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第14話 身体作り


ラグナさんから指示された自主訓練は、木剣の素振り、筋トレ、走り込み、の3つだった。

まずは身体作りという事だろう。


この3つを順番に行い、気を失うまでやり続ける事。

それだけ言うと彼は家に戻って行った。


「よし。」


僕は一先ずラグナさんに手本を見せてもらった通り、木剣を振る。

身長の半分程の長さの木剣を真っ直ぐに構え、上に振り上げ、振り下ろす。

これだけだ。


これを100回で一区切りとする。


「...98...99...100。」


結構しんどい。


昼の訓練(暴行)の傷は癒えているとはいえ、消耗した体力は戻っていない。

白魔法による治癒では体力まで戻せないらしい。


聖女の使う【聖魔法】には体力ごと回復させる魔法もあるようだが...。


「次!」


変なことを考えて気を落とす前に身体を動かそう。

次は筋トレだ。


腕立て伏せ、腹筋、スクワットなどなど...それぞれ100回ずつ行ない、最後に柔軟をして一区切り。


それが終わったら走り込みだ。


ラグナさんの家は広い庭がある。

その庭をぐるぐると走り回るだけの単純な訓練だ。

20周を一区切りにしろと言われている。


「......。」


やってる事が地味な分、頭が回ってしまう。

今考えるべきではない事が次々と思い浮かぶ。


アリアさんは怒っているだろうか。

ガイムさんは心配しているだろうか。

クルムは酷い扱いを受けていないだろうか。

5年間もこんな事を考えながら過ごせるだろうか。


そんな考えが頭の中に広がり続ける。


「.....くそ。」


ダメだ。

現実を受け止めなくては。


僕はクルムの傍に居られるだけの優秀な祝福を引けなかった。

アリスガワ夫妻を認めさせるに足る祝福すら引けなかった。


でもやる。

冒険者になって、クルムを迎えに行く。


その為に出来ることを、今やっているんだ。


雑念を振り払い、走る速度を上げていく。




――――――――――




分が悪い賭けだ。

我ながらそう思う。


聖金(ミスリル)級に上がれないと分かって気落ちしていたのもあるだろう。

そこに降って湧いた【聖女】という存在に飛び付いてしまった。


聖女ならば聖金級に上がる資格がある。

聖金級ならSランクダンジョン【世界樹】に挑む権利が得られる。

世界樹を攻略出来れば【黄金の果実】を手に入れる事が出来る。

黄金の果実さえ手に入れば...


「...ハッ。」


そんなに上手くいくわけがねぇ。

思わず笑っちまった。


でも、万に一つでも可能性があるなら、試さない選択肢なんて無い。



月に1度【時抗魔の魔眼】を取りに行き続ければ、最低でも10年は持つんだ。

ガキ共に5年くらい賭けてみたっていいだろう。


その間に他に出来ることがあれば何でも試す。


いよいよダメなら冒険者資格を剥奪されようが、俺が世界樹に挑む。


だから大丈夫だ。

どんなに最悪でも、最悪の事態にはならない。


「......。」


朝からうだうだ考えちまった。


「...つか、起こしに来ねえな。」


2日目にしてサボりか?

師匠を起こすのも弟子の務めだろうが。


俺はベッドから身体を起こす。


起き抜けに俺の嫌いな考え事をしてしまって気が滅入った。

2日目からサボる根性無しの弟子でもイジメて気を紛らわすとしよう。


ノロノロと部屋から出た俺は、リクの部屋の扉を強く叩く。


「おいザコ弟子!なんで起こしに来ねぇ!今日はクエストも受けるって言ってあっただろうが!」


ドンドンドン!

扉を叩きながら呼びかけても返事が無い。


昨日あれだけ身体に教えこんでやったんだ。

寝てようが俺の声には反応すると思うんだが...。


もしかしたら既に起きていて、1階でリロアと一緒に朝飯を食ってるのか?

だとしたら許せねぇ。

10歳のガキだろうが男だ。

リロアと2人きりで飯を食った男は全員殺すと決めている。


俺は足早に1階へと降りていった。


「あら?今日は早いのね。」

「おはようリロア。今日も可愛いな。」

「ふふ。ありがとう。」


うむ。

とりあえず2人で飯を食っているという事は無かった。


にしても今日もリロアは天使だ。

リロアの顔を見ただけで俺の機嫌は回復した。


「リクはどうした?」

「え?リク君はまだ降りて来てないわよ?」

「...は?」


あんだけ声をかけて起きなかったのか?

だとしたらまだまだ教育が足りて...



いや。


まさか、な。


「ちょ、ちょっと?どうしたの?」


俺はリロアに返事もせず、庭へと走った。


裏口の扉を開け、塀に囲われた庭へと飛び出る。


「......はは。マジかよコイツ。」


そこにはリクが倒れていた。


うつ伏せに倒れたリクの手には、血まみれの木剣が握られている。


庭の下草は踏み散らされ、走っていた場所や素振りをしていた場所がひと目で分かる程だった。


「ほんとに気絶するまでやる奴があるか。」


適当な所で切り上げろよ。

っていうか普通、こんな有様になる前にやめるだろう。


「ラグナ〜?どうしたの...って、リク君!?」

「大丈夫。寝てるだけだ。」

「寝てるだけって...まさかアレからずっと?」

「...ああ。本当に気を失うまで訓練してたらしい。」


こいつは飛びっきりのバカだ。

だがこういうバカは嫌いじゃねぇ。


もしかしたらコイツなら...

そう思わされたのがなんとなく悔しくて、俺はリクの後頭部を叩いた。


「ンがっ!」

「起きろザコ弟子。朝飯の時間だ。」

「...ん。...ラグナ、さん?あれ...僕寝てました?」

「おう。サボった分今日の訓練は割増だな。」

「ひぃっ!...が、がんばります。」


これ以上どうやって頑張んだよ。

と思ったが、声には出さなかった。


「ったく。さっさとシャワー浴びて来い。」

「その前に治療からね。まったく...昔の誰かさんを見てるみたい。」


呆れながらリクに魔法をかけるリロアに目配せして、俺は一足先に家に戻った。


これは今日の訓練からより一層気合いを入れねぇとな。

半端な事しちまったら、こいつに失礼になっちまう。



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