8話 バズが狙える青い春
「せ、世界を洗う……?」
「うん、キミにしかできないこと。だってさ、キミは魔――」
「おい、何してらんだー! 屋上は立入禁止でねが!」
「そ、その声……!」
突然2人の会話を遮るように怒鳴り込んできた男の声。鬼のような大きな体に金棒のように握られた指差し棒。そう、鬼川先生である。
オレはなんとか弁明しようとするが、鬼川は何やら騒ぎが起きているから指示に従えと無理やりオレ達を引っ張って行ってしまった。どうやら何者かがこの高校に襲撃してきたこと、そして全国の学校で立て続けに同じようなことが起こっているとして緊急の会議が行われているらしい。
入学式はひとまずマイク放送で行うからトイレ以外は教室から一歩も出るなと念を押されてしまった。既に倒したんだけどな、アシナガなんとかって敵。
教室内は皆あのアシナガデイムの話で持ちきりだ。どうやらSNSを開くと各地の生徒が不審者襲撃の動画ばかり流れてくるらしい。オレもカーテンに隠れながらこっそり掲示板にアクセスしてみると、それに関するものと思わしきスレッドが乱立していた。
「……まさか転移ってこんなに大変なことなんてなぁ」
「オイオイ、何一人でカーテンに包まってんのっ!」
「えっ、いや先生違います、緊急で親から連絡が来て!」
「だーいじょうぶ、大丈夫! オレ先生じゃなくてクラスメイト! ほら見てごらん」
見知らぬ男がかなりフランクにオレに話しかけてきた。だが、きっとこいつは悪意を隠し持って絡みに来ているとオレは感じた……が、今のオレにはものすごい力があるんだぞ、やれるもんならやってみるとオレはカーテンをバサッとなびかせ振り向いた。
「……誰? 同じクラスだよ……ね?」
「そうそう、同じ3組! しかもキミさっきさ、戦ってたよね!? オレ、昔見てたヒーロー番組思い出してテンション上がっちゃったよ! ところで名前、何ていうのさ」
「オレ? オレは奥川。奥川コウです」
「オレは木南フウマ。フウマって呼んでくれよ」
「えっあっ、よろしくお願いします、木南くん」
「もー照れてんじゃねえよ、よろしくな」
木南くんはかなりフレンドリーだ。転移前は何度か話したことはあるが、別に友達ということもなかった。「2周目」は友達たくさん、できるといいな。
オレが物思いにふけっていると、嬉しそうに木南くんはスマホを見せてきた。彼女でももう作ったのか、オレはその画面をちらっと見てみると……そこには思いもしない写真が映っていた。
「こ、これさっきオレが戦ってたやつ! 撮ってたの!?」
「そう! やっぱ何歳になっても燃えるよな、こういう戦い見るのって! それにさ、横のコメント……オレも能力者かもしれねぇ、やべぇ!」
「の、能力?」
オレは混乱した。世界の転移によって変化が起きたことを皆はまだ知らないはずだ。にも関わらず木南くんはコメントを能力だと言ったのだ。
確かに写真には「逃げるべき」とか「あの人もしかしてヒーロー?」とかコメントっぽい文字が貼られてあったが……あれはただスマホで編集しただけではないのか? オレは詳しく聞いてみることにした。
「今言ってた、能力ってどういうこと?」
「あぁこれ? 何かさ、さっき興奮してカメラ向けたらさ、まるで生配信でもしてるみたいにコメントがずらあああああって流れてきたんだよ! そのまま何となく写真に残したらこうなった、すごくね!?」
「お、おぉ……」
よくよく考えれば当たり前だ、世界まるごと転移したのであれば、皆も何かしらの能力を有していてもおかしくない。
転移後無双の夢は、儚く散った……
「だからさ、もしさっきみたいな敵が現れたらオレも混ぜてよ! 一緒にクラス、守ろうぜっ!」
「わあっ! あ、ありがとう……」
木南くんは屈託のない笑顔を見せてくれた。どうやら仲間が1人、パーティに参加してくれたようだ。よろしくお願いします、木南くん。




