またスライム
目の前に見せるは、先ほどと同じ大きさのスライムだった。
「結局戦うのか」
「ですね」
「検証だ。本当に安藤の言う通りなら、他の迷宮でも利用できる」
「そうだ、レア物はいい資金源になるし、強化にもちょうどいい」
呆れる西田と吉泉をよそに、田中と安藤がやる気満々に武器を構える。それに答えるように、スライムは突進をかましてくる。
「おらっ!」
田中が剣を全力で振り、スライムは分裂することなく少し後方へと飛ばされる。
「は?」
「そりゃねえぞ」
「困りましたね」
「どうしよう」
田中は、刃の部分が溶けてなくなった剣を見て呆け、他三人はドン引きしていた。だがスライムはそんなことお構いなしに触手を生やし、前線にいる安藤と田中に襲い掛かる。
「ちょちょっちょ!」
「溶かされる!」
安藤は刀で触手を素早く斬り裂き、田中も新しい剣を出して応戦する。
「素早いですが耐久が低いですね。スキル構成も変わっていますし、やはり学習してますよ」
「総合が変わらないからパラメーターと戦術変えてくるとは……迷宮ってまさかめっちゃ賢い?」
「「んなこと言ってないで助けてくれ!」」
ダメージは与えられているが、その度に武器にもダメージが入り、田中の懐が悲鳴を上げていた。それを知ってか知らずかスライムの追撃は激しくなり、二人はそう悲鳴を上げる。
「はいはい、ほれ!」
西田が炎を高速で打ち出し、二人の間を抜けてスライムに激突する……かに思われたその瞬間、スライムは粘液を飛ばし、目の前に火炎の波が広がる。
「させませんよ」
そこから飛び出してきたスライムは一気に決着を着けようとした。しかしタイミングよく吉泉の転移爆弾が炸裂し、飛び散りながら爆散する。
「助かった。にしてもマジで鬼畜技だな、それ」
「体力的な制限はありませんが、爆弾のコストが嵩みますがね。どうにかしたいものです」
「それも稼げるようになればどうにかなるだろ。というかどっかの迷宮でそんなのあった気がするし、そっちで集めればいいしなっと、今回は四級解毒薬だな」
「このクラスの迷宮にしては破格だが、難易度を考えると微妙だな」
五級は大体500~1000円ほどで取引されるのに対し、四級は安い時で1万からの相場だ。これは四級以上が安価に安定して生産できないからだ。
「で、スキルの方は?」
「体術と酸液の上位スキルの溶解だ。やったぜ」
「体術は共有されてるな。道理で動きやすかったわけだ」
「流石に溶解はないみたいですが、十分な成果ですね」
そうして四人は、発生した出口から迷宮を出るのであった。