解けない魔法
「カーティア……」
大好きな人がささやく声と芳しい紅茶の香りがして、私はふっと目を覚ました。
目を開けると、脇テーブルにはティーセットと果物が用意され、ベッドサイドに腰かけたダイナードが愛おしそうに私の髪をなでているが見えた。
まるで幸せな夢の続きみたいだけど、夢じゃない。
大きな温かい手の感触に目を細め、頬を寄せる。
(昨日、私はとうとうダイナードのものになったんだわ)
ふいに思い出すと、はち切れんばかりの幸福感に満たされて笑みが漏れた。
長年の願いが叶ったのだ。
あきらめようとしていたときもあったのに。
でも、起き上がろうとして、まったく身体に力が入らないのに気づく。
「あれ? どうして?」
ジタバタしていると、慌てたダイナードが私を支えて、身を起こしてくれた。
眉を下げて、謝ってくれる。
「大丈夫か? 申し訳ない。昨日は歯止めが利かなくなって、カーティアにムリをさせてしまった……」
「大丈夫よ。ダイナードに我を忘れさせられたのなら、それはそれでうれしいわ。いつも余裕そうなんだもの」
しょんぼりとした顔で反省しているダイナードに、私は笑って首を振った。
自制心の強い彼がまさか、それほど私に夢中になってくれるなんて、喜びでしかない。
その言葉に微笑んだダイナードは、私の髪を一房手に取り口づける。
「君に関しては余裕なんて一つもないよ。きっとこれからもずっと」
甘いまなざしで告げる彼が愛しくて、その広い胸に抱きついた。
そういえば、ダイナードが着せてくれたのか、私はちゃんと夜着を着ているし、私の服も彼の服も消える様子はない。
(好きな人と結ばれたから、呪いも消えたんだわ)
あの呪いは、私の心をずっと映していた。
『あなたが好き……!』と主張していたのだ。
だけど、もうアピールする必要がなくなったから消えたのだと思う。
それでも、私は敢えて口に出した。
「ダイナード、好きよ」
「あぁ、俺も好きだ。愛してる、カーティア」
マーリスの魔法はとんだ騒動を巻き起こしてくれたけど、おかげでダイナードと結婚できた。
愛を告げるとちゃんと返ってくる関係になったのだ。
改めて考えると、うれしくて幸せで、胸がいっぱいになる。
もう二人きりになっても服は消えない。
好きな人と二人きりになると服が消える呪いにかけられたけど、好きな人と結ばれて、一生消えない魔法にかかりました。
幸せという名の――。




