とある世界の意思とその仲間たち
とある男が森の中を歩いていると、違和感を感じ周囲を見渡す。
「俺の方に来たか。何の用だ?」
「よっ、久しぶりだね。確率箱、それとも逆行者とでも呼ぼうか?そういや原初の異能者ってのもあったね」
少女が木の裏から現れ男に話しかける。男に名はない。あるのは壊れかけの存在だけだ。
男はかつて世界を壊しかけた異能者。少女はこの世界そのものを司る存在――世界の意思だった。
「今の俺は確率箱だ。もう逆行できるだけの力は微塵も残ってないことぐらい知ってるだろ」
「そうだね。お前は相当やらかしてくれたけど、まぁそれでも実力者だし、私と対等に話せる数少ない人だからいいよ」
男は過去に世界レベルの事件をやらかしている。だが現在にはその影響のほとんどをなかったことにしたので協力者として辛うじて許されている存在だ。まぁ別の厄介ごとを呼び寄せる原因にもなっているのでこうして後始末し続ける訳だが。
「皮肉なもんだね。かけられている呪いが、逆にお前をつなぎとめるものになっているなんて」
「雑談はいい。で何の用だ?俺は厄災の始末で忙しいんだ」
今さっきも厄災の分体を始末したばかりだ。レベル500もあれば簡単に潰せる程度の雑魚でしかないが、それでも数が多いので忙しいたらありゃしないようだ。
「その厄災の件だよ。知っていると思うけど本格的に動き出した。それの情報共有と、あとやってもらいたいことがあるんだよ」
「これは……わかったよ」
書類を渡されて、それを流し目で見ていく。
「随分と手駒が増えたな。ステータスシステムのおかげか?」
「そうだね。まぁあれは便利だけど、それ以上のものじゃなかったのが残念だったよ」
世界の意思は奪ったステータスシステムと自らを融合させて同化していた。それにより世界中にステータスを配って才能のあるものに加護与えると同時に手駒にしていたのだ。もちろん、加護持ちはそんな自覚も説明も受けていない。
「回覧、補助、強化。ずいぶんすごいもんだと思うぞ、ステータスは。人類の飛躍具合を見ればな」
「ステータスを操ってどんな相手でも最強化!雑魚化!とかできなかったからね。情報収集には便利だけど、所有者本人への直接干渉が難しいから、支援、誘導、邪魔しかできないし」
しかしステータスシステムはあくまで管理システムにすぎず、表示されたステータスはただの解析データでしかない。そのため、解析して回覧、技術及び行動の補助、効率的な強化が主でそれ以外の操作は手間もコストもかかるし邪魔しても致命傷にはならない。
「そうか。てか、厄災関連以外にも迷宮にも牽制を入れろと?それにこいつは……」
「そうそう、あいつら何企んでるかわからないからね。潰したいけどまだその時でもないし、戦力も足りない。いっそのこと吸収してやろうかな?」
資料を見つつ質問を入れる男。それに対してめんどくさそうな顔をしていたが、最後にはいい道具を手に入れられるかもと悪い顔をする世界の意思。
「まぁ確かにな、迷宮の力は魅力的だ。お前にはリソースはあっても機能がないし、寿命だってヤバいだろ?」
「そうそう、力はあって越したことがないしね。こうなった以上は。それにこのまま悪化すると、最悪人類にだってお灸をすえなきゃいけなくなるし」
残念そうな顔をした世界の意思だがすぐに機嫌を取り戻す。
「話はそれだけか?早速仕事に行きたいんだが?」
「いいよ、私も快人や他の人にも伝えなきゃんいけないし」
それを聞いた男は、複雑そうな顔をして世界の意思に聞いた。
「俺が言うのもあれだが、その姿で出会うのか?あいつと?」
「そうだよ?いいでしょ?やっと作れたんだよ、私の友で英雄の姿だからね。快人の母親の姿でもあるから、きっと快人も思い出して喜んでくれるだろうね」
無邪気にそう言う世界の意思を見て、微妙な気持になる男だった。




