1話 図書室、それは古のインターネット
オレは奥川コウ。どのクラスに1人はいる高校1年生……それも静かな、だ。
芸能人とか、SNSのブームとかの話題には全く着いていけない。脳内シミュレーションではクラスの男子から女子までフランクに話しかけられるだが、本当は人と関わること自体苦手だ。自分を表現するのが下手なあまり、せっかくできた友達もいつの間にか距離を置かれてきた。
だから、休み時間は図書室にいるか寝たフリをするのがお決まりだ。今日は図書室で面白い本を探す日なのだが……
「……ああ、無いわ。面白そうなの」
オレは本の好みが偏っている。文学系とか自伝とかはまず読まないし、ライトノベルもネットで評価が高いものしか読まない。だから、数少ない「好きなヤツ」は既に読み切ってしまっていたのだ。
もうこっそりトイレに籠ってアニメでも見ていようか、そう思った矢先だった……。
「すみませーん、本返しに来ました!」
「はーい、そこのカゴに入れといてくださーい」
図書室ガチ勢のオレからすれば飽きるほど耳にしたこの会話。だが、ふとそちらを見た瞬間……オレの心に春風がふうっと吹き付けた。
「……かわいい」
見た目はやや地味。だが、まるでアニメキャラのヒロインのような雰囲気で、オレの好みビンズド! そんなあのコはクラスのヒロイン、確か柚野……アイリ……さん! あのコと仲良くなれたら実質さんと友達になったみたいなもんでしょ! よしチャンスだ、話しかけてみよう!
「……あ、あの、好きな小説ってどんなので――」
思わず話しかけてしまった! だが、その声が届くことはなく、その子は既にクラスへと向かって帰ってしまっていた。
いつもこうだ、オレは。本当はハーレム作って青春したいのに!
ならば、クラスでそのうち話しかけるためにあのコの好みを調べておかなくては……! オレは返却カゴに目を通す。そして気付くとオレはその本を手に取っていた。
「現実における裏技集……? あったっけ、こんな本?」
ライフハック系だろうか、まず目次を見てみよう……なになに? 倹約術、スポーツ上達に偏差値アップ、お金持ちになる方法に……異世界へと行き来する方法? 面白そうだな、読んでみよう。
オレの指先と目は異世界へ行く方法とやらに向かっていた。普通に考えるとバカバカしいのだが、まるで本に意識を乗っ取られていたかのようにページをどんどんめくっていき、しおりが挟まったところで止まった。
そこは目次の中で異彩を放っていた項目、「異世界へと行き来する方法」だった。まさかクラスのあのコも異世界モノに興味があるなんて、なかなか見る目があるじゃないか! ますます気に入った!
オレはそのしおりをまずは柚野さんに返しに行こうと思って手に取ると、そこには「柚野エミナ」と書かれてあった。
「あれ、下の名前エミナだったっけ、もしくな姉妹とかか? まぁいいや、早速読んでみよう……」
・異世界へ行き来する方法!
まずはこの本を持って学校内を駆け回り、4444歩移動するだけ! 達成時にこの本に触れていたものが何と、異世界に召喚されちゃいます! 帰ってくる時は同じことをするだけ、簡単だね!
「何やねんこれ! 降霊術の類か何かかよ、これ!」
期待したオレがバカだった。きっと柚野さんもここで呆れて本を返しに来たんだろうな。だけど……もし本当ならば……
オレはこの方法を、試したくなった。




