とある厄災の思惑
とある占領した迷宮内部であるものに腰掛けながら、厄災は分体から集まる情報を確認していた。
「私を殺そうとしているな。五大災厄はまだ相手したくないし、世界の意思どもも邪魔だしなにより快人が一番の障害か。くそ、弱体化したとは言え日本から出られさえすれば何百年か逃げて終わりだったのに」
厄災にとっての最大の障害だった女の息子もまた障害になっている事に呆れていた。
「親子そろって邪魔ばかり。それに前回の世界の寄生先だった逆行者も敵に回っているし、てかあいつ生きてたんだ。私と相打ちを狙って逆行を使って死んだと思ってたけど」
歴史の強制リセットにより厄災を道連れで消し去ろうとした逆行者だったが、残念、厄災は力大きく削る代わりに生き残っていたのでした。
これにより、厄災はすべての脅威がなくなった過去の世界で一から力を蓄えてと考えていたが、なんと世界側の戦力は主力以外はまだ健在で、おまけに迷宮まで宇宙から降ってきたので大変な思いをしていた。
「迷宮は大した脅威じゃないが、快人はヤバい。あいつが唯一、万全の私を殺せる存在だからな。どうにかして始末したいが、分体じゃ手も足もでないし、てか今の私でもそうだし」
戦力的には迷宮は厄災を上回るが、厄災を殺しきる決定打がないので持久戦で勝てる見込みはある。だが世界側の戦力である快人だけは厄災を一から消し去れるほどに強いのだ。
「母親にも届かない不完全で未熟な存在のくせに目障りだな」
おそらく快人は、あの弱り切っていた母親の足元にも及ばないほどの未熟者だ。この星で快人がこれ以上強くなるのは不可能だろうが、それにすら殺される可能性があるというだけで苛立ちが勝っていた。
「っと、いい感じの異能者はいたかな。ありゃ?こりゃ期待できそうにないな」
情報をまとめながらストックを貯めるために異能者のことを探る。非公式組どもが一番戦力になるのだが、如何せん強くてリスクが高い。騙そうにも流石は強者たちと言うべきか、通じないことが多い。
「落天、逃亡、残機、警告、遮断、偽造か。最低でも10個は欲しかったし、これじゃ直接戦闘弱いからもっといい異能欲しかったな」
とにかく逃げ切ることに特化した異能構成だ。攻撃は自前でどうにかするしかないのが痛いところに見えるが、厄災自身素でも十分強いので後回しにしていた。
「『呪詛』『真言』『天眼』辺りには逃げられたし、他のは先に狩られてたり姿くらましたりしてさ。それに非公式組は襲いまくったせいで敵が多いんだよね」
厄災にとっては異能は強いし、社会的にも目立っていないので狙い易い相手であったが、実力が高く仕留められたのは三人しかいなかった。
「他にはない?え?海外には『メルトダウン』とかがある?いや海外には行けないから。てかそいつ強いだろ、普通にニュースでも見る奴だぞ」
ステータスに表示される情報は内容は変わらないが、スキルや異能名などは国や人によって翻訳されるため表記が変わる。その言語上で一般的に使用者が分かるように調整されるのだ。
「有名人とか世界のトップ勢は無理だって言ってるだろ」
勝てるが異能を奪える保証がない。生きたまま体を奪わないといけないので、それが上手くいかない。それに奪った異能も不安定なので、ダメージ次第ではせっかく集めた異能を手放さなければいけなくなるのだ。
「あ~めんどくさ。手駒も減ってるし、迷宮は活発だし、世界は簡単に死んでくれないし、マジでしぶといよ、な?お前もそう思うだろ?」
自分が腰かけていた迷宮主を蹴りながらそう問いかける。
「ぐうっ、こ、この愚図野郎が……」
「いい威勢だね。死にかけで何ができるか知らないけど」
迷宮主が死むと迷宮がなくなるので、殺さずに死祭りにあげて腰掛にしていたのだ。
「550レベの迷宮だって聞いたから来たのにさ、悪魔のくせに異能ももってないこんな雑魚じゃ話にならないね。でも悲しいかな、殺すと迷宮が潰れて私も押し潰れてしまうよ」
ニヤニヤとしながら血まみれになった悪魔の迷宮主を覗き込みケラケラ笑う。
「話を聞かれたからには生かしておけないし、ついでだからパーと崩壊して私が逃げるまでの時間稼ぎでも頼むよ。どうせ他の連中は感づいてるだろうしさ」
「グハッ!ガァアア!!!」
厄災が体に沁み込み悪魔が暴れだす。しかし身動きの取れない悪魔は何もできずに苦しむことしかできない。
「精神をちょちょっと弄ってやればこの通り、操り人形の完成だ。さぁ派手に……ん?これは?」
迷宮崩壊を発動しようとしたが、手が止まる。それのその筈、とある悪魔が持っていた隠し玉を見て、厄災は最高に楽しそうな顔をした。
「いいもん持ってるじゃん、迷宮種様も性格がいいね。ちょっとこっちの調整もしてからでいいか。ま、数日で終わるから君はそこで突っ立ってるといいよ」
血まみれの思考を失った悪魔はそのまま棒立ちで暗い空間に残され、厄災は作業のためにボス部屋を去るのだった。




