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ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。  作者: Sakusaku


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6:兄と妹の間の、次第に縮まっていく距離。

 007


「バイトを増やして収入を足してくれないか……計画を少しでも早く進めるために」


 彼女はしばらく考えてから……変質者を見るような目でこちらを向いた。


「そういう仕事をさせようとしてるんですか?」


「違う、このバカ!バイトだよ、バイト!普通のバイト!……」


「あ……そうですか」


 もう……俺を人身売買業者だと思ってるのか……


「俺がそういう人間に見えるか……」


「見えますよ……制服を着て歩き回る大人なんて、アキトさんくらいしかいないですから……」


「……それは確かに……」


 まあな……誰が制服を着るんだって話だが……まあいい。


「必要なら何でもやりますよ……ところでどんなバイトですか?」


「俺もそこまで考えてなかった……何か心当たりはあるか?」


「いきなり聞かれてもわかりません……」


「そうだな……」


 時間を見ると、もう八時近かった。


「じゃあ……考えてきてくれ……俺の方でお客さんが来ない日があったら、そこを君の分で補えるようにしておくから」


「はい……」


 二人で会計を済ませて店を出た。俺と菅原の家は同じ方向なので、一緒に歩いて帰ることにした。


 あるアパートの前で彼女を見送った……見たところ、なかなか立派なアパートのようだった。


「ただいま……」


「あ、お兄ちゃん……今日は早いね……」


 めったに話しかけてこない妹が声をかけてきたので、俺もどう反応すればいいかわからなかった。


「仕事が片づいたからさ……ちょっと早く帰ってきた」


「そう……夜ご飯、作っておいたよ……忘れずに食べてね」


 それだけ言うと、彼女はまたMonitoringの番組に戻っていった……全然疑われなくてよかった。


 おまけに俺がクビになったことも知らない……


 いや……仕事はあるにはある……ただ以前より収入がはるかに少ない……生活費にもならないくらいだ……


 最後の給料と全貯金を合わせれば、半年はどうにかなる……でも深冬の学費が……


 入学枠があるとはいえ、妹にも当然お金はかかる。


「あ……兄さん、二日ほど休みを取ろうと思って……母校に顔を出してみようかと」


「うん……」


 静かな返事だけが返ってきた……普通の人なら、休みを取るのは印象が良くないと言うだろうが、深冬はそういったことを一切気にしなかった。


 台所に入ると、大鍋に包まれたスパイシーカレー(唐辛子多め)があった。俺の好物第二位だ。メモが貼ってあって、『作りすぎちゃった……全部食べてね、お兄ちゃんの好物だから……食べきれなかったら冷蔵庫に入れておいて、明日温め直してあげる……』と書いてあった。


「熱々で食べるのが一番だな……」


 できたての熱い料理を食べるのがいつ以来かわからない……三年ぶりくらいじゃないか。普段はレンジで温めたものばかり食べていた。


「うわっ!!辛っ!!……でも止まらない……」


 リビングから笑い声が聞こえた……テレビの番組のせいで笑っているのか、俺のせいなのかわからない……でも少しだけ、嬉しい気持ちになった。


 少なくとも今この瞬間は、俺たちの距離が少し縮まったような気がした……




 翌日……大鍋のカレーを完食した俺は、今度は妹のために朝食を作ることにした。


「……!」


「よ……おはよう……今日は休みだから、俺が作るよ……」


 彼女はうなずいて、着替えに行った。


「それにしても……SNSって便利だな……料理の短い動画もあるし……」


 俺はいつも友人とはメールか電話かLINEでやり取りしている……動画を見るならYouTubeだけだ……菅原に会ってから、SNSにこんなにたくさんのアプリがあることを初めて知って驚いた……


 ここ数日、料理とブラックユーモア系のショート動画をずっと見ていた……俺ってもうおじさんみたいだな……今の若い子たちについていけなくなってきている。


 まあ、俺たちの頃はまだストラップをじゃらじゃらぶら下げた折りたたみ携帯が流行っていたし……あの名作アニメから派生したサイトみたいな掲示板もあったしな……


 昨夜はFacebookで見た「夫のためにお弁当を作ります」という動画を見て、やってみたくなった。


「なかなかいい見た目じゃないか……」


 卵焼き、ウインナー、鶏の唐揚げ……猫の形のおにぎり、それからお茶……


 朝食の方は、焼き魚ご飯、納豆の卵黄のせ、豆腐とわかめの味噌汁。


「ほう……初めて作ったにしては……美味しそうだな……」


 冷蔵庫の残り物がほとんどだが……それでも十分美味しそうに見えた。


 深冬は何も言わずに食卓に来て、手を合わせて食べ始めた。


「……いただきます……」


 それを言ったのは俺だけだった。


「あ……お弁当も作ったから……忘れずに持っていってね……」


 彼女はちらりとお弁当に目をやってから、うなずいた。


「…………」


 次に何を言えばいいかわからなかった……言葉が出てこなくて、舌の感覚まで消えてしまったような気がした。


 料理がどんな味なのかもわからなかった……しばらく舌が感覚を失ってしまっていたから。


 彼女はさっさと食べ終わり、自分で食器を片づけてお弁当を持って出て行った……


 出ていく前に、一言くらい言ってくれないかと密かに期待していた。


「ちょっと塩辛かったよ……」


「え……?」


 そのまま家を出て行った。


「まあ……何か言ってくれただけいいか」


 食器を洗って家を出た……妹はもうとっくに姿を消していた。


 歩いていると、菅原と鉢合わせした。


「よ……」


「あら……おはようございます」


 いつもと変わらない気さくな挨拶だった。


 深冬とは正反対だ。


「バイトのこと、考えてきたか?」


「うん……友達に聞いたら、秋葉原のメイドカフェで働いてる先輩がいるって教えてくれて……」


 メイドカフェ!この子がメイド服を着てるところ、ちょっと見てみたい……ご主人様とか呼ばせて……なんて。


「遠いな……接客の経験はあるか?」


「ないですよ……でも、お客さんを楽しませる仕事をすれば、ファンとのやり取りも上手くなる練習になるかなと思って」


「なるほど……」


 一石二鳥だな。


「モデルのことはいったん後回しにして……今はとにかくお金の方に集中しよう……」


「そうですね……ところで何かアドバイスはありますか?一応、人に相談に乗る仕事をしてる人なんですから」


 俺はGoogleじゃないんだぞ、このバカ。


「変な人には気をつけることだよ……特に従業員とお客さんの距離感をわきまえて……馴れ馴れしくしすぎると、必ず絡んでくる人が出てくる。君みたいに可愛いならなおさら」


「気をつけます……ところで今日はどこに行くんですか?」


「機材を見にショッピングモールへ……それから午後は君の学校にも寄ろうかと……」


「え……アキトさんって、うちの学校の卒業生なんですか?」


 この制服が母校の制服だと気づいていなかったらしい。


「そうだよ……八年ぶりだな……どのくらい変わってるか気になって……」


 それに……昔の記憶を少し呼び戻せるかもしれない。

大人になってから小学校に何度も行ったことがあるのですが、行くたびに変化を目にし、そのたびに小学校時代を懐かしく思い出します。

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