4話 過ち
「キミさ、思い出して。4444歩目で倒れた時のこと」
「倒れた? う、うん……そういえば鬼川先生に追いかけられて、意識失って――」
「その時のこと! 本落とさなかった?地面に!」
「地面に……?」
オレは怪しい本を見る。すると、確かに少し砂のようなもので表紙が汚れているし、恐らくオレが上から覆いかぶさってできたであろう折り目がつくられていた。
「落としたら……まずかった?」
「そりゃそうでしょ! この本のこと思い出してよ、文章をしっかりと!」
「え、うん……達成時にこの本に触れていたものが異世界に召喚されるとか……なんとか……」
「そうよ、それ!」
「うわっ!」
美少女はオレの本を取り上げ、その部分を見せつけながらものすごい剣幕で怒る。
「この触れていた《《もの》》ってのは! 「者」でもあるし「物」でもあるの! キミが本を落としさえしなかったらキミだけをこっちに呼べたのに……落としちゃうから……」
「それってつまり……」
「そう! この世界が異世界に転移したってこと!」
保健室に怒号が響き渡る。だが、その言葉の意味をオレは全く理解できない。世界が異世界に行く、哲学か何かか? 全くその意味を察することができないオレに美少女はついに呆れ果て、メモ帳とペンを取り出して図表付きで説明を始めた。
「いい? 本来はキミだけがこっちに来る予定だったのに、キミが地面ごと転移しようとするものだからバクが起こったの!」
「バ、バグ……」
「つまり君がいた世界と、私がいた世界がごちゃまぜになった、分かりやすく言うなら……君の7,80億人が住んでいる世界自体が丸っきり! 異世界になったってこと!」
「えーっ! それじゃあ大変なん……だよね?」
「そりゃそうよ! 本来は君にヒーローになってもらうつもりだったのに……せっかく“適合モノ”を見つけたのに……」
「て、てきごーモノ……いきなり意味不なワードが並ぶ……」
「……キミ、奥川コウだよね? 私は柚野エミナ。キミのクラ――」
「し、知ってるよ! いつも同じクラスだったじゃん」
ん? やっぱりクラスのあのコはアイリではなくエミナ? それより、クラスの人気者とこんなに会話できるなんて! まさかハーレム作れる的なスキルが身についたのか、オレには……!?
ついニヤニヤしてしまったオレの顔を見て引きながらエミナは話を続ける。
「……最後まで聞いて。私は異世界から来たの。だからキミが今ハーレム作るとか考えてるって分かるのよ。スキルによってね」
「え、ごめんなさい……」
「それに、キミと私は今日からクラスメイトになるの。新入生としてね」
「し、新入生!?」
オレはあわててスマホを取り出し日付を確認する。今日は4月27日、入学から3週間あまり経った日のはずだ……え?
「4月、2日……?」
「……まぁ、そうよ。後で話すけど、この過ちはちゃーーーんと! キミに責任持ってもらうから」
「うん……」
ああ、大変なことになりそうだ……。
思ってた異世界転移と、全然違うじゃんか……。




