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世界を救うには切り捨てが必要らしいけど、俺は拒否することにした ―切り捨てない選択をしたら、誰にも歓迎されなかった  作者: 深影シオン
第2章 切る者たちに、追われて

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第3話 闇は、壊したがっている

 夜の森は、昼とは別の世界だった。


 火を焚かず、三人は木々の影に身を潜めていた。

 街を出てから、誰も口を開いていない。


 少年は、眠れずにいた。


 目を閉じると、倒れた人々の姿が浮かぶ。

 祈祷の光。隔離の鐘。泣き声。


 ――僕が、ここに来なければ。


 思考が、同じ場所を回り続ける。


 そのときだった。


 背後で、ぱきりと小さな音がした。


 少年の体が、強張る。


 獣ではない。

 足音が、軽すぎる。


「……誰?」


 声を潜めた問いかけに、答えはなかった。


 次の瞬間、闇が“剥がれた”。


 そこにいたのは、一人の少女だった。


 歳は、少年とそう変わらない。

 黒い外套に身を包み、肌は月明かりに溶けるように白い。


 だが、目が違った。


 暗闇の中で、こちらを見ているのではなく、境界を見ている。


「……やっぱり」


 少女は、どこか嬉しそうに呟いた。


「聞こえてた通りだ」


 エルディアが、即座に杖を構える。


「闇界の者ね」


「うん」


 少女はあっさり認めた。


「でも、敵って決めつけるの、早くない?」


 カイルが一歩前に出る。


「近づくな」


「ひどいなぁ」


 少女は肩をすくめた。


「安心して。

 奪いに来たわけじゃない」


 その言葉に、少年は思わず聞き返した。


「……じゃあ、何しに」


 少女の視線が、少年に向く。


 そして、はっきりと言った。


「壊しに来た」


 空気が、凍りついた。


 エルディアの声が低くなる。


「《閉界の鍵》を?」


「そ」


 少女――ミルナは、笑った。


「それ、世界を閉じるんでしょ」


「……そうね」


「だったらさ」


 ミルナは、首を傾げる。


「閉じる前に、壊せばいいじゃん」


 カイルが鼻で笑う。


「簡単に言うな」


「簡単じゃないよ」


 ミルナの声は、少しだけ冷たくなった。


「でも、できる」


 少年の胸が、ざわつく。


「……壊したら、どうなるんですか」


 ミルナは、しばらく黙った。


 そして、正直に答えた。


「世界は、開いたまま」


「神殿も?」


「届く」


「王も?」


「支配する」


「魔物は?」


「増える」


 あまりに率直な答えだった。


「でも」


 ミルナは、少年を見た。


「少なくとも、

 誰かが勝手に世界を閉じることはできなくなる」


 少年は、言葉を失った。


 エルディアが言う。


「それは、無責任よ」


「かもね」


 ミルナは笑った。


「でもさ」


 一歩、近づく。


 闇が、彼女にまとわりつく。


「あなた、鍵を使いたくないんでしょ」


 少年の心臓が、跳ねる。


「使われるのも、嫌なんでしょ」


「……」


「だったら、壊すのが一番じゃない?」


 沈黙。


 カイルが、低く唸る。


「それは、逃げだ」


「違うよ」


 ミルナは、即答した。


「生き残るための選択」


 少年は、鍵を見た。


 冷たく、重く、手放せない鉄。


 それを壊す。


 そんな選択肢が、

 この世界に存在するとは思っていなかった。


「……壊したら、あなたはどうなるんですか」


 少年の問いに、ミルナは一瞬だけ目を逸らした。


「消えるかも」


 軽い口調。


「私は、鍵と同じ“境界側”の存在だから」


 エルディアが、はっとする。


「……なるほど」


「だから壊したい」


 ミルナは、少年に向き直る。


「一緒にやろ」


 その笑顔は、どこか壊れかけていた。


 少年は、答えなかった。


 だが、この瞬間、物語ははっきりと三つに割れた。


管理したい神殿


利用したい王権


壊したい闇界


そして、その中心に――

何も選びたくない臆病者が立っている。


 闇が、静かに笑った。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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