第4章 blue_echo ― 青い残響 ―(前編)
届いたのは、懐かしい名の“青い信号”。
それは、過去からの救いか、それとも新たな謎か。
朝の光がまだ淡い空を染めていた。
リビングには、夜の名残のような静けさが漂っている。
柊はコーヒーを手に、凪のPCの画面を見つめていた。
ディスプレイには、mirror_02のログが延々と流れ続けている。
「昨日の同期以降、何か変化は?」
「断続的にデータのやり取りが行われています。
でも……相手のサーバーが特定できません。」
柊が目を細めた、その瞬間。
画面の一角がふっと青く光った。
> echo-blue://
session_start
凪が小さく息をのむ。
「……blue_echo……?」
柊がその言葉に反応する。
「それは?」
凪は画面を見つめたまま、かすかに微笑んだ。
「天才エンジニア、“リブーター”こと桐生蒼真さんです!」
「蒼真か!」
柊の声にわずかに熱がこもる。
環がきょとんとした顔で見つめる。
「リブーターって?」
凪が説明するように続ける。
「彼は壊れたシステムを再起動させる天才なんです。
クロノス時代、一度彼に救われなかったプロジェクトはないって言われてました。」
環は小さく頷きながらつぶやく。
「そんな人が……味方?」
柊は少し間を置き、低く言った。
「まだ断定はできない。
だが、“あの桐生”が動くなら、何かが起きる。」
モニターの青い光が、3人の顔を照らす。
静寂の中で、確かに何かが動き出していた。
その青は、闇の奥でかすかに脈打つ“再生のサイン”のようだった。
“blue_echo”――
その名を知るのは、凪ただひとりだった。




