とある迷宮の会議
近未来っぽい清潔な会議室にて、一人の少女と複数のプロジェクションマッピングにより投影された迷宮主たちが並んでいた。
「厄災が動き出したか」
「はい、メイズ様。今までこそこそ活動していたようですが、奴もついに動き出しました」
年明け早々、厄災は分体を使って各地の迷宮を襲って破壊工作とリソース強奪に動き出していた。各地でその戦闘が繰り広げられ、どうにか前線を維持している状態だ。
「出し抜かれたねぇ。どうします、メイズ様?」
「由々しき事態だ。即刻戦力を増強して叩き出すべきかと」
「そんなに五大災厄を出されたくないんだろうな」
「卑怯な真似をしてくれたもんだな、厄災らしい」
十二魔将の一部がそう発言する。厄災が暴れだした原因の一つである、五大災厄の出現阻止があった。さすがに今の厄災では五大災厄を相手できないからだ。
「この程度では問題ありません、五大災厄を出しましょう。そうすれば各地域の厄災の分体を駆除できます。それに厄災との戦いの後は地上に打って出る必要もあるので出すべきかと」
「こんな星早めに離れたいぜ、面倒ばっかの厄ネタ星じゃん」
「この星出身のものとは思えんな、死語よ。同郷としてどう思う、楽悦よ?」
「そんなの知らないわよ、ここなら楽だと思ったのに面倒ごとだらけじゃない。準備ができたらとんずらに限るっしょ」
十二魔将の四人の意見に皆が頷く。罠を張る側が罠にはまっている状態である迷宮たちにっては、耳が痛い状況なのだから当然ではある。因みに、本名は別にあるものの、呼ばれとしては異能や特徴で呼び合うのが主流だ。
「加護や呪い持ちを利用した作戦はどうしたんだよ?あいつらはそれなりの強者だろ?」
「彼らも十分成果を出していますが、はやり人間には厄災の相手が厳しいようだ」
「体奪われた奴もいるって報告来てるぜ。どうなってんだよ厄災ってのは、面倒すぎだろ」
厄災の寄生と乗っ取りは別に人間限定ではない。それどころか生物でなくてもいいのだ。この力のせいで迷宮も人類も世界さえもしてやられ続けている。
「我々の力が通じないのは厄介極まりないが、単純な戦力ではこちらが上だ。押しつぶせばよかろう」
「そうだそうだ!探し出して殺してやれ!」
「そうはいってもね、帝王に原罪ちゃん。しぶとさだけでここまでやるんだからそう簡単にもいかないわよ」
「迷宮は地上までは探りを入れるのが限界だからね。現状、そこら辺はどうしようもないよ」
七大列強のうちの四人でる帝王と原罪、天干と色彩。前者二人は強硬派だが、後者は冷静なのでいつもこうだ。
「まぁまぁその辺でね、メイズ様の意見もありますから」
「そうだぞ二人とも、それにまだあの人たちの意見も出ていないのに」
「厄災の相手は難しい、聖杯が通じない」
二人の意見を皮切りに、各々が勝手に話し出す。それで騒がしくなっては仕方がないので、七大列強の、秩序、魔窟、聖杯の三人が声を上げる。
「まぁ厄災との全面戦争にはまだ私も準備が足りない。世界の意思や快人の件もあるし、まずは分体の駆除から始めるつもりだ。どうやら厄災の本体は日本から出られないみたいだからな」
実は厄災の本体は閉じ込められており日本から出られないのだ。しかし分体を世界中に送り込み工作ぐらいには使え、それが厄介極まりなくそちらを先に駆除するようだ。
「そのための俺たちか?」
「暴れられるのはいいけど、止めるんじゃねぇぞ」
「被害を最小限に抑えて厄災をピンポイントにとか無理なんだけど?」
「うまくいけばいいけどね」
「まぁ多少は勘弁してくれや」
五大災厄たちが各々にそう言う。彼らは暴れるのが目的なので、細かいことは苦手なのだ。今回は迷宮種であるメイズからの要請があるから大人しいが、本来であれば地上を壊滅させて浸食を早めるのが役目なので。
「何度も言うが、現在の敵はあくまで厄災だ。そして世界の意思とは協力関係にある。だから奴を倒すまでは私たちは下手に行動できない。この世界を奪うのは厄災を倒した後でいい」
厄災との戦いで大きく消耗し、世界の意思の干渉によりシステムの一部である『ステータスシステム』が奪われてしまった迷宮側も相当厳しい状況だ。世界の維持と厄災の駆除を建前に迷宮を増やしまくっているが、メイズ本人の力はあまり回復しておらず、世界側の切り札である快人には勝てる見込みはない。
「まぁあんたがそういうならいいけどね」
「我もそれで賛成だ。今のままでは厄災を倒せてもジリ貧で負ける」
「私たちは、厄災討伐後に向けて力を蓄えておくとしよう」
三界卿たちだ。彼らは今回の戦いに参加できない。厄災駆除後の切り札であると同時に、その顕現には莫大なリソースを消費するので今回の戦いに間に合わなかったのだ。
「と言うわけだ。以上で会議を終了とする」
そうメイズが言うと映像が次々に消えていき、静かな部屋に一人残ったメイズは、空中で手を動かしながら大量に届いているメールを開き目を通していく。
「……私をこき使いやがって、覚えてろよあのクソガキ」
世界の意思からの要望書を見てピキッっていたのだった。




