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第28話 備え


今日も今日とて僕は地獄の日々を送っている。


ラグナさんと共にダンジョン【碧の洞窟】に潜り魔物狩り。

帰って来たら冒険者ギルドで訓練。

夜になったらラグナさんの家の庭で自主訓練。


毎日この繰り返しだ。


「短剣用のスキルが欲しい...。」


夜、自主訓練をしている時、そんな呟きが漏れ出てしまった。


僕が魔物から奪ったスキルは以下の通りだ。


リザードマン→【槍術】

大魔水牛→【斧武】【水魔法】

大ガエル→【跳躍】

サハギン→【潜水】

トレント→【伸縮】

ドッペルゲンガー→【変身】【読心術】


この中で武器関連のスキルは槍術と斧武だけ。

そのどちらも僕の体格にはイマイチ合わないものだ。

僕は同年代と比べても背が高い方では無いし、肉付きもあまり良くない。

短剣はそんな僕にピッタリな武器なので、それ関連のスキルは是非とも欲しい。


正直スキルがあるとないとじゃ実力に雲泥の差がある。

どうにかして手に入れられないものか...。


「まぁ無い物ねだりしててもしょうがない、か。」


気持ちを切り替えよう。


最近はラグナさんの不在が増えた。

前に3日間家を空けていた時は『大人の都合』とか言っていたが、最近のそれは教会の調査に乗り出しているからだ。

一冒険者にそんな事をする責任は無いはずだけれど、なんだかんだ僕の心配を解消してくれようとしているのかもしれない。


もしくは、先々の自分の目標...聖女を聖金級冒険者にしてダンジョンを攻略させる為、か。

その辺は分からないが、どちらにせよ僕としてはありがたい話だ。


そしてラグナさんが不在の間、僕の自主訓練として出された課題が【考える能力を身に付ける】こと。

そして、【事前に備える】ことだ。


手持ちの手札をどう使うか。

彼我の実力差はどれくらいあるのか。

それをどう埋めるのか。

など、戦闘中に判断すべきことは無数にある。


普段から様々な戦術を練っておき、いざと言う時に瞬時に判断を下せるようにしておく。

もしくは事前に備えていた策を持って、敵を撃滅する。

それがラグナさんから出された課題だ。


その一環として、今までやっていた基礎訓練や身体能力向上訓練の最中も、常に頭を働かせる様にしている。

今も走り込みをしながらどうすれば自分より強い敵に打ち勝てるかを模索しており、ひとまずは対リザードマン戦を想定中だ。


「...うん。アリかも知れない。」


模索する中で、2つ程新しい戦術が思い浮かんだ。

片方は既存の戦術に手を加えただけのものだが...中々悪くないんじゃないだろうか。


次に空き時間が出来た時に試してみようと思う。





――――――――――





翌日。

今日も午前中はラグナさんが不在だ。


昨日思い付いた戦術...その備えをしておこう。


まずは壁槍戦術について。

これの改良案を試していく。


今までの壁槍は環境に依存する部分が大きかった。

実際、槍をかける所が無いと使えず、もどかしい思いをした事が何度もある。

そこで、この壁槍を何処でも使える様にしてみようと考えた。


その為に僕が向かったのは鍛冶屋だ。


「へいらっしゃ...ちっ。なんだ。ラグナの所のガキか。」


以前ラグナさんと共に訪れ、短剣と軽防具を購入した店に来てみたのだが...相変わらず愛想が悪い。

そりゃ成人前の子供が来る所では無いと思うが、別に冷やかしでもなんでもなく、ちゃんと客として来ているのだ。

まずはそれを伝えるところから始めるか。


「こんにちは。今日は武器の加工依頼で来ました。予算はそれなりに余裕があります。」


僕はリロアさんから預かったお小遣いを取り出しながらそう声をかける。


「...ふん。」


ふんって。


「あの...お忙しいですか?」

「いや。...とりあえず聞かせてみろ。」


朝という事もあり、店内には他に客は居ない。

武器の使用感的にこの鍛冶屋さんの腕は悪くないと思うのだが、如何せん愛想の悪さでお客さんを逃しているというのもありそうな話だ。


僕はリザードマンの槍をアイテムボックスから取り出しながら、槍の改良案について話した。


「...なるほどな。中々面白ぇ事を考えるじゃねぇか。」

「ありがとうございます。」


意外にも好感触だ。

物珍しい依頼に興味を持ってくれたのだろうか。


「しっかし...アイテムボックス持ちって事は、戦闘職じゃねぇんだろ?なんでまたこんなもんを...」

「ははは。一応これでも冒険者志望でして。」

「そりゃまぁ前に来た時の買い物で分かるが...」

「向いているかどうかと成りたいかどうかはまた別です。」

「...ふん。生意気な口を聞きやがる。」


この手の職人さんには正直に答えた方が良いと判断して、僕は思っている事をそのまま伝えた。

それが功を奏したのか、鍛冶屋さんはぶっきらぼうながらも親身に話を聞いてくれ、依頼を受けてくれる事になった。


「これくらいの加工なら明日には出来上がってるから取りに来い。」

「分かりました。よろしくお願いします。」


よし。

これで1つ目の備えはクリアだ。


次に向かうのは冒険者ギルド。

そこで2つ目の備えを実行する。



「あれ何やってんだ?」

「さぁな。ついにおかしくなったんじゃないか?」


冒険者ギルドの裏に併設された訓練場。

一心不乱に謎の作業をする僕。

周りの冒険者達には話のタネにされている。


いいさ。

どうせラグナさんにしごかれている時もこんな風に白い目で見られているんだ。

今更気にすることじゃない。


「【水球】【収納】。」


僕がやっているのは、水の初級魔法である水球を、アイテムボックスに貯めていく作業だ。


実のところ魔法というのは、無から生み出すよりも既に在る物を操作する方が魔力効率が良い。


例えば僕の水魔法。

【水球】と唱えることで魔力を水に変え、魔力で形を作り、魔力で飛ばす事が出来るわけだが、既にある水を使うことで最初の工程を省略出来るのだ。


しかし、ただの水を操ろうとすれば、まず水に魔力を流す必要が出てくる。

時間的なラグにもなるし、僕の少ない魔力ではそのコストが勿体ない。


そこで僕は考えた。

予め魔力の籠った水を用意しておけばいいじゃないか、と。

アイテムボックスの特性は、魔力を持った生物は収納出来ないというもの。

逆に言えば、魔力を持っていようが非生物なら収納出来るという事だ。


「【水球】【収納】。」


ちなみに僕の魔力総量では、水球を10回も使えば打ち止めである。

最近はようやく魔力感知や魔力による身体強化を身に付けて来たので、少しでもそちらに魔力を回したい。


「【水球】【収納】...っと。とりあえず今日はこんなもんかな。」


言わばこれは、魔力の貯蓄だ。

アイテムボックスの容量が増えてきた事もあり、1日で満タンにする事は出来ないが...段々と貯蓄していこう。


そしてある程度溜まったら、実験してみたい事もある。

もし上手くいけば...水に強いリザードマン相手でも、それなりにやれるんじゃないかな。


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