第5章 mirror_03 ― 侵入者の影 ―(前編)
芹澤鷹臣。かつての同志。
そして今は、鏡の向こう側に立つ男。
アークシステムズ社内。
警告音が鳴り止まない。
端末のログ画面に、真っ赤な警告文字が次々と流れていく。
> 【mirror_03 detected.】
凪が息をのむ。
「……mirror_03が起動しました!」
柊が素早く端末にアクセスする。
「停止コマンドを送る。凪、環は接続状況をモニターして。」
「はい!」
環は緊張で手を震わせながらも、指示通りに操作を始める。
しかし、コマンドはことごとく拒否された。
> 【Access blocked.】
【System sync: 42%... 68%... 91%...】
「おかしい……僕たちのコマンドが全部弾かれてる!」
「内部で上書きされているな……。まるで俺たちの操作を読んでいるみたいだ。」
「誰かが、今も見てる……?」
柊の瞳に冷たい光が宿る。
「mirror_03――これは外部侵入じゃない。
俺たちが書いたコードを“利用して作られた鏡”だ。」
凪の手が止まる。
「……つまり、僕たちが……」
柊は低く呟いた。
「鏡を作ったのは、俺たち自身だ。」
その言葉と同時に、画面が一瞬強く点滅した。
> 【compile://MIRROR_COMPLETE】
「しまった!」
柊が叫ぶ。
凪が振り返る。
「止めたつもりが……完成のトリガーだったんですね!」
環が顔をこわばらせる。
「そんな……!」
柊が歯を食いしばる。
「芹澤……俺たちの手を読んでいたのか。」
◇◇◇
暗転する場面。
複数のモニターが並ぶ暗い部屋。
芹澤鷹臣が、無表情のまま指先でマウスを滑らせる。
画面にはアークシステムズのシステムマップ。
中央には、mirror_03の進行状況がリアルタイムで表示されている。
「完璧だ。
鏡は完成した。
おまえたちの理想も、ここで閉じる。」
淡く笑い、ウィンドウを閉じる芹澤。
その背後で、青いLEDが1つだけ点滅していた。
まるで、それ自身が“次の命令”を待っているかのように。
【MIRROR_COMPLETE】
芹澤の罠にかかる、アークシステムズ。
背後で点滅する青い光の正体は。




