12話 中上さん
「あぁ、何でオレはいつも……」
「流石に、大変だったね……」
心も体も傷だらけのオレは高校生活初日から既に疲れてしまっていた。あの先生もオレの言うこと全然信じてくれないし、てか状況を見てある程度察してくれよ……
机に突っ伏してうなだれていると、オレのことを呼ぶ声がどこからか聞こえてきた。名前を読んでくれているワケではないが、確かに近くで「あの、あの……」と声がする。
オレは頭をゆっくりと上げてみると、そこに立っていたのはついさっき不良に襲われていた女子だった。その顔は申し訳無さと心配が混じったような顔だ。
「あの……ごめんなさい! 大丈夫……でしたか?」
「……まぁ、大したことなっ……! いてて……」
気を遣わせないために嘘をつこうとしたが、やはり体は正直だった。胸が、背中が、腕が、腿が。同時に悲鳴を上げる。反射的に苦悶の表情を浮かべてしまうオレに、その女子は絆創膏を差し出す。
「これ、どうぞ……もしよければ」
「あ、ありがと……」
「……あのっ! 名前、何……ですか? 私は中上ツバキって言います!」
「お、俺は奥川コウ……です」
「あ、あの、奥川くん! さっきは本当に……ありがとうございました!」
「えぇっ!? いや、そ、それほどでも……」
中上さん……かなり大人しい性格なのか、話すだけでも緊張しているのが見てとれる。だけどそれはオレも同じだったし、「転移前」は遠くから見ているだけだったけど……案外馬も合いそうで、友達になれるかもしれない。
「あ、あの……中上、さん」
「んっ」
「今日から同じクラス、だから……よろしくお願いします」
「……はいっ!」
不意にオレは右手を差し出していた。握手したいという気持ちが先走り、そんなことできる度胸もあるはずないのに、一方的に手を前に出していたのだ。
慌ててオレは手を引っ込めてペコペコと頭を下げるが、嫌がるどころか中上さんは微笑み、少し顔を赤らめながらゆっくりと手を握ってきた。
「……はい、よろしくお願いしますっ!」
……かわいい。まるで天使のようだ、疲れた日はこの笑顔で癒やされたい……オレはそう思った。
でもこれまではそういう思いに振り回されて人が離れていくことが多かったから……今回は、友達としてゆっくりと歩んでいこう。
「こちらこそ、よろしくおね――」
「おっ! おかくんいいねぇ! 積極的じゃん!」
「うわっ、木南くん!?」
後ろからオレをからかってきたのは木南くんだ。ずっと思ってたけど、結構パリピって感じだな……
「ほーら写真撮ろう撮ろう、はいチーズッ」
「えっ、あっ、にぃぃ……」
木南くんのスマホの画面には色々な文字がコメントのように表示されていた。
『さんこいちだ』
『リア充爆発』
『女の子かわいい』
『その子どんな能力持ち?』
オレが思い描いていた学生生活という名のRPGは、結構カオスなものになりそうだ。




