富豪の親御さんっていうのは、子供をナニー(乳母)に育てさせることが多いんですよ。読書させて、スマホは取り上げて、やりたい活動をさせてくれる感じで……だから私はいつも自分の自由を最優先に考えてきたんです……」
「私たちとは全然違うわね……あなたのご両親は?」
「もう長い間会ってないんですよ……」
「え?……なんで?」
「外国の学校に行くのが嫌で、親に家を追い出されたんです……」
「そうなの?……じゃあ一人で暮らしてるの?」
「はい……同人誌を売ったりコスプレイベントに出たりして生計を立てて……学費は奨学金をもらって……なんとかやってきました……」
この子は……ずっと自分の力で生きてきたんだね……
「アキくんと出会ってから……収入も以前よりずっと増えたし……それに……いろんな人とも出会えるようになって……」
星野は高校時代のアキトのことを思い出した……
何も変わっていない……
彼はいつも周りの人を助け続けていた……
しかも全力で……
「だから……こんなに一生懸命尽くしてくれる人に……恋に落ちないわけないじゃないですか……そう思いませんか?……」
その一言で……星野は自分がこの小さな女の子の足元にも及ばないと分かってしまった……
「そうね……私たち二人って、似てるとも言えるかしら……」
「そうですね……好きな人に全力で尽くすから、たとえ無謀に見えても、人生を預けられる人だって思えるんですよ……」
「……そうね……彼がそういう人だから……私たち二人とも、心の底から彼のことが好きで愛してたってことになるわね……」
「はい……」
コンコン……ガラスを叩く音が響いた……星野の夫が呼んでいた……
「あっ……呼ばれちゃった……じゃあまた会いましょう、サメちゃん……」
「はい……またお会いしましょう……」




