14話 口裂け女
その瞬間、上空からオレを押しつぶしたのは巨大なQという形状の物体。棒状でその先端には鮮やかなオレンジ色の、甘い香りの円形のものがくっついている。
「何だこれ……? 飴か何か、か……?」
「……待ってくれ、それってもしや!」
木南くんはスマホ画面をオレに見せてきた。コメント欄が盛り上がっている、一体なぜだ? オレはなんとか拾えたコメントを読み上げることにした。
「ベッコウ飴じゃん、それ食べさせろ、逃げられるぞ……そうか、そういうことか!」
オレは気合を入れて巨大なベッコウ飴を持ち上げ、やり投げの要領で口裂け女にその飴を投げつけた。すると口裂け女はその飴に早速興味を示しだした。
「おっ、やるじゃん! 早速食いつきそうだぜぇ」
「でもホントに、これでいいのかな……?」
口裂け女はあらゆる角度なら飴を見つめたり匂いを嗅いだりしているが、一向に飴を口に入れない。なぜだろうか、口裂け女にも好き嫌いがあるのだろうか? 野菜が好きな子どもがいるように、レバーが苦手な大人がいるように、納豆が嫌いな日本人がいるように。
相手は鎌を持っている。対してこちらはランダムで生成できる食べ物や道具など。さらに、相手は妖怪、人間の常識が通用しない”何か“を隠し持っているかもしれない。ユウヤと木南くんは思わず2,3歩後ずさる。
「コレ……ヤバいんじゃ……」
「ああ、コメント欄もなんだか不穏になってきてるぜ……」
『あれ? なんで食べない?』
『ちょっとまずくね?』
『おかしいぞ』
『逃げた方がいい!』
口裂け女はまだ一向に飴を眺めているだけだ。そしてようやく指先で表面をなぞり、その匂いをクンクンと嗅いだかと思うと、なんとゆっくりと立ち上がって鎌を振り上げてきた。
「こんな物で逃げられると思ったか! 私はさっきから綺麗かどうか聞いているのに全く答えねぇし! それ絶対可愛くないですーって思ってんだろ、許さねぇ、今すぐ始末するのみだああああああ!」
「おいまずい、逃げるぞおおお!」
「え、え、うわあああああああ!」
木南くんはオレの手を掴み一書に逃げようとする。だが走り出そうとしたその瞬間、口裂け女に回り込まれてしまった。
素早い。どんなサッカー選手も、バスケットボール選手もを凌駕するその回り込みの素早さ。改めて理解した、怪異に人間の常識など通用しないんだ、と。
だからこそ、もうオレは質問に答えることにした。ここで死ぬならもう仕方ない。
「ねぇ、これが最後の質問。私、キレイかしら?」
「……き、きれいです――」
「これでもおおおおお? ああん!?」
伝承通りだ。やはりキレイと答えたところで再びブチギレてくる。再びベッコウ飴を召喚するに賭けるしかないのか、そう思った瞬間だった。
「わた……し、キレ、キレキレキレキレキレキレキレキレわたし、キレ?」
「……へ?」
まるでオンラインゲームのラグすぎる敵のような挙動を見せ始めたのだ。




