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第22話 思わぬ再会


「...なんか、すごい久しぶりな気がする。」


プレゼントの購入を済ませた僕は、今日の目的地である教会を訪れていた。


美しいステンドグラスが光を反射し、天を突くかのように聳える屋根は、教会の権威を知らしめるかのような威容だ。


ライフィリア教会ウルハリア支部東聖堂。

この街に5棟ある聖堂の内の1つがここだ。


ほんの半月ぶりに訪れたというのに、僕は何だかとても懐かしい気持ちになった。


前回ここに来た時には色々あったな。


そんな風に感傷に浸っていると、教会の前で少し騒ぎになっているのに気が付いた。


「だから!会わせられないって言われても納得出来ないって言ってるでしょう!」

「そう仰られても...」

「せめて...ひと目会わせてもらえないだろうか。娘の心配をする親の気持ち、貴方も分かるだろう?」

「聖女様の事なら心配は要りません。昨日もそうお話したはずですが。」


神父さんと2人の男女が言い争いをしている。

その周りに数人の野次馬が居り、ヒソヒソと噂話をしていた。


何の騒ぎだろう。

僕の目的であるクルム...つまり聖女の話が出ていた。

無関係ということも無いだろうし、クルムに会うためには情報収集も必要だ、という事で、僕は彼らの元に近ずいていく。


すると...


「...え。ガイムさんとアリアさん?」


神父さんに詰め寄っている2人は、クルムの両親...アリスガワ夫妻だった。


「ん?...って、リク君!?」

「リク!お前無事だったか!...あ、ちょっと待ってくれ!まだ話は...」


2人が僕に気を取られた隙に、神父さんは教会内に引っ込んでしまった。


「なんかすみません。邪魔をしてしまったみたいで。」

「いや...どうせこのままゴネても無駄だっただろう。...リク、少し話せるか?」

「はい。僕もお話したかったです。」


こんな所では落ち着いて話せない、という事で、僕達は近くの食堂に移動することになった。


ちょうど昼時だし、腰を据えてゆっくりと話をしよう。

話したい事は山ほどある。




――――――――――




「そうか。手紙では聞いていたが...中々大変な生活をしているんだな。」

「何となく身体付きが変わった気がするものね。」

「ですかね。」


以前ラグナさん達と来たことのあるお店に入り、アリスガワ夫妻にここ半月程の生活の話をした。


話の大半はラグナさんとの地獄の日々だった為、同情の目を向けられている。


「まぁ目標の為なのでどうにかやれています。」

「...そうか。身体に気を付けてな、って言うのも変かも知れないが、なんだその...」

「辛くなったらいつでも帰って来ていいのよ?部屋は空けておくからね。」

「ありがとう...ございます。」


洗礼の為にイガラシ村を出てそれっきりになってしまったにも関わらず、2人は優しい言葉をかけてくれる。

僕がした不義理など、まるで無かったかのように。


それが無性に申し訳なくなり、そして有難かった。


「お2人はクルムに会いに?」

「...ああ。昨日からウルハリアに来ているのだが、一向に会わせてもらえないんだ。」

「酷いわよね!『聖女様はお忙しいので』の一点張りなの!」

「聖女である前に、俺たちの娘なんだがな。」


2人の顔には怒りの感情が全面に出ている。

それはそうだ。

聞けば、教会関係者がアリスガワ邸に出向いて来て、「聖女様は教会にてお預かりし、職務に必要な教育を受けてもらいます。」などと説明していったそうだが、洗礼後一度も家に返すことも無く一方的にそんな報告をされたところで納得など出来ないだろう。


しかし、こうして2人が教会を訪ねて来ても尚会わせないとなると...少々違和感がある。


「クルムは...大丈夫でしょうか。」


不安がつい口から出てしまった。


「......。」

「......あ。」


今のはマズかった。

1番心配しているのは2人だろうに。


何か言わなくてはと口を開こうとすると、それより先にアリアさんが声をあげる。


「本当はね。すごく心配だったの...。」

「だった?」

「うん。すごい祝福を得られたのに、自由を奪われるなんて...あの子にとっては生殺しみたいなものでしょ?」


それは間違いない。

昔から落ち着きのない子だった。

その上今は冒険者になりたいと言っているんだ。

冒険者として活躍出来るような祝福を得ながら、一生を教会の象徴として過ごすなんて生殺し以外の何物でもないだろう。


「でもリク君を見てたら、なんだか少し安心したわ。」


アリアさんは目元には不安を残しつつも、口元で笑みを作りながらそう言ってくれた。


「手紙で『クルムを攫って冒険者にする』って言われた時はそんな無茶な、と思ったけどな。今のお前を見ていたらやってくれそうな気がしてきたよ。」


ガイムさんは僕の肩に手を置いてそう言う。


そうか。

ラグナさんとの地獄の日々は決して無駄じゃなかったのか。

まだまだ未熟な僕だけれど、2人に少しでも安心を与えることが出来たのなら良かった。


「不思議よね。冒険者なんて危ない仕事、反対だったのに...。本来なら聖女として教会で安全に暮らしてくれる方が嬉しいはずなのに、ね。...ふふ。これも"血"かしらね。」

「...アリア。」

「分かってるわよ。この話は成人してから、でしょ?」


なんの話しだろう?

血?


「ところでリクはどうして教会に?やはりクルムに会うためか?」

「はい。ですがお2人でさえ通してもらえないとすると...」


かなり厳しいだろう。

そもそも僕は洗礼の時に教会からつまみ出されている。

顔を覚えられているかは分からないが、どの道素直に合わせてくれるとは思えない。


「最悪、忍び込みます。」

「お、おぉ。」

「いいわね!やっちゃいなさい!」


ガイムさんは引き、アリアさんは囃し立てる。

こうやって見ると、クルムはアリアさん似だよなぁ。


「もしクルムに会えたら、これを渡して貰える?」

「これは...?」


アリアさんに渡されたのはペンダントだった。

クルムの髪と同じ、綺麗な水色の宝石が付いている。

ウルハリアで購入した物だろうか。


「それはアリスガワ家に伝わる家宝だ。本当は成人してから渡すつもりだったが...もしかするとその機会も無いかも知れないからな。」


家宝、か。

そんなものを預かってしまって良かったのだろうか。

クルムに会えるかも分からないのに...。


いや、最悪でも15歳になった時には会いに行くのだ。

早いか遅いかの違いだな。


「分かりました。必ず届けます。...それに、クルムを攫ったあとは里帰りもしますので。」

「...ああ。クルムをよろしく頼んだ。」

「リクくん、よろしくね。」


僕はペンダントをアイテムボックスに仕舞う。


クルムに会いに行く理由が増えてしまったな。


僕は2人に別れを告げ、まずは情報収集をすべく街に繰り出した。

進みが遅くてすみません。

早く会って欲しい気持ちはあります。

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