第4章 blue_echo ― 青い残響 ―(後編)
“blue_echo”――
青い残響は味方なのか。
夜のリビングに、パソコンのファンの音だけが響いていた。
mirror_02の解析を続けていた凪の画面に、突如として青い光が走る。
> 【Stay offline. The mirror watches.】
(オフラインでいろ。鏡が見ている。)
柊が低くつぶやく。
「……警告か?」
凪はすぐに答えた。
「たぶん、蒼真さんです。」
環が驚いたように画面を見つめる。
「blue_echo……」
柊が近づき、モニターをのぞき込む。
「通信経路は?」
「わかりません。ネットワークは完全に遮断してるのに……」
凪は息を整えながら、画面を操作する。
> 【mirror_03 : initializing】
次の瞬間、画面が一瞬ノイズに包まれ、
新しいメッセージが浮かび上がった。
> 【芹澤が動いている。mirror_03が起動する前に遮
断を。】
柊が眉をひそめる。
「……mirror_03?」
凪が首を振る。
「そんなプログラム、アークの中には存在しません。」
青い光が、3人の顔を照らしている。
柊がゆっくりと息を吐いた。
「内部の者しか扱えない暗号だ。」
環がはっとして顔を上げる。
「つまり、彼は今もクロノス内部のコードを使ってる……?」
柊がうなずく。
「そうだ。蒼真はまだ――あの中にいる。」
凪の手が止まる。
「でも、彼は味方ですよ。
“侵入”じゃなく、“防衛”のコードです。」
その瞬間、画面に再び青い文字が流れた。
> 【See you soon, Nagi.】
凪が目を見開き、そして小さく笑った。
「……やっぱり、蒼真さんだ。」
柊は静かにマグカップを持ち上げ、冷めたコーヒーを一口だけ飲む。
「彼が動いたということは――芹澤も。」
環が息をのむ。
夜の静寂が、またひとつ、深く沈んでいった。
画面の青が消えたあとも、
凪の耳には、かすかな電子の残響が――まだ、聞こえていた。
【See you soon, Nagi.】
天才リブーターからのメッセージ。
――その目的は。




