3話 こんちゃーす、異世界?
「うーん……今の時刻は……30分寝てたのか」
「あらー、奥川君大丈夫? お腹は痛くない?」
「お、小田先生……ありがとうございます、もう大丈夫です」
オレは気付けば眠っていたようだ、そして数学の先生には体調不良と連絡してくれたらしい。これで何なく転移を再開できる。
ベッドから降りて保健室を出たオレは再び歩数稼ぎを開始した。少し休んだからか、体力もかなり回復したようだ。
「さて、今すぐ迎えに行くからね異世界……オレがスキルで無双して、ハーレム作って、勇者になって、そんな理想の世界があるんだよなー! じゃあなクソ現実さぁん!」
オレは気合を入れて足踏みを始めた。歩数計は2000,2500,3000とどんどん増えていく。理想の世界に転移できることが嬉しくてオレは不意にニヤついていた。
「ハァ、ハァ……あと少し、あと少しあと少し! 挨拶とか決めゼリフとか……考えとこーっと……そ、それにしても……暑いな……」
今日は4月27日、ゴールデンウィーク直前だ。流石に暑い、制服のまま運動をするのは。オレはブレザーを脱ぎ捨て、Tシャツとシャツ姿でまずは水飲み場に向かうことにした。白いシャツの下からは推しのヒロインが時折ちらちらとその笑顔を覗かせる。
「異世界行くつもりが、その前にゲームオーバーになったらいけないからな……水はしっかり飲んでおこう」
しっかりと水分補給を終え、歩数稼ぎを再開しようとしたその瞬間だった。オレの後ろに、何やら恐ろしい何かが立っていた。
恐る恐る振り返ると、その正体は鬼教師、またの名を鬼川。保健体育担当のデーモンである。
デーモンはオレの腕を掴むやいなや、
「何してらんだー! 授業はどうしたー!」
と怒鳴った。オレは慌てて体調不良で保健室で寝ていたんだと説明したが、シャツは既に運動の汗と冷や汗でビショビショだ。そのせいで背中から中身のTシャツが透けていて……
「って、このTシャツ! 柄付ぎでねが! 待たんかー!」
「やべぇレベル1で鬼は倒せない!」
オレは逃げるを選択した! 逃げろ、保健室という安全地帯に!
捕まったら生徒指導間違いなし、早く逃げないと! 体調不良という設定はどこへやら、オレは全速力で走っていた。
「ハァ、ハァ、あれれ、意識が遠く……なって……い……」
オレは目眩がすると同時に、本を抱えながら倒れてしまった……。
「……ここは、保健室?」
「大丈夫? だいぶうなされてたわよ?」
「小田先生……どうも……」
オレが目覚めると、枕元にはあの怪しい本が置いてあった。そしてすぐに思い出した、転移のことを。
「……そうだ! スマホはどうなってる、歩数は!」
俺はポケットからスマホを取り出し、歩数を確認する。するとその画面に表示されていた数字は「4444」だ。
だが、周りを見渡しても特に変わった様子はない。窓から見える景色はいつも通りで、自分が何者かに生まれ変わった感覚も無い。スキルが身についた感覚もないし……結局嘘だったのかな、そう思って大人しく教室に帰ろうとした瞬間だった。カーテンの外には、1人の少女が立っていた。
「あの、耳貸してもらえませんか」
「え、耳?」
「……ようこそ、異世界へ……と言いたいんだけど……やっちゃったね、キミ」
「……へ?」
カーテンを開けると、そこには図書室で見かけた美少女が立っていた。




