第9話 それぞれの祝福
どうしよう。
なんか凄いことになっちゃった。
そりゃ冒険者を目指す以上、戦闘職...出来ればレア職が欲しいな〜とは思ったけどさ。
「...つまり貴方は女神の寵愛を受けたお方なのです!」
【聖女】っていう祝福は、レア職の中でも更に特別らしい。
別室に案内された私は、神父とシスターからいかに聖女が素晴らしい祝福なのかという話を長々と聞かされている。
世界に3人しか居ないとか、約50年前に魔王を討伐した勇者パーティに参加していたとか、聖女が行使するスキルでしか治せない病があるとか...。
戦闘能力もそれなりに高いらしいので、この祝福自体に不満があるわけじゃないんだけど、この人達の目がなんだか怖くて...何となく不安な気持ちになってくる。
扉の外ではまだ洗礼の儀式が続いていて、漏れ聞こえてくる喧騒がなんだか別の世界のもののように感じた。
リク、どうなったかな。
良い戦闘職貰えたかな。
早く一緒に冒険したいな。
そんな事を考えていると...
「失礼します。聖女様のご友人という方が来ているのですが...」
扉を開けて入って来たシスターさんがリクを連れてきてくれた。
「リク!」
「クルム。ごめん、どの部屋か分からくて探してたら遅くなっちゃった。」
「ほんとよ!おかげで...」
長話を聞かされた、と言いそうになってすんでのところで踏みとどまる。
「聖女様のご友人ですか。...ちなみにどのような祝福を?」
私に延々と聖女のアレコレを語っていた神父が、リクの顔を見るなりそんな事を言う。
その表情はなんだか...感じが悪い。
「...リク。祝福は何だったの?」
この質問は私が最初にしたかった。
そんな思いも込めて、神父と同じ言葉を割り込むように口にした。
リクは、バツが悪そうな顔で答える。
「......【大商人】っていう祝福だったよ。」
「え。」
技能職だ。
そっか。
戦闘職じゃなかったんだ。
パパとママとの約束で、戦闘職じゃなかったら冒険者に成る事を認めて貰えない。
それが無くても非戦闘職で冒険者になるのは正直かなり厳しいらしいし...。
どうしたらいいんだろう。
どうしたら...一緒に冒険者に成れるんだろう。
私は頭の中で考えを巡らせ、すぐにリアクションが取れなかった。
そんな私の様子に気が付いているのかいないのか、神父が口を開く。
「【商人】や【運び屋】が多い家系に稀に生まれる祝福ですね。珍しい祝福ではありますが...聖女様とは一緒に居ない方がいいでしょう。」
「なッ!?」
何を勝手な事を。
私が誰と一緒に居るかは私が決める事だ。
「......。」
しかし、リクは私と神父を交互に見るだけで口を噤んでしまった。
「か、勝手な事言わないでよ!私はリクと冒険者になるの!」
「聖女様。それはなりません。この国、【グリムバル王国】には現在、聖女の祝福を持つ者が他に居りません。貴方様にはライフィリア教会で聖女様としての役割を果たしていただきます。」
なんて勝手な。
生まれてこの方、ここまでの理不尽を言われたことがない。
「親御さんには私供の方でご説明に伺います。聖女様は早速今日から教会で生活していただき、最低限の教養が身につき次第王都に在る大聖堂にて働いていただきたく思います。」
「お、思います...って。」
この人が何を言っているのか分からない。
意味が分からない訳じゃなくて、なぜ私の意見を全く聞いてくれないのかが分からない。
「リク...っ!」
「クルム...僕は...」
「その少年にはお帰りいただいてください。...少年。君と聖女様では住む世界が違います。どうぞお独りで冒険者なりなんなり目指してください。」
言葉が終わる前に、シスター達はリクを引っ張っていって部屋から退出させてしまった。
これから私はどうなるの?
冒険者になる夢は?
パパとママにはもう会えないの?
リクとも会えないの?
聖女としてやりたくもない仕事をし続けるの?
怖い。
自分の意思を一切尊重してくれない大人達が怖い。
世の中にこんな大人が居るなんて...
前世を含めても初めての経験だった。




