再戦
初撃でレーミアを蹴り落とした魔王―ライラの瞳は、しかし凪いでいた。
「〈ヨーランよ〉」思念伝達魔法を使う。「〈あの娘は戻ってくる、再び、我に挑みに。その様子を人間たちに観せるようにしてくれ〉」
「〈...かしこまりました、魔王様〉」
戻ってきたレーミアの姿にライラは内心、当然という態度をしていた。
―我の一撃では死なぬだろう...。
一方、レーミアは思考していた。
氷ではおそらく、防がれる...。ならば。
動いた。ぐるりに大きく魔法陣を描く。指をパチン!と鳴らす。
四方八方からの雷撃。それらをライラは翼の一振りで跳ね返す。
が、レーミアもそれは予想していた。
「氷鏡」
顕現した氷鏡が更に雷撃を跳ね返す。
その合間に呪文を詠唱する。
「雷槍」
手元に現れた雷の槍で、ライラを狙う。
槍とライラの角がぶつかる度に、小さな稲光が爆ぜた。
「では、こちらも」
ライラが呪文を詠唱した。
四つ足の蹄に炎がまとわりつく。
ごぉ、っと、炎が噴き出すように、レーミアを狙い来る。
強力だ。
レーミアは舌打ちし、一旦、身体を離した。
―考えろ。
自分に言い聞かせる。
氷が駄目なら...。
「ほぅ」
ライラが声をあげた。
よもや城内で雨に打たれようとは。
魔力の雨は、炎を掻き消す。
更に。集束し、鉄砲水のように襲いかかってきた。
勢いがある。ライラは下がろうとした。と。
「やはり、〈水〉は苦手か?」
囁く声が聞こえた。いつの間にか、レーミアが隣にいた。
「喰らえ」
心臓を確実に狙う一撃、既で躱した。
表面の皮膚が切り裂かれ、血が飛ぶ。
その戦いの様子を、見張りが展開した映像魔法で、奴隷の人々が見守っていた。
「〈聖女様〉...」
自然と祈るような姿に、人々はなっていた。