5話 1年3組 地獄のゲート
エミナに連れられて向かった先は1年3組、オレ達の新たな教室だ。
オレは普通にそのドアを開けようとすると、それを止めるようにエミナは手首を掴んできた。
「なななななな、何っ!?」
動揺するオレの目をじっと見て、エミナはまるで小さい子どもに問いかけるように話す。
「いい? ここを開ければキミはもう戦場で戦うことになる。これから教室に強盗やテロリストが沢山攻めてくるし、登下校中に魔物が現れることもしばしば。それに勉強や実技について行けないことは本当の意味で命取りになる。だってそれらが魔法や必殺技になるからね。別に今なら引き返せるけど……」
エミナの目はまっすぐオレの方を見ている。エミナはオレをからかってなんかいない、これはゲームでよくある「戦闘前の準備催促」のようなものだろう。
オレは運動は苦手だけど、勉強は人並みにはできる。もし勉学が魔法などの技術に置き換わるのであれば、オレはある程度戦える!
「……うん。オレはいけるさ」
「そっか……。じゃあ、一緒に生き残ろうね」
教室のドアを開くと、春風と陽光がオレ達を包んだ。
その景色は意外と普通だ。皆、新しいステージに立って緊張している、まさに新入生といった感じだ。
やんちゃそうな見た目の生徒もひとまず今日は制服をちゃんと着ているし、ギャルっぽい生徒もスカートの丈をかなり短くはしていない。
「私達、名字の関係で席は離れるけど、まだ世界の転移のことは言わないでね。そのうちニュースにはなるだろうけど……まだ、皆このことは知らないから」
「うん……よく分かんないけど、今は黙っておくよ」
オレ達は指切りを交わし、お互いの席に座って担任の先生が来るのを待つことにした。
皆は今日からの学校生活を楽しもうとしている。もちろんオレもそうしたい。だが、コミュ力がどうこう以前に気になることがある。
それはエミナの「勉強や実技について行けないことは本当の意味で命取りになる」という言葉だ。確かに、高校では赤点なるものが存在するし、成績が悪すぎると卒業できないなんてこともある。だが、エミナが言っているのはきっとそのようなことではない。
RPGで弱いキャラが敵の攻撃で死ぬような、そういう意味なのだろう。和気あいあいとする教室の中で、オレとエミナだけが目の色を変えている。
そんな時だった。スマホにニュースの速報が立て続けに入ってきた。
「牛本県の高校生30人 黒服の犯人により無差別的に襲われ重軽傷 犯人逃走か」
「梅雨田県の高校 突如黒服の犯人が立てこもり」
「日本全国で魔法のような現象を確認 不要の外出を控えて」
「……これってまさか」
オレは慌ててエミナの方を見る。するとエミナはこちらを見ながらゆっくりと、首を縦に振った。
そしてその嫌な予感は最悪の形で的中した。オレの真横の窓ガラスが割れ、そこには黒服に身を包んだ何者かが立っていた。




