表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/40

第23話 潜入準備と木こり業


時刻は15時30分。


アリスガワ夫妻と別れた後、僕は情報収集をして回った。


クルムが居る場所、その時間。

護衛の数。

障害になりそうな教会関係者。

教会に忍び込むにあたって必要そうなモノ。


それらの情報の聞き込みと下調べを入念に行っていく。


クルムは今や一躍時の人だ。

グリムバル王国唯一の聖女として、その一挙手一投足が注目され、噂になっている。

そのおかげで、聞き込みはとても順調に進んだ。


ダンジョンへ祝福を鍛えに行ったり、貴族への顔見せに行ったりと外出する機会自体はそれなりに多いが、大抵18時過ぎには教会東聖堂に帰って来ているらしい。


その際に連れ立っている護衛は、平常時で聖騎士が4人。

男性3人に女性1人という構成だそうだ。


女神聖騎士団に所属する騎士は、そのほとんどが男性だが、女性のみで構成されている隊もあるとの事。

クルムに付いている女性騎士も、そこから抜粋された者なのではないかと噂されていた。

男性では立ち入れない場所での護衛要員としてだろう。


ならば全員女性騎士で固めれば良いではないか、と思わなくもないが、そこは恐らく戦力を優先したものと思われる。

実際、男性3人の内2人は、女神聖騎士団ウルハリア隊の隊長と副隊長だと言う。

いかに聖女が重要視されているのか分かるというものだ。


彼ら護衛は東聖堂に部屋を作り、常にそこで寝泊まりしているそうだ。


この時点で僕は、聖堂への侵入を諦めた。


女神聖騎士団なんて、エリート中のエリートだ。

その中で隊長格を務める様な化け物が居るのに、侵入なんて出来るわけが無い。

もしそれが可能なのだとすれば、他国の間者などが聖女の暗殺を成功させてしまえるという事になる。


ならばダンジョンに出かけた時に接触を図るか、とも考えたのだが、こちらはもっと難しい。

クルムには平常時で4人の護衛が付いているわけだが、ダンジョンアタックの際にはその3倍もの人員が動員されるとの事。

不用意に近付こうものなら魔物と一緒に斬り捨てられてもおかしくない。


そんな具合で消去法的にあらゆる策を考えては消していった。


結果、最後に残ったのは、()()()()()()()()()方策だった。



先程も言ったが、聖女の命を狙う可能性があるとすれば他国の者...あるいはウルハリアには居ない他宗教団体。

そして聖女が現れたという情報が出回ってから、まだ半月程しか経っていない。

当然、護衛達が考える仮想敵は、速成戦力である()()だ。


少年兵を練成するには時間が足りず、ウルハリアは豊かな地である為、子供の刺客となると現地調達など出来るはずもない。

その隙間を狙う。


聖女の基本業務として組み込まれているものの中に、孤児院への訪問というものがある。

まだ10歳の子供であるクルムが聖女として訪れる事で、歳の近い子供たちに大層喜ばれているそうだ。


直近での孤児院訪問は明後日に行われるらしい。

僕が狙うのはそこ。


護衛達の仮想敵として浮かばない子供としての立場を遺憾無く発揮し、クルムへの接触を図る。


「そうと決まれば準備だ。」


元々休みの間は自主訓練を行うつもりだったが、明日は少し足を伸ばしてみよう。

今日のところは冒険者ギルドに寄って必要な情報を集め、(ラグナさん)の居ぬ間にリロアさんと2人の時間を満喫しようと思う。


あ、もちろんその後で自主訓練もする。

最近はこれをやらないと寝れなくなってしまったから。




――――――――――





休み2日目。


昨夜は訓練を早めに切り上げた。

今朝早く起きて出かけるためだ。


朝食を摂り、リロアさんが作ってくれた弁当を持ったら準備完了。

昨日の内に冒険者ギルドにて調べた狩場へと向かう。


今日の目標は2つ。

【捕食】によるスキルの確保と、偽装工作だ。


まずスキルの方だが、これはなにもラグナさんの言いつけを忘れた訳ではない。

無闇にスキルを増やし、選択肢を増やしてしまうと、結果的に戦闘力が上がらないという考えは変わっていない。

だが、戦闘以外で使用するスキルは別だ。


明日クルムに会うために孤児院へと潜入する必要があるわけだが、その際に必要なスキルのアテがあるのだ。


目標はズバリ、ドッペルゲンガーという魔物が持つスキル【変身】だ。


【変身】。

自身の身体を形状変化させる。但し、身体全体の体積は変えられない。


このスキルを得れば、孤児院への潜入に大いに役立つだろう。


僕の顔は教会関係者に割れている。

クルムの孤児院訪問には僕の顔を知る者が同行するか分からないが、念には念をという事でこのスキルは是非とも手に入れておきたい。


ちなみにこのスキルの存在は以前から知っていた。

前世で習得した事があるのだ。


前世で覚えたスキルを現世に引きつければ良かったのだが...何故か初期化されてしまったんだよな。



そんなわけでやって来たのは【濃霧の樹海】という狩場だ。

街から1時間程の位置にある。


魔軍進行(スタンピード)を起こした事により、ダンジョンコアを破壊されたダンジョンの跡地なのだが、自然発生で生まれた魔物などが住み着いており、薬草などの資源が採れる為に未だ冒険者が訪れる地だ。


現在はダンジョン扱いされていないので、冒険者資格を持たない僕でも立ち入ることが出来るという点も有難い。


冒険者ギルドで聞き込みをしたところ、この地にはドッペルゲンガーが現れるらしいのだ。

その他にも人を惑わすタイプの魔物が現れる為注意が必要との事だった。


「...ほんとに視界が悪いな。」


森の中は濃密な霧が立ち込めており、鬱蒼と茂る木々も相まって視界が悪い。

木の葉が陽の光を遮っているため、朝方だというのに薄暗いのも厄介だ。


「【鑑定】。」


ただ魔物を探すというのもなんなので、僕は【大商人】のスキル【鑑定】を行使しながら森を進む。


「うーんと...あ。あった。」


適当に散策しつつ鑑定を行っていると、薬の材料になる植物が見付かった。

滋養黄草。

止血花。

エネコロ草。

それらを見つける度にアイテムボックスへと収納していく。


「...おぉ。」


暫く散策していると、とある樹木に目が止まった。


一見するとただの木なのだが、鑑定によってそれが魔物だと判明する。


樹人(トレント)】。

樹木に擬態し、近付いてきた生物を襲う。

殺した生物を栄養へと変える為に、自らの根元に死体を置く。


確かゴブリンやスケルトンと同じ、Eランクの魔物だ。

擬態は厄介ではあるものの戦闘力は低く、その性質から擬態自体は見破れなくとも木の根元を見ることで判別出来る場合が多いという。


よく見てみると木の根元に鳥やリスの死骸が転がっている。

ほとんど骨だけになってはいるが、あれがトレントの餌食になった生き物の成れの果てなのだろう。


「よし。」


迂回して進むという手もあるが、祝福の強化の為...そして何より経験の為に戦おう。


僕は腰に履いた短剣を抜き、ゆっくりと近付く。


どこまで近付けば動き出すのか分からないので、慎重に歩を進める。


「...む。」


意外と動かないな。


もう僕の間合いの中まで近付いてしまった。

少し自分の鑑定に自信が持てなくなったが、不安を振り切り、短剣を振るってみる。


「うりゃ!」


ザクッ。

短剣が木の表面を抉ると...


「...ォォオオォオオッ!」


薄気味悪い叫びを上げ、トレントが動き出した。


ミキミキミキっと音を立て、地面から根が這い出す。

枝葉が触手のように伸びてくるので、一部を短剣で切りつけながら後退する。

伸びてくる速度はそれほど早くないので、余程油断していなければまず捕まらないだろう。


「口も無いのにどうやって叫んでるんだ。」


口どころか目も無い。

何かしらの手段を持ってこちらを認識しているのだろう...。


恐らく【魔力感知】だな。


魔力感知はスキルではなく、魔力操作による技能の1つだ。

僕も訓練によって拙いながらも使う事が出来る。


習熟すると相手の魔力量を測ったり、祝福の成長度合いなども見る抜けるようになるそうだ。


まぁそれだけだと声を出せる理由は分からないが...そんなことを考えている場合では無いな。


Eランクの魔物は、武器を持った大人なら倒せる程度の脅威度ではある。

しかしそれは、適切な武器を、だ。


トレントに適した武器となると、斧や鉈といった木の伐採に向いているものが必要になるだろう。


僕の短剣ではあまり相性は良くないし、祝福による膂力の強化もまだまだ充分とは言えないが...


「まぁなんとかなるかな。」


とりあえず攻撃を躱しながら、同じところを何度も斬り付けてみよう。

これでも一時期は木こりを目指していたんだ。

多少動こうが、木の1本くらい伐採してみせないとガイムさんに呆れられてしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ