5.三通目
交換ノートを始めた時のこと、覚えているかしら? 初めて出逢った時の場所で不安げな表情を浮かべながら、ノートを持って待っていた貴女。
それをいきなり渡された私は、それは驚いたのよ。私たち、初めのうちあまり仲良くしなかったから、貴女はずっと想っていてくれたのに……。
今回のお手紙にはあの時の交換ノートを同封したわ。私はこれで想いかえすことができたのだけれど、貴女は忘れてしまいそうなんですもの。
だってね、マリーちゃん……いつかの手紙で私は、記憶の中の貴女が成長を止めてしまったと書いたのだけれど、それは貴女も同じだから、成長することを止めた私は、もう貴女の中にはいないのかもしれないと考えてしまう。
貴女の抜け殻の、あの子の服を縫ってあげている時、ドジをして針で指を刺してしまったの。
小さく膨れ上がった血のたまりは赤黒かった。ぼんやりと見つめつつも感じる痛痒さが、私の心をこの手紙が書けるまで、落ち着かせてくれた。
交換ノートの最後の部分を読むたびに心が張り裂けて、もう繋ぎ合わせることなど出来ないという、言いようの無い恐怖に支配される。
私よりも貴女の方が何よりも怖かったでしょうけど、けれども私はここにいて、こうして貴女に手紙を送り続けている。
だから今こそ、読み返してほしいわ。そして、また逢いましょう。もう離れてしまわないように、抱き締めてあげるから。
それでは、お返事を待っています。
貴女の麻里衣より。