第5章 mirror_03 ― 侵入者の影 ―(後編)
青い光が走る。
天才リブーター・桐生蒼真が、影を砕く。
アークシステムズの会議室。
柊と凪、環の3人が並んで端末を囲む。
画面はすでに真紅に染まり、mirror_03の侵食率が100%に近づいていた。
> 【MIRROR SYNC — 94%】
「……このままだと全システムが写し取られます!」
「クローズコードを試す。凪、バックアップを!」
「了解!」
環が祈るように手を握りしめる。
「お願い、間に合って……!」
だが、返ってきた文字は無情だった。
> 【Access denied. Mirror complete.】
凪の指が止まる。
空気が凍りつく。
「……やられた。」
柊が低く呟く。
「止めたつもりが、完成のスイッチだった。」
その瞬間、モニターの赤がふっと青に変わった。
画面の片隅に、淡く揺れる光。
> 【reboot://blue_echo_link】
凪が息をのむ。
「……蒼真さん!?」
コマンドラインの上に、新たなメッセージが流れる。
> 【No mirror lasts forever.】
(どんな鏡も、永遠には続かない。)
青い光が一気に広がり、画面全体を包み込む。
mirror_03の構造体に亀裂が走り、データの鏡面が音もなく砕けていく。
> 【mirror破損検知──コード再構築】
青と赤が交錯し、閃光が一瞬、部屋を照らす。
柊がその光を見つめながら、静かに言った。
「……これが、リブーターの手か。」
凪が青い光の中で微笑む。
「はい。蒼真さんは、最初から読んでいたんです。」
モニターの光が静かに消え、室内に静寂が戻る。
外では雨が降り始めていた。
しとしととガラスを叩く音。
その音が、青い残響のように夜の中へ溶けていった。
凪は消えゆく青の光を見つめながら、
それがどこか“人の祈り”のように見えた。




